テーマ:中国&台湾(3299)
カテゴリ:音楽:ライブ
中国人社員と、中国語が話せる日本人、中国関係の仕事をしている私、という仲間たちとの忘年会があった。
前にも書いたが、この集まりで中国語をはなせないのは僕だけ。 中国人も、北京、上海、武漢、瀋陽など、いろいろなところ出身のひとがおり、そこに台湾出身、香港出身のひとが加わる。日本人と結婚した人もいれば、つい最近、上海から日本の仕事を得てやってきた人もいる。 共通するのは、日本に住んでいる、ということだけ。 同じ中国人でも、日本で教育を受けた人もいれば、中国で教育を受け、素晴らしい日本語が話せる人もいる。 中国人だが、中国と日本を結ぶ仕事ではなく、日本人と同じように、日本の仕事をしている人もいる。 ほとんど全員が、日本語も話すが、香港出身のひとだけは日本語があまり得意ではない。だから会話は、中国語(マンダリン)、日本語、英語とがないまぜになる。 久しぶりに、20名近くかなり多くのメンバーが集まった。 料理は、幹事の中国人男性のチョイスで、もともと内モンゴル自治区の郷土料理であった火鍋。 マトン(羊)とブタ肉、海老のすり身、茸、野菜類などをなべでぐつぐつ煮て食べる。味付けが辛いスープと辛くないスープが、鍋の真ん中にある仕切りでへだてられている。 お好みで、辛いほうを食べてもいいし、辛くないほうを食べてもいい。 僕は、辛いほうも食べたかったのだが、インドから帰ってきて、いまだに胃腸の調子が良くない。雑菌が入った、というわけではなさそうだが、インド料理の数ある強い香辛料や、やはりあぶらっぽい食事を毎日続けていたため、特に腸の調子が悪かったので、辛いスープのほうは自粛しておいた。 それでも、内モンゴルの火鍋は、とっても美味しく、体も温まる。あったかい紹興酒も飲んで、食事会は大いに盛り上がる。 ここでは、日本人は、少数派。しかも中国語の出来ない日本人(つまり私)は超マイノリティ。 多数派が、北京語でコミュニケーションしているので、つい途中で何を話しているのかがわからなくなってくる。 しかし、親切な中国人が何人もいて、今は、だいたいこういう話をしているんですよ、と教えてくれる。 彼らは、日本語の勉強、もしくは日本そのものを学んだときに、たぶん 「日本人は礼儀正しい」と学んだのだと思う。 だから、実際、いまどきの日本人よりも、よっぽど礼儀正しく、よく気がついてくれる。 日本語の文章を書かせたら、普通の日本人よりよっぽど格調正しい文章を書く人もいる。 久しぶりに会った仲間、日本の会社員をやめて、自分の会社を作った人、出産をひかえているひと。さまざまなひとが溶け合っている。 楽しい食事会であったが、何人かの中国人が、ぼくがウクレレを弾くのを知っていたし、実際、今までも、この集まりではウクレレをよく弾いてきたので、今日もぜひ弾いてください、と言う。 しかし、ここは火鍋屋さん、お店中がにぎやかで、とてもウクレレを弾く雰囲気じゃないし、みんな肩寄せ合って、お鍋をつついているので、演奏するスペースもない。 そこで、幹事が「じゃあ、パスタさん、2次会は静かなバーに行きますので、そこで弾いてください」という。 翌日、朝早く上海に出張のひとなどが、帰ったが、結構な人数が2次会へと流れた。 ところが、入ったバーが、静かなバーどころか、ロック・バーで、ギンギンのブルース・ロックが鳴っている。 ありゃ~、これは駄目だなと思っていたが、しばらくして、みんながウクレレを弾いてください、という。 普通、これが日本人の集まりだったら、KY,つまりお店の空気を読め、すなわち、ロック・バーだから今日はウクレレを弾くのはあきらめましょう、ということになるのだが、主流派が中国人の集まりなので、そんなKYは通用しない。 なんと、堂々と、バーのマスターに、「ウクレレを弾くので、ロックの音楽の音を小さくしてください」と交渉しているのだ。 う~ん、さすがに彼らはやっぱりパワーがあるな。 へんな遠慮とか決まりだから、なんてことは気にせず、堂々と自分たちの意見を主張しているのだ。 すると、マスターが僕のところにやってきて、「ウクレレ弾きたいの?ちょっと待っててね」という。この曲が終わったら、ちょと音楽のボリュームを下げてくれるのかなぁ、と思っていたら、またしばらくして僕の所にやってきて、 「1曲だけ弾くの?」と聞くので、 「出来れば2~3曲」という。 すると、「ちょっと待っててね」といってまた行ってしまった。 どうやら、わけを聞くと、今かかっているロックのCDは、別のお客さん(常連さん)が持ち込んだものだそうで、そのお客さんがプロデュースしたものらしい。だから、途中でぶち切るわけにはいかなかったみたいなのだ。 でも、マスターは、親切にもその常連さんたちを納得させたらしく、 音楽を一切消してしまって、ぼくのところにやってきた。 「お名前はなんていうんですか?」 「パスタです」 すると、お店のすべてのお客さんに聞こえるように、 「今から、パスタさんのウクレレ・ライブが始まりま~す!」 といって、みんなが一斉に拍手しだした。 そんな、大げさなことをするつもりではなく、僕たちの仲間たちにだけ、聴こえるように演奏できればいい、と思っていたのが、 結局、お店のお客さん、みんなに聴こえるような演奏会になってしまった。 えい、いまさら、ひっこみつかないよ、とばかりに、 「最初の曲は、ルイ・アームストロングの『What A Wonderful World』です」 といった。すると、「お~渋いじゃん」というような声が聞こえてきて、 僕がウクレレ・ソロを演奏するのに合わせて、歌ってくれるお客さんがいる。 1曲目が終わると、なんだか大きな拍手。 こんなつもりじゃなかったんだけどなあ、と恐縮しながらも、 「次の曲は、」と紹介をはじめている自分がいる。 「みなさん、ジェイク・シマブクロって知っていますか?」 ところが、ブルース・ロックの常連さんたちには、残念ながらジェイクの名前はどうやら知られていないようだ。 それでも、めげずに、 「では、映画『フラ・ガールズ』は知っていますか?」 と聞くと、今度は「それなら知っているよ」との反応。 そこで、「では、『フラガール』の中にも出てきた曲『TOUCH』をやります。」 と言って、演奏を始めた。 ジェイクのこの曲は、ウクレレれはなく、ギターの奏法が多用されていて、 チョーキング、スライド、ハンマリング、プリングなどが出てくるのだが、 むしろ、ロックな常連さんには、そういう弾き方は逆に違和感がないらしい。 ひとりの常連さんが、いつのまにか、通称、象さんギターといわれている、小さなエレキ・ギターを取り出して、一生懸命、音を追いかけようとしている。 あ~、ちゃんとウクレレの演奏を聴いてくれて、楽しんでくれているんだな、と思いながら弾いている。 中国人の仲間たちは、最初の曲より、むしろこの曲に聴き入ってくれているみたいだ。 しかし、しっとり系の曲なので、3曲目は、歌の弾き語りにした。 「プラターズの『おんり~~、ゆ~~~~、』というゆるやかなやつではなく、 リンゴ・スターのタイトなリズムの『Only You』をやります」という。 「おおぅ」という声が聞こえる。 やっぱり、このお店のお客さんは、ロックが好きなんだなあと思う。 前奏から歌へはいって行くときに、さっきの象さんギターのひとが、一生懸命、音を取ろうとしてるのがわかったので、 「キーはAです」と歌いながら言うと、それで音がとれたらしく、しばらく一緒に、コードを弾いたり、コードの上で、ギターのフレーズなんかを入れてきてくれる。 やっぱ、ロックだよなぁ~、と思いながら、ウクレレ3曲の演奏を終わった。 僕の演奏が終わって、拍手があったあと、ずごくいいタイミングでまた、ブルース・ロックのCDの曲が流れてきた。 わ~、すごいいいタイミング。こんどは中国人の仲間が驚いていた。 マスターがやってきて、「よかったですよ。すみませんね、なかなか演奏してもらえるまで、時間がかかちゃって。あっちのお客さんがプロデュースしたCDをかけていたので」という。 「いえ、とんでもない、こちらこそ、お店の音楽を消してもらっちゃって、ウクレレの小さな音色で、ちょっとみなさんには物足りなかったでしょう」 と言うと、 「いえ、全然、そんなことないですよ。ちゃんと聴いてましたよ。ぼくらもお客さんも、みんな音楽好きで、バンドやってたりするから、みんな気持ちがわかるんですよ。あっちのお客さんは、今でもバンド活動やっているし。」 そうかあ、ウクレレ、というよりも、音楽が好き、楽器を弾くのが好きだし、自分たちで演奏できたら気持ちいいんだよね。 そんな感情を共有してくれていたのか、とちょっと嬉しくなった。 中国人の仲間たちは、みんなそれぞれ、 「ウクレレ演奏、よかったですよ。ありがとうございます」と感謝の言葉を口にする。 こういうときの、気持ちの表現も、とってもストレートだ。 日本人だけの集まり、特に会社の集まりなんかだと、 「なんだよ、またパスタのやつがでしゃばりやがって」 みたいなことを、口にはださないけれどもそう思っている人もいるんだろうなぁ、という雰囲気を感じることがある。 しかし、この中国人仲間の集まりで、そういうことを感じたことは一回もない。 素直な感謝の言葉。ねぎらいの言葉。 やっぱり、彼らは礼儀正しい。だが、それだけじゃないと思う。 本当に、音楽を楽しんでくれたんだなあ。 演奏した、そういうことへの、そしてそういう相手に対するリスペクトの気持ちが伝わってくるんだ。 これは、ぼくのひとりよがりではないような気がする。 人間関係の結び方が、日本人ほど儀礼的ではなく、素直でストレートなんじゃないかと思う。そして、そんな彼らに対しても、ぼくはリスペクトの気持ちをいつもいだいている。 外国に住んで、外国の言葉を使って仕事し、生活する、というのは、とても大変なことだと知っているから。 あらためて、中国人の仲間たちの集まりに感謝し、おおいに交流を楽しんだ。 また、ウクレレ・ライブをやります、といって、ウクレレを聴きにくるお客さんの前ではなく、音楽は好きだが、おれたちが好きなのは「ロックだぜい」というお客さんの前で、突然、ウクレレ演奏をする展開に冷や汗だったけれども、 お互い、音楽をやることの気持ちよさは共通だよなあ、 そんな常連のロック野郎たちのあたたかな気持にも感謝。 そして、ちょっとお店の雰囲気やコンセプトからは、難しいと思われた、小さな音色のアコースティック・ライブを、その場で実現してくれちゃった、マスターとお店のスタッフにも感謝。 心と体がいっぱいあたたまって、終電で帰宅したのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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