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ラスタ・パスタのレレ日記

2008年05月17日
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小澤征爾のチャイコフスキー「悲愴」

小澤征爾が、新日本フィルの特別演奏会で指揮をとるので、サントリー・ホールに行ってきた。

世界の小澤というように、日本が自動車や家電・ITなどのテクノロジーで世界を席巻するよりもはるか前に、日本を飛び出し、カラヤンバーンスタインに師事し、西洋文化の神髄であるクラシック音楽のトップ指揮者になった、というのは素晴らしいことだと思う。

しかし、あそらくはぼくの未熟な耳のせいであると思うけれども、
今まで、彼の本拠地であった、ボストンやタングルウッド音楽祭、NY,シカゴなどで彼とボストン・フィル、ニューヨーク・フィルを指揮したコンサートを何度も聴いたが、

ものすごく素晴らしいとか、ものすごく感動した、という経験が無かった。
少し感動もするし、オーケストラの演奏も、そこそこというか、かなりいい演奏だったと思うのだが、やっぱり、何か物足りない感じがした。

どの演奏でも、決して失敗しないし、十分に合格点をクリアしているのだが、
いつも80点強の優等生的な指揮に感じられてしかたなかった。

ちょうど、日本の自動車が、性能もいいし、壊れないし、燃費もいいし、品質はいいのだけれども、どこか心揺さぶるところがないというか、そんな感じがしていた。

しかし、個性の強い世界中の指揮者にあって、すごく調子のいい時とだめな時の落差が大きい指揮者、個性的だがアクが強すぎる指揮者に比べて、小澤さんの安定した指揮というのは、それ自体でも評価されていたのかもしれない。

実際、小澤さんは著書の中で、どんなに忙しくて夜遅くパーティなどでお酒を飲んで帰ってきても、翌朝は朝6時から譜面の勉強をする、と言っていた。

譜面の勉強とは、オーケストラの全楽器の全パートをすべて頭の中に叩き込み、その上で、音楽全体の構成を組み立てて、自分の解釈、イメージを作っていく、という作業だ。それは、常人にはとてもできない、おそろしくクリエイティブで、同時におそろしく地道な作業なのだと思う。

いまでこそ、小澤さんは「世界の」という枕詞で語られるが、彼の才能は、彼の気が遠くなるような地道な努力と、強烈な負けん気の賜物であるのかも知れまい。

さて、今回の新日本フィルとの特別演奏会は、

第一部
モーツアルト:
ディヴェルティメント ニ短調 K.136
オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314

休憩

第二部
チャイコフスキー:
交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

である。

もちろん、聴き所は、第2部のチャイコフスキーの「悲愴」だ。

第1楽章は、

しずかに、しずかにはじまり、まずは、第1テーマがかなでられる。
小澤さんは、この最初のパートで、たぶんかなり意識的にすこし長い間合いを取りながら先に進んでいく。すこし不吉な予感をさせながら激しく展開した後、

すこし穏やかな第2テーマが提示される。
これぞ、ロシアの、スラブ民族の、と言い切っていいかどうか分からないが、せつないけれども叙情的なメロディがながれる、
ぼくは、このメランコリックなメロディが大好きだ(クラシック初心者的なコメントですみません)


第2楽章は、もう少し晴れやかな調子で雰囲気ががらっと変わる。
4分の5拍子、ワルツのような浮き立つオーケストラ。
しかし、中間部で、やがてある種の暗さ、憂いがあらわれる。

第3楽章は、細やかな楽器のささやきから快活な曲調で進んでいく

第4楽章は、最初、第1テーマが提示され、次に第2テーマで、次第に高揚していく。

ぼくは、サントリーホールの2階席で、オーケストラと指揮者の全体を見渡せる席に座っていたのだが、この第4楽章で、小澤征爾のすごさを見たような気がした。

それは、上からステージをみていると、オーケストラの演奏者が、まるで、時計回りにいくつかの塊となって動いていくのだ。
各身体の動き、そしてかなえられる音が、オーケストラの中で、4つぐらいのグループになって、渦をかいていくうように感じられたのだ

まず、第一バイオリンの塊、チェロとコントラバス、
ホーン楽器。打楽器。

オーケストラが、4つか5つの大きな楽器の集まりのように見えるし、感じられた。この5つの楽器を時計回りに、連続してぐい~~んと回転させながら、小澤征爾さんは音楽を創っているかのようだった。

オーケストラの演奏を聴いて、こんなふうに感じたのは初めてのことだった。

小澤マジック、としかいいのうのない音の塊、さざなみ、大波、潮の流れ、渦潮、。。。。

ティンパニーがおおきな音を連打して、演奏はクライマックスに向かって最後の突進をするかと思いきや、音楽はふたたび、ゆっくりと静かになり、
最後の最後まで、小さな、微弱な音が消え入るまで、小澤征爾と新日本フィルは、チャイコフスキーの名曲を演奏しきった。

会場の盛大な拍手。感嘆とも言えるような、賞賛ともいえるような拍手。
何度も、出てきて挨拶する小澤征爾。

それから、これはタングルウッド音楽祭でもそおうだったのだが、
小澤征爾は、第1バイオリンなど、自分の真近にいるオケのメンバーだけではなく、ホルンやオーボエ、コントラバスなど、すべての演奏者に拍手し、観客に彼らを称えてやってくださいといわんばかりに手で紹介する

小澤さんは、いつも必ずそうする。オーケストラのメンバーは、きっと小澤さんと演奏できてよかった、楽しかった、充実していた、と思っていると思う。

小澤マジックの半分は、そうやってオケの全員に一体感をもたらし、小澤さんとやってよかったと思ってもらえる細かい気遣いをし、
一方で、オーケストラを緩急自在にあやつって、なんか誰もやったことが無いような、ダイナミックな、動きのある、音楽の渦を創ることによって生み出される壮大な音空間を、コンサートホールの中に具現化する。

なんか、シロート的なコメントで申し訳ないが、そんな魅力と実力をかねた円熟した指揮者になっていたんだなあ、とあらためて感嘆した。

さすがに、これだけの熱演の後は、アンコール曲の演奏はなかったけれども、みな満足したのではないだろうか。

オーケストラも、お客さんも、そして小澤征爾氏自信も。

彼の素晴らしさは、こんなふうなものではないかと思った。





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最終更新日  2008年06月13日 02時02分49秒
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