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October 2, 2006
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カテゴリ:本(小説)の話
スペインで史上空前の超ロング・ベストセラーとなり、37カ国で翻訳出版されたカルロス・ルイス・サフォンの『風の影』を読みました。

風の影(上) 風の影(下)謎の作家フリアン・カラックスの過去が明らかになるにつれて、ダニエルの身に危険が迫る。一方、彼は作家の生涯と自分の現在との不思議な照応に気づいていくのだが…。
ガウディ、ミロ、ダリなど幾多の天才児たちを産んだカタルーニャの首都バルセロナの魂の奥深くを巡る冒険の行方には、思いがけない結末が待っている。
文学と読書愛好家への熱いオマージュを捧げる本格ミステリーロマン。(楽天ブックスより)


内戦後のバルセロナが舞台。古書店の息子ダニエルが「失われた本の墓場」でであった「風の影」という1冊の本。
その本に魅了され、作者のフリアン・カラックスについて知ろうとするうちに、大きな謎に巻き込まれていきます。

かといって一部の帯にあるように「青春ミステリー」なのか、というとちょっと違うように思います。
最後に全てが理論的に説明される正統派のミステリーのつもりで読み始めると当てが外れます。

大きな枠ではミステリーの形をとりつつも、理屈では説明されない運命の導きや、過去と現在、虚構と現実の不思議な符合など、ゴシック小説、またはガルシア・マルケスを彷彿とするようなマジック・リアリズムで味付けがされています。
なるほど!の書評はニューヨークタイムス。
「ガルシア・マルケスとウンベルト・エーコとルイス・ボルヘスが一堂に会した破天荒なマジックショー!」

内包された過去の物語はまさにゴシックロマン。(スティーブン・キングが賛辞をよせています。)
謎を追うにつれて、舞台は内戦前や内戦中など、過去と現在を行き来し、いくつもの話が層になっていきます。
最後に全てが1点へと収束していく快感は長編ならではのもの。


多少気になることもなきにしもあらず(クララの扱い方や、妊娠が判明するまでの期間の短さなど)ですが、充実した読書時間を持つことができました。


ややもすればグロテスクなだけになりそうな話にも関わらず読後感がさわやかなのは、外枠がダニエルの成長物語(ビルドゥング・ロマン)になっていることと、親子の絆や命のリレーについて描かれていること、そして愛すべき脇キャラ、フェルミン・ロメロ・デ・トーレスの存在のお陰かな。
もしも映画化されることがあるならば、フェルミンのキャスティングが一番のポイントでしょう!

映画化といえば、集英社のサイトでまるで既に映画になったような「風の影」のサイトがあります。
舞台となったバルセロナのシーンと照合したガイドマップなどがあり、結構楽しめます。
(試し読みもできます。)

■集英社「風の影」公式サイト
 http://bunko.shueisha.co.jp/kaze/



また、本と読書に対するオマージュが随所にささげられて、本好きを自認する人のツボにはまると思います。







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Last updated  October 2, 2006 06:44:40 AM
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