渡辺香津美が、クラッシック・ギターの若手、鈴木大介と番組で共演した。
日本を代表する現代音楽の作曲家 武満徹がなくなって10年。それを記念してのコンサートの告知をかねてのことだ。
武満徹は、現代音楽の優れた作品を沢山残し、世界の指揮者、オーケストラが演奏してきたが、一方で、武満自身は、
「現代音楽は難しくなりすぎて、袋小路に入っている」と言っていたそうだ。
それで、武満徹は、歌や映画音楽など、楽しくて聴きやすい音楽、分かりやすい音楽も沢山創り、むしろ亡くなってからそういう音楽が沢山取り上げられていると言う。
渡辺香津美は、番組で、「武満徹の音楽の色彩感や思想に大きく影響された」と言う。
武満さんの言葉、
♪世の中には「音の河(川)」というものが流れていて、(音楽家は)誰も聴いたことがない音をピックアップして創っていく♪
この言葉によって、即興(アドリブ)をどうやっていくかについて、渡辺香津美自身が大いに励まされたそうだ。
渡辺香津美と鈴木大介は、武満徹がなくなって10年の記念コンサートとして、
武満徹、バッハ、ビートルズの曲をデユオで演奏するという。
渡辺香津美にとっては、
バッハ=ロック
ビートルズ=クラシック
武満徹=ジャズ
なのだ、というように、意識の転換によって違う世界が見えてくる、と言っていた。
さて、ふたりが番組で演奏してくれた曲は、武満の「翼」という曲。
前にもご紹介した渡辺香津美のアコースティック・ソロCD、第3弾
「ギター・ルネッサンスIII<翼>」でボーカルの吉田美奈子と共演している曲で、これが武満徹の作品なのか、と思ってしまうくらい、分かりやすいメロディの曲。
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これを、鈴木大介とのギター・デュオでは、どう演奏するのか。当然、ボーカルありのCDの演奏とは全く違っていて面白かった。
むかって左に座る渡辺香津美がまずイントロを引き始めると、
右側に座る鈴木大介がきれいなメロディを奏でる。
渡辺香津美のビターは、スティール弦で、ボディにおおきくカットアウェイのあるギター。鈴木大介は当然クラシック・ギター。
鈴木のメロディをバッキングする香津美のギターは、すでにいろいろな弾き方を織り交ぜながら多彩な音を出している。
ピックを使ったり、指で弾いたり、アコギだけではなくエレキ・ギターの奏法も繰り出して実に多彩なニュアンスを出している。
メロディを鈴木大介から受け取った香津美は、左手も右手も様々な奏法を織り交ぜて、ジャズ、ロック、クラシック、あらゆる音楽を取り入れて消化し昇華してきた彼らしく、メロディといいながらも、コードや装飾を取り入れたアドリブ演奏。当然チョーキングもやる。
CDの演奏とはまた一味違った色彩を感じさせてくれる。
再びメロディを受け取った鈴木大介も、クラシック・ギタリストながら、渡辺香津美との活動で吸収してきたのだろう、クラシック・ギターの奏法とは少し違うニュアンスを出しながら、綺麗で艶やかなメロディを弾く。
再び多彩なバッキングに戻った香津美は、音楽全体の輪郭を意識しながら、アウトロ・エンディングへと向かった。
やっぱり、ふたりの演奏を聴くとため息が出る。
渡辺香津美というひとは、競演する相手によってギターの演奏、音楽の創り方を柔軟に変えていけるアーティストだ。
だから、相手との会話、対話のように、一回一回、その時、その時、びびっと感じるものを音楽として表現していくのだと思う。
やっぱり、香津美の演奏はライブで観て聴くに限るなあァ、とも思った。
残念ながら、鈴木大介とのデュオによるコンサートには行けそうもないが、彼のCDをまた聴きたくなってしまった。
音楽の垣根を越えて、交流し活動の場をますます広げている渡辺香津美。
やっぱり素晴しいアーティストだと思う。
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