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オランダ ネーデルラントより

オランダ ネーデルラントより

祖父の心温まる話し(恐くありません)

昔から、誰かがいつも、そばにいるような気がした。

あれは、4~5歳のときだっただろうか。
縁側で遊んでいると、背の高い白い洋服をきて、
帽子をかぶった男性が立っていた。

優しくアタマをなでながら、
「お母さんに優しくな。
アレは不憫な娘だ。
上のコがいたのに、
いなくなってしまった。
甘えたくて、
寂しいんだろう」
そして、彼はすぅーっと消えた。

あまりにもボーっとしていて、
夢でもみたのだろうかと思っていた。

祖母にきいてみた。
「お母さんに、お姉さんか、お兄さんがいた?」
祖母は、真っ青になって、教えてくれた。
母が生まれる前に、死産した女の子がいたことを。
そのことは、母ですら知らないことであった。

当時、義理の祖父のことを、本当の祖父だと思っていた。
戦後、戦争未亡人になった祖母と再婚したのが義理の祖父だった。
義理の祖父も、本当に優しいおじいさんだった。
スラリと高く、優しくニコニコしている。

でも、あの白い洋服のおじさんと、声も違う。匂いも違う。
かなり大きくなって、本当の祖父の話をしてくれた。
戦後すぐ亡くなってしまった優しい祖父の話しを。
祖父の写真を見せてくれた。
白い麻のスーツと白いカンカン帽。
スラリとした背丈は190cm近い。
当時としてはかなり背の高い男性であった。
小さくて優しい目が、黒いトンボめがねの奥で光っていた。

「この人だ」
小さい頃に会ったおじさんは、絶対この男性だと確信した。
母は生まれつき虚弱体質で、結婚後、肺炎でよく入院していた。
母を心配した祖父が、メッセージをたくしたのだろうか?

オランダの小さな我が家の箱庭にも、春が訪れた。
桜をみていると、桜の木のもとに、
祖父が春のやわらかな光とともにいた。

春の光はまぶしくて、今にも消えてしまいそうだった。
何かいわなきゃ、しゃべらなきゃ。
「おじいちゃんだね!おじいちゃんだよね!」
桜の木のそばで、祖父はニッコリ微笑んだ。
もっと何か話さなきゃ。
消えてしまう前に。

「おじいちゃんは、おばあちゃんと会った時、
校長先生だったんだよね!
アタマがよかったんだよね!
偉かったんだよね!」
すると、はみかみながら、少しアタマを傾げて恥ずかしそうに笑った。
そして、春の光の中にすぅーっと消えていった。

春の陽気に誘われてでてきたのか。
好きな桜を愛でたかったのか。
曾孫に会いにきてくれたのか。

また、いつか会いにきてくれるだろうか。
祖父の名前はキンイチという。

小さい頃から、誰かがそばにいて、
見守られているような気がしていた。
死にそうになったことが、何度かあったのに、
奇跡的に助かったのは、なぜだろうか。

でも今は、はっきりわかる。
それは、祖父のおかげだったのだと。
祖父が守ってくれたのだと。

今でも、このどこかで、守ってくれているのだろうか。
キンイチおじいさん、
どうか子供達と愛する人を
いつまでも見守ってください。

合掌


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