江国 香織作 映画“間宮兄弟”を見ての感想
いわゆるお宅間宮兄弟の部屋にまずびっくりする.多くの本と趣味の小道具がぎっしりしかも整然と整頓されていて,丁寧に深く日常生活を送っていることがわかる。毎日一日の反省会を開き平凡だが真摯に人生と向き合っている愚直なまでの兄弟の生活は、並みのものではまねできない。30歳を過ぎた兄弟はやはり伴侶を求めるが、ちょっと浮世離れをしているのでなかなか恋の対象にはならないが、カレーパーテイや浴衣パーテイを開き女性をおもてなしする一生懸命な姿はほほえましい。母親はこの兄弟がとても自慢.“僕たちどうしてこんなにもてないんだろう。お父さんのように弁護士だったらもてたかな“と言うと“女性にもてないなんてたいしたことではないわよ。あなたたち、兄弟はいつまでも仲良くしてね”と答える。母親役の中島みゆきは地で行っていると言う感じでこういう母親に育てられると人生豊かにマイペースで生きられ気楽で良いなと同感する。江国香織小説はいつもかもし出す雰囲気が独特だが私に無いものを持っておられるので読んでいて楽しい。監督は森田芳光と意外な作品をとられた感じがする。
あらすじ
東京、下町のとあるマンションで間宮兄弟は一緒に暮らしている。兄・間宮明信(佐々木蔵之介)は、ビール会社の商品開発研究員。弟・間宮徹信(塚地武雅)は、小学校の校務員だ。
彼らは自分たちの世界で、楽しく穏やかに何不自由なく暮らしている。
ある日、徹信が兄に「カレーパーティーをやろうか」と持ちかける。招待客は、徹信と同じ小学校で働く葛原依子先生(常盤貴子)。二人目は、行きつけのビデオショップでアルバイトをしている大学生の本間直美(沢尻エリカ)だ。カレーパーティー当日。カレーは3種類のチョイスカレー(チキン、ビーフ、シーフード)、テーブルの上には花、食後のボードゲーム、準備は完璧だった。カレーは大好評、モノポリーは大興奮、パーティーは大成功に終わり、“今日の反省会"は、史上最高に盛り上がった。
夏休み、間宮兄弟は、母と祖母の暮らす故郷・静岡に帰省する。
駅には母の順子(中島みゆき)が中古で買ったロールスロイスでお出迎え。
田舎に帰れば兄弟は今も子供のまま。おこづかいをもらい、ここでもやっぱり昼寝をし、海水浴を楽しんだ。
仕事帰りに時々、明信はビール会社の先輩である大垣と安西とバーに立ち寄る。この日は、大垣からある相談を受けていた。大垣は妻、さおりに離婚を切り出して以来、家に入れてもらえないという。そして離婚の原因は安西との不倫にあるのだった。
数日後、大垣家のリビングで向かい合う大垣と明信、そしてさおり。離婚の話は平行線に終わった。
同じ夜、徹信はバーでぼったくりに遭っていた。
ある日、直美は明信から告白されるが、丁重にそれを断り、就職も決まったので、アルバイトを辞めると告げる。落ち込む明信を徹信は慰め、これからもずっと一緒に暮らそうと宣言する。
その頃、直美は妹の夕美に、いつまでも姉妹で一緒に遊んでいていいのだろうかと言うと、夕美は「間宮兄弟を見てみなよ。あの年でもずっと一緒だよ」と答えるのだった
30過ぎても結婚できず、女には振られ続け、仕事もバリバリこなしているというのでもない。世間的に見たらちょっといけてない感じですが でも“間宮兄弟”は、誠実にきちんと、しかし楽しく暮らしている。
野球のスコアをつけ、ジグソーパズルに興じ、浴衣を着て花火を楽しみ、カレーパーティーを開催して人をもてなす。冬至にはゆず湯に入り、母親の誕生日はみんなで祝う。
華やかさはまったくないが、日々の生活をきちんと生きている兄弟と、富や名声ばかり追い求め醜くあがいている人たちと、本当はどっちが幸せなのだろうかと考える。
きちっと丁寧に生きること、それが難しくなっている現代。そんな中で、いつも暖かな気持ちで暮らしている兄弟は、私たちの心を和ませ、こんな生活も合ってもいいんだという気持ちにさせてくれる。私は間宮兄弟派です。