2007/06/06(水)17:50
松宮幹彦のウクレレ新ユニット♪
松宮さんは、ウクレレ界の中で独自の立ち居地にいると思う。
そして、ぼくはそのスタンスをとても好ましいと思っている。
いわゆる、ハワイ・ウクレレ関係のイベントやミュージシャンの交流の渦の中におらず、ちょっと違う地点からウクレレを使った独自の音楽、ジャズ・ロック・ポップ・ボサノバなど多彩な音楽をとりこんだものを創り出しているところがとても好きだ。
有名な中高一貫男子高校Aを出てW大学を出ている知性派のミュージシャン。
普段は、そんなところはおくびにも出さないが、お話をしてみると、やっぱりその明晰さはよく分かる。
ジャズをベースにした(と僕は思っています)ギター・プレイで、
CF,ドラマ主題歌、映画音楽などのスタジオ・ミュージシャンとしてすでに30年以上のキャリアがある。
ウクレレを最初に買ったのは、スタジオ・ワークで「ウクレレの音を出して」といわれた時に、はい、すぐできますよ、といえるために買ったそうだが(本人談)、
最近では、スターウォーズをテーマにした「ウクレレ・フォース」や、「ウクレレ・ウルトラマン」などの企画アルバムにウクレレで参加している。
どのくらい続いているのかちょっと知らないが、都内で、毎月、ウクレレとギターのデユォのユニット、「ウクレレ倶楽部」でアコースティック(アンプラグド、マイクもまったくなし)のライブを定期的にやっている。
数年前、ウクレレの先輩仲間から教えていただいて、何度もそのユニットのライブを観ている。
その松宮さんが、今度、ウクレレ、ギター、パーカッションの3人編成のユニット、O2Tを結成して、デビューCDがまもなく日本でも出る、というので、そのアコースティック・ライブに行ってきた。
O2Tっていうグループ名は何の意味なのだろうと思っていたら、
Out Of Tune(チューニングがあっていない、調子っぱずれの意味か?)
= OOT
= O2T
ということらしい。
実際には、今日のライブはパーカッションのひとがいない
O2T-1(マイナス・ワン)というややこしいことで、ギターの渡邉賢一さん(ナベケンnabeken)さんとのデユオだったのだが、O2TのCDはすでに韓国ではリリースされているらしい。
というのも、韓国の胡弓(中国の二胡とは、材質が違うらしい)=ヘグムという楽器の女性奏者、「コッピョル」さんの日本発売のCD「FYI FYI FYI」
FLY FLY FLY
にO2Tのメンバーが全面フィーチャーされており、その経緯から日本で言えばBunkamuraオーチャードホールくらいの大きな韓国のホールで4月に共演しており、
その流れでO2Tのアルバムも韓国先行発売となっているらしい。
なるほど、こういう形の日韓のミュージシャンの交流から、先に韓国でデビューしちゃう日本人ミュージシャンのユニットが生まれる、
こういうありかたもあるんだなあ、とあらためて感心した。
さて、前置きが長くなってしまった。
お店にはやめについたら、松宮さんと渡邉さんことナベケンさんが、公開リハーサル中。
松宮さんが、ウクレレ独自のストロークをギターに応用したらどうか、とナベケンさんに教えている。
譜面をみながら、今日はパーカッションがいないので、ここはこうしましょう、とか、この部分は3回繰り返しましょうなど、リハーサル。
お店が狭い(それだけにミュージシャンとの距離がすごく近い)ために、結果的に公開リハーサルとなった。
お客さんが、ほぼ満席になった時点で、ライブは始まった。
1曲目
「The Chicken」
ジャコ・パストリアス(ベースの革命児)が、ライブで得意としていたナンバーを、いきなりウクレレとギターで演奏し始めた。
ウクレレで松宮さんが、
ちゃっちゃ、ちゃ~ちゃ、(チャカ)
ちゃっちゃっちゃっちゃ、ちゃ~ちゃ
とリズムを刻み、ナベケンさんのギターがベース的な役目をして曲が進行する。
おもわず、ぞくぞくする。
ウクレレで、ウェザーリポートやジャコ・パストリアスの曲を演奏する、
というのは、私の長年の夢、というか見果てぬ夢なのだが、
こういうアレンジで、ウクレレとギターの持ち味をいかしながらそれを演奏してしまう。
カッコいい。こういうところがぼくは、松宮さんの音楽が大好きなところだし、ほかのウクレレ・ミュージシャンとは交流しないでこの立ち居地にいつもいて欲しいと願う理由だ。
ウクレレが、ロール・スクロールのような音をまじえながら、リズムを刻んでいき、ギターが先にメロディを弾く。
今度は、松宮さんがウクレレ・ソロを弾き、ギターがベース的動きをする。
観ている方(聴いているほうも)すぐにその音楽世界に引き込まれてしまったが、松宮さんも音楽にいれこむように、ウクレレ・ソロを弾きながらスキャットしている。
まるで、ジョージ・ベンソン(g)の意識的なスキャットというよりは、キース・ジャレット(p)が無意識に声が出てしまうのと同じような感じなのようだ。
凄い!カックいい!
2曲目は、O2TのデビューCDから、松宮さんのオリジナル曲
「夏の風車」
ナベケンさんが12弦ギターに持ち替えた。
「The Chicken」とはうってかわって、明るい柔らかい曲。
ウクレレがメロディを優しくかなでる。松宮さんの右手の人差し指がアップで弦をひく柔らかな音。
途中で、オクターブ奏法をまじえての演奏。繊細な音。素敵だ。
3曲目は、ハワイアンの曲を2曲メドレーで、ということで
「月の夜は」~
「On a Little Bamboo Bridge(小さな竹の橋の上で)」
ウクレレのソロからまず入った。今度は、松宮さんは親指でダウンでメロディを弾いている。このへんの音色の違い、タイミングの違い。
ウクレレならではの使い分けかもしれない。
ハワイアンを演奏しているのだが、やっぱり、とkろところなぜかジャズっぽくて、それがカッコいい。
ナベケンのギターが入ってきたところで、
松宮さんは、おもむろに赤いボトルネックを取り出した。
ボトルネック・ウクレレというか、スティール・ウクレレ。
ボトルネックでスライド・ギターを弾くように、ウクレレを弾く。
曲は「小さな竹の橋の上で」にかわっている。
ハワイアン音楽なのに、スライド・ウクレレがドブロのように聴こえる。
音世界はハワイからいっきょに、アメリカ南部デルタ地帯、ディープ・サウスの世界へようこそ。
ブルージーは香りを出しながら、間をおいて、エンディング。
く~、カックいい~~。
こういうのがいいんですよ。まったくオリジナルなウクレレの世界。
4曲目は、
原曲は「I don’t love nobody」というそうだが、
ブルー・グラス経由でギターをやってきたナベケンさんの選曲。
しかし、この曲はすでに著作権フリーの曲らしく、ナベケンさんが
「Pandog’s Favorite」という曲名をつけたらしい。
今度は、松宮さんが、バンジョー・ウクレレを取り出して、がっと明るく楽しげな雰囲気に変わった。
楽器のチョイスで、こうも音楽世界がかわるのか、と感心しながら聴いている。
5曲目は、バーニー・ケッセル(g) の
「That’s All」
ナベケンのギターのイントロから入る。優しい感じ
ウクレレのメロディやトロモロも、
ぽろろん気分で、しみじみほのぼの系。
基本的に、ここでは松宮さんのウクレレは単音弾き。
ナベケンのギターも癒し系。
ウクレレ・ソロからギター・ソロに移り、またウクレレがメロディをとっていく。
すごく、気持ちがやわらかくなって、ゆるむ。いいなぁ。
6曲目は「ドナ・リー」
ビバップのチャーリー・パーカーの曲(本当は、マイルス・デイビスが作曲したそうだが)
やっぱり、こういった曲をもってくるあたり、松宮さんとナベケンのコンビ、渋くていいぞ~。
松宮さんのウクレレ・プレイを見ていると、右手の腕、ひじから手首まで、ウクレレのボディとの位置関係がまったく動かない。
やっぱり、楽器を安定したホールディングは基本の基本だ。
ここで、しばしの休憩タイム。
その2に続く