キリスト信徒やまひでの心の窓

2021/05/04(火)09:26

「パスカル」ルフェーブル著 ©1949

パスカル(20)

「聖人物語式パスカル学者」のようにではなく、マルクス主義社会学者として人間パスカルを描こうとしたという。この本の扉を開いた時、著者がマルクス主義者だとわかって、読むのをやめようかと思った。しかし思い直して読み始め、最後の2章は斜め読みだったが、なんとか読み通した。著者にはパスカルの信仰の高揚についての共感はない。それでもパスカルを愛している著者の思いは隠しようもないのだ。いくら人間パスカルが賛美されても、神への賛美に至らなければ、パスカルは喜ばないと思う。日本語訳者・川俣晃自という人の訳文が、すばらしい。 ​「永遠の沈黙」云々というこのパスカルの一行は、突如として感得されて不安な魂を締めつけずにおかなかった或る激動を表現し得ている。これは一つの絶叫である。この孤立した簡潔な一句にあふれている芸術のなんというすばらしさ。十二音綴詩体ではじまったかと思うとたちまち砕け散り、飛び去らせてゆくその韻律のすばらしさ、孤独なパスカルの叫びはパスカルが充たそうとして充たすことのできなかった空間を遠くひろがってゆく。それにしてもこのパスカルの叫びは、やがてランボーやロートレアモンのごとき詩人たちが辿りつき、あらためてまた美しい文体や文学に移し入れるに至ったあの切れ切れな嗚咽と相へだたることはいかばかりであろうか・・・・。 183頁​

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