幸せ探し

2016/04/11(月)13:01

2016文楽4月公演第一部その4命をかけた恋(久我之助と雛鳥)

私のすきなこと(1050)

真ん中の川を隔てて左が雛鳥 右が久我之助の住まい 山の段久我之助は采女の局入水の責任をとって、父の領地の端にある別荘で謹慎中。ひとり言「入鹿は今は飛ぶ鳥落とす勢い、逆らう事もできぬ。父もやむなく下についているのであろうが、時機がくれば必ず・・・。」雛鳥は久我之助が別荘にいるらしいと噂を聞き、母定高に頼んで、同じく自分の所領の別荘で、久我之助の屋敷が見渡せるところに保養と称してやってきている。雛鳥は久我之助が部屋にいるのを見つけ、川に石を投げたりなんとか気がついてもらおうと努力する。やっと久我之助がそれに気が付き、二人は川岸まで降りて向かい合う。雛鳥「やっとお顔を見ることができました。二人を隔てるこの川に私は泳ぎ入ってあなたのところに行きたい。」(と本気で川に入ろうとする)久我之助「早まるな。男でも泳ぎきるのは難しい急流。まして今は入鹿様より臣下は個人的に親しくしてはならぬ(謀反の警戒)という厳しいお達し。別荘で親しく話していると分かれば、家族にも咎めがくる。自重せよ。」ふたりが言い合っているところへ、二人の親たちが入鹿の言いつけを伝えるためにやってくる。川を隔てて話し合う親たち大判事「もしも息子が否といえば、その首打ち落とす所存。そなたはいかがなさる。」定高「入鹿様よりのありがたいお言葉。いやとは申しますまい。娘は喜んで入内いたしましょう。」(と無理に平然とした様子を見せる) 大判事「まことに、息子もとり立てられれば出世。よい話ですな。しかし万一となれば・・・」(出仕の話は実は入鹿の罠と大判事はわかっているが、いやだとは言えない)定高「花咲かぬ枝は、切り取るほかはございませんでしょう。」(と断れば殺すという覚悟をほのめかす)二人は子たちが承諾すれば、花の咲いた桜の枝を、断れば枯れ枝を川に流すと約束してそれぞれに説得にかかる。定高「入鹿様よりそなたを入内させよとのご命令、断れば命はないがいかがする。」雛鳥「そのお話は無理な事、心に思う人があり命を捨てることになってもお断りします。」定高「親に断りもなく思う人ができたこと、今更叱っても仕方がない。久我之助殿のことか。操を立てるために死ぬと言うのは立派ではあるが、そなたが話しを断って死んだとなれば、久我之助殿とて話しを断るしかなかろう。お前が死んだ気になってこの話を受ければ、久我之助殿もあきらめて出仕する気になり、久我之助殿は死ななくて済む。お前の道を立てるか、久我之助殿の命が大切かよう考えて返答しや」雛鳥は泣く泣く「それでは、このお話お受けいたしましょう。」と力なく答えるが、本心は入内は形だけ了承して、あとで自害しようと心の中で思っている。定高「それでは、桜の枝を流してもよいな。」と桜を流す。定高「雛鳥そなたの本心がわからぬ母ではない。お前の思い立てさせてやりたい。なんの妃の位とて、血に汚れた玉の輿じゃ、なんのありがたいことがあろう。一度は受けたそのあとで、せめてもの情けにこの母が打ちおとしてやろう。」(こちらも入鹿の横暴には許し難いとは思うものの、できることと言えば死を持って拒否をしめすしかない)こうして母と娘は抱き合って泣くのであった。一方久我之助の方では大判事「入鹿はそなたを出仕せよと言うが、実はそなたを呼びだして采女の局の行方を白状させるため責め殺す所存であろう。そなたは父にも口にせぬが、采女の局いずれかに隠しているのであろう。この大事きっと隠し通せよ。どうせ死ぬのであれば、相手に殺されるよりはここで自害するか。」(蝦夷子が子どもの入鹿に野心をしゃべったばかりに、秘密が漏れて失敗したのとは違うことを示している)久我之助「もちろん私は自害する覚悟。ただ私が死んだとあれば、雛鳥も私のあとを追って死ぬでしょう。それで、太宰の家には私が出仕することになったと返事をしておいてください。」そこで、久我之助は腹に刀を突き立てる。大判事もまた、桜の木を水に流す。二人の親はそれを眺めて「これでめでたしですな。」と悲しみを殺して笑い合うのだった。その後定高は娘の首を打ち落とす。雛鳥の断末魔の悲鳴。何事と大判事は襖を開けて相手方の様子をうかがう。大判事「いかがなされた。定高殿。」定高「桜の枝を流したけれど、実は娘の首打ち落としました。(大判事の家をうかがい)もしや久我之助殿腹を召されたのではないか。」定高「もし久我之助殿まだ息があるのであれば、この娘の首受け取ってください。せめて二人で冥途の旅させてやりたい。」と娘の首を雛道具とともに川に流す。大判事は熊手でそれを掻き寄せ瀕死の久我之助のそばに持ってくる。大判事「この雛道具は雛鳥の嫁入り道具。二人は親の認めたれっきとした夫婦じゃ。忠義の息子と貞女の嫁、冥府にいっても胸をはって通るがよい。」と涙ながらに言うのであった。第一部は入鹿の野心のために犠牲になった人たちの悲劇が語られていると思う。   

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