カテゴリ:オーディオ
オーディオというのは、とても金のかかる趣味だと思っていました。
寺島靖国氏の著書『疾風怒濤のJAZZオーディオ放蕩生活』を読むと、家の庭に高さ12メートルの電柱を建てて専用トランスを確保したり、240万円のダールジールのパワーアンプに50万のアンソニーギャロでは釣り合わないよとか、アバンギャルドの最高機種は1800万もするのでとても手がでないから1450万のトリオにした、などという話が出てくるのです。 また、村井拓弥氏の『これだ!オーディオ術』を読むと、オーディオは高級嗜好の世界ではないと言いながらも、自身が使っているオーディオ機器の価格は1500万を超えているようです。 家に6600Vを引いて専用トランスなんて確保できるのは一部のマニアに限られるとは思いますが、そこまでいかなくても、オーディオを趣味にしている人は、傍目から見ると散財しているようにしか見えない人が多いような気がします。 寺島氏や村井氏とは使う金の桁が違いましたが、普通のサラリーマンだった私の父も、残された機器から察すると、300万以上はオーディオにかけたのではないかと思います。私が5年前に楽天オークションで売ったアンプやプレイヤー、スピーカーだけでも、定価だと150万を超えていましたから、残っているのと合わせると、実際はもっと使っていたのかもしれません。 それが車だったら家族も文句は言わないのかもしれませんが、オーディオというのはただ音が出るだけです。そんなものが部屋にゴロゴロあっても、狭い家では邪魔なだけです。 音の違いに興味が無い人にとっては一つで十分なものですから、欲しいオーディオ機器を買い換えるのは父にとっては簡単ではなかっただろうと思います。 父の場合、私の兄を自分の趣味に引き込み、思い通りの音が出なかったアンプやスピーカーやプレイヤーやケーブルは兄に譲ったり、カラオケ好きの親戚にあげたりして、うまい具合に新しい機器を手に入れていたようです。 私も中学生時代にパイオニアのCS-81というバカでかいスピーカーをもらい、サンスイのアンプで鳴らしていました。 遊びに来てブルーハーツのカセットをかけた同級生のM君はすごいと言ってくれましたが、私はその当時はオーディオに興味がなく、CS-81は狭い部屋では邪魔でしょうがなかったです。 その後、高校生の頃にヤマハのNS1000をもらったわけですが、NS1000Mより左右で8万くらい高く、エンクロージャーには黒檀を使っていて異常に重いNS1000は、詰まったような音で、音の良さなどわからない私が聴いてもイマイチな音だったように記憶しています。 ![]() そのNS1000は5年前に処分してしまいましたが、その時譲ってもらったアンプは今も使っており、ビクターの名器SX500とダイヤトーンのDS66Zを、なかなか良い音で鳴らしてくれています。 ![]() この30年前のプリメインアンプ、パイオニアのA-90Dは、私が現在所有している5台のアナログアンプの中では、一番良い音がすると思います。 ![]() ところが昨年の夏、兄にもらったフォステクスの20センチフルレンジユニットで自作スピーカーを作ろうとネットを徘徊していたところ、数千円の中華デジタルアンプの音が、国産10万クラスのアナログアンプに引けを取らない音だとか、バブル時代の30万クラスの音を超えている、などというレビューを発見してしまいました。 パイオニアのA-90Dはバルブ時代に定価22万で発売されたアナログアンプです。30万クラスとなると、生前親父が使っていたラックスマンのプリアンプC-06aやサンスイのパワーアンプ、B-2102MOSクラスということになります。 僅か数千円であの音を体験できるならその音を聴いてみたいと思いました。 そこで、試しに中華デジタルアンプを購入してみることにしました。 中華デジタルアンプは安いものでは2000円くらい、高いものでも2万前後で買えます。 しかし、中華デジタルアンプは初期不良が多く、当たり外れがあるという話です。 最初は鳴ってもすぐ壊れるというレビューもあったので、初期不良しか対応していない純粋中華デジタルアンプではなく、6ヶ月保証が付いているNFJというメーカーのデジタルアンプと、PC音源再生用に同じメーカーのハイレゾ対応のDACを購入してみました。 NFJは中華デジタルアンプを独自に改造して販売している日本のメーカーで、ヤフーショップのレビューを見る限り、商品の評判は良いようでした。 ということで、NFJの販売するFX-98Eを購入しました。 FX-98Eは中華デジタルアンプメーカー、SMSLのSA-98EをNFJが独自に改良したもので、SA-98Eよりノイズが少なくゲインも調整できるとあり、160Wは必要ないと思っていた自分には使い勝手が良さそうでした。 私がこの機種を購入するきっかけになったあるサイトでは、15年前のデノンの中級アナログアンプPMA-2000IVに肉薄する音とありました。 価格は、現時点でSA-98Eが32V・ACアダプター付きで1万2000円から2万円くらい、FX-98Eは電源なしで5000円でした。 フルパワー160Wの性能を求める場合、32V電源が必要らしいですが、現在のところNFJでは32V電源を販売していません。 別途アマゾンで、それなりに信頼できそうな32VのACアダプターを購入するとなると、アンプ本体に近い値段です。 SA-98Eが32V・ACアダプター付きで1万2000円から2万円というのも、ACアダプターの値段が半分くらいを占めているのでしょうか。 32Vアダプターは、アマゾンでは安い物もありましたが、すぐ壊れるというレビューなので止めました。 電源については、FX-98Eは32V電源が必須というわけではなく、15Vから32Vの範囲で使えるらしいので、フルパワーで使う予定のない私は、NFJで販売していた24V-5Aのスイッチング電源を購入しました。これにはAC100V電源ケーブルと機器への供給ケーブルが別途必要です。 実際に自分の環境で聴いた限りでは、24V電源でアンプのゲイン調整をデフォルトのまま最低でも、ボリューム9時から10時の位置で爆音を響かせてくれました。 なお、電源は家にあったNECのノートパソコン用ACアダプター(19V-3.16A)でも使えました。プラグサイズは外径5.5ミリ、内径2.5ミリになります。 ![]() 商品は注文した翌日に届きました。 早速聴いてみると、レビューを読んで期待が大き過ぎたためか、最初の印象は、値段なりかなというものでした。 そう感じた理由の第一は音質というよりホワイトノイズです。 電源プラグを差し込んだ状態で既に、スピーカーからけっこう大きなホワイトノイズが出ていたのです。 また、アンプの電源を切って電源プラグを外すと、右スピーカーから「ボツ」っというポップノイズらしき音も出ました。 ちょっと気になったのでNFJに問い合わせたところ、ホワイトノイズについてはこのアンプに搭載されているチップ、TDA7498Eの仕様とのことでした。 現在手元には5台のアナログアンプがありますが、一番古い40年前のサンスイのアンプ以外はこのようなノイズは出ません。 仕様ならば仕方ないのですが、ちょっとがっかりでした。 2メートル離れれば聞こえないと言われればそんな気もしますが、実際は聞こえます。 この「サー」という音は気になりだすと、かなり心を乱す音です。 なお、NFJからの返答によると、このホワイトノイズはゲイン設定とスピーカーの能率にも左右されるそうです。 ゲインを下げれば小さくなるということでしたが、私は出荷時のまま最低ゲインで使用しています。能率92dBのタンノイDC2000で聴くと、2メートル離れても気になる大きさです。 90dBのNS1000Xでも気になりました。 しかし、このホワイトノイズの件は、アンプの電源を入れる前にコンセントを入れた段階で出るのは不良の可能性があるとのことで、返送するようメールをもらい、初期不良交換してくれました。 新しい機体もホワイトノイズの大きさは同じでしたが、電源を入れる前から出ていた点は改善されていました。 ポップアップノイズらしきプツ音についてはそのまま使用しても問題ないとの返答でした。 パイオニアのA90DやマランツのPM80AFやソニーのTF333ESGでは電源ON-OFF時にこのようなプツ音は全くしませんが、テアックのAR630は小さな音がします。 そのまま5年ほど使い続けても特に異常はないので、問題がないと言われればそうなのかもしれません。 次回は感想です。
Last updated
2023.10.02 20:32:29
[オーディオ] カテゴリの最新記事
|