|
テーマ:お勧めの本(7363)
カテゴリ:本(小説以外)の話
今年も残すところあとわずか。
今年読んだ本の中で、1冊をあげるとするならばこの本です。
正直言って、とってもとっても重たい本です。 アフリカのあまりにもひどすぎる現状に、大きな無力感におそわれます。 『忘れられた大陸』という言葉の表す通り、この目次に出てくるような諸問題がテレビで報道される機会は本当に少ない。 NHKでは時々見かけますが、民放では皆無に等しいと思います。 かつてアフリカの飢餓が世界的な問題となったのは1980年代ですが、その頃と較べて今は問題が少なくなったから報道がされなくなった訳では決してありません。 慢性的になってしまったアフリカ問題から新しい紛争、国際問題へ世間の興味も資金も流れてしまっているのが現状です。 ワシントン・ポストはこの状態を「無関心による大量虐殺」と表現したそうです。 内容は5つの章に分かれています。 どの章を読んでも暗澹とした気持ちになりますが、私にとってもっともショックだったのは、あまり予備知識のなかった最終章の子ども奴隷とチョコレートの話でした。 奴隷というと過去のもののように思いますが、今でも奴隷は存在します。 西アフリカでは子どもの人身売買が横行しています。(中でも最悪なのは、ボビー・オロゴンの出身国として有名になったナイジェリアだそうです。) 多くはうまい話(働きながら学校に行けるなど)にだまされて集められる子どもたちですが、貧しさゆえに親自らが子どもを売るケースも少なくありません。 世界のカカオの7割は西アフリカで生産されています。中でもコートジボワールは最大の輸出国。 (輸入国はフランス、オランダ、アメリカといったチョコレート大国ばかりです。) そのカカオ農園で奴隷として働いている子どもの数は1万5千人ともいわれるそうです。 幼い子どもたちは朝5時から夜11時までカカオ豆の摘み取りをさせられ、重い荷を運び、足や手をとめれば殴られ、十分な食事も与えられず狭い小屋にすし詰めにされている。 彼らが解放されるのは、逃亡に成功したときか死んだとき・・・。 彼らの多くはカカオ豆が何になるのか知らないそうです。 ましてやチョコレートなんか食べたこともない。 チョコレートを食べられる裕福な国の子どもたちは、誰がどのようにチョコレートの原料を集めているか知らない。 私の子どもを含め、日本の子どもたちはなんと豊かな暮らしの中にいるのか改めて認識させられます。 チョコレートの製法は皮肉をこめてこう呼ばれるそうです。 「カカオ豆を炒って粉にし、砂糖と牛乳と・・・そして、アフリカの子どもたちの汗と血と涙を加えたもの」 この現状が明らかになるにつれて、多少は国際世論も動いてはいます。 アメリカでは2002年にエリオット・エンゲル議員が「奴隷無使用チョコ(ココア)」認証制度の法案を議会に提出し、法案は通過したそうです。(その後のアメリカ国内での状況はわかりませんが・・・。) しかしながら、本当の問題は「奴隷無使用チョコ」では解決できないのがアフリカ問題の根の深さなのです。 「本当の問題=救いようのない貧困」が解決しない限り、奴隷から解放された子どもたちが生きていく術がないのが現実です。 単にチョコを買わないことが問題解決にならない以上、買うべきではないとは思いません。 ただ、その分なにかアフリカの子どもたちに支援してあげて欲しいなあ・・・と思います。 もちろんお金だけで解決できるわけでもないのですが、日本に住む私達ができることは世論を高めることと金銭的な寄付くらいしかないのだから・・・。 フェアトレードのチョコやココアは・・・と思ったのですが、調べてみると南米のものばかり。 フェアトレードの手も西アフリカにはあまり届いていないのかもしれません。 なにかと問題もありましたが、今年大きな話題となったホワイトバンド。 世界では3秒にひとり、貧困のために子どもが死んでいる・・・ それでは具体的に、どこの国でどのようにそれが起きているか、具体的にイメージできますか? ホワイトバンドは購入したけれど、次の一歩をなにも踏み出していない人に、ぜひ読んで欲しい1冊です。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 20, 2005 07:43:29 PM
[本(小説以外)の話] カテゴリの最新記事
|