日本の美 漆器
つややかな漆の光漆を塗った漆器は日本の代表的な器で軽くいつまでも光沢を失わず、世界中の人々の愛されています。Japanは漆器を表す言葉として使われています。
漆は漆の木一本から数グラムしか取れない貴重品です。漆の汁液は乳白色、皮膚につくとかぶれることがあるので古来、邪悪なものを寄せ付けない特別な力があると信じられてきました。
漆器の代表的な色は黒と赤、鎌倉時代黒塗りの漆器で食事をする人が増え、生活に定着しました。赤は魔を払い福を呼ぶということで祝いの席や正月などに使われるようになりました。その後、茶の湯の文化と結びつき、装飾が施され現在に、息づいております。
漆器の製造工程
漆はウルシノキ等から採取した樹液を加工した、ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料である。ウルシノキから樹液をとることを「漆掻き」「漆を掻く」という。現在では、国産の漆の生産量はごく僅かで、大半を中国から輸入している。
製造工程は漆の精製から素地(きじ:素材が木の場合には「木地」)の加工、下地工程、塗り工程などに大きく分けられるが、細かな工程を挙げると30から40もあり複雑である。工程の違いにより、漆塗にもさまざまな種類がある。漆の工芸品は朝鮮半島、インドシナなど東アジアで広く見られる。
英語で、磁器をchinaと呼ぶのに対して漆器をjapanと呼ぶことからも判るように、欧米では日本の特産品と考えられている。
製品として完成後は、木地や下地の状態が分かりづらいので購入の際には注意したい。 名のある店舗でも廉価な製品は輸入品であったり、簡略化した技法で製作されている場合がある。 また、値段を高く設定し高級品だと思わせる商法も僅かだが健在である。制作した職人や作家の名前が分かるものが望ましい。 良いものであれば修理して何年も使えるので無闇に廃棄しないよう心掛けたい。
漆器の由来
中国の殷(いん)(3,600~3,000年前)の遺跡から漆器の一部が発掘されていたので、漆器は中国が発祥地で、漆器の技術は漆木と共に大陸から日本へ伝わったと考えられていた。ところが、北海道の南茅部町の垣ノ島B遺跡から中国の物を大幅に遡る約9,000年前の縄文時代前期の漆器が見つかり、また漆木のDNA分析の結果、日本のウルシの木は日本固有種であることが確認された。このことから、漆器の日本起源説も主張されるなど漆器の起源については議論が続いている。日本では垣ノ島B遺跡の出土品に次いで約6,000年前の朱塗りの櫛(鳥浜遺跡)も発掘されている。現在、中国で最古の物は長江河口にある河姆渡遺跡から発堀された約7,000年前の漆椀である。(日本で縄文時代に作られていた漆器は朱のみ。黒の漆器は弥生時代以降)
上記の垣ノ島B遺跡から出土した漆器は2002年12月28日の深夜に,8万点に及ぶ出土文化財や写真,図面とともに火災にあった。幸い形の認識と繊維状の痕跡がはっきりと視認できる部分は焼失を免れ,2004年の4月には12ページの調査報告『垣ノ島B遺跡出土漆製品の分析と保存処理』が出された[1]。
漆器に用いられる技法
蒔絵(まきえ):蒔絵筆によって漆で模様を描き、その漆が乾かないうちに金粉や銀粉をまき、研ぎ出しや磨きを行うことで模様を作り上げる。平蒔絵、研出蒔絵、高蒔絵などの技法がある。
沈金(ちんきん):沈金刀で漆の表面を線刻し、その彫り跡に金箔や銀箔をすり込んで文様をつくる。
螺鈿(らでん):アワビや夜光貝の貝殻を薄く研磨したものを漆の表面にはめ込む。貝殻の真珠質が見る角度によって青や白など、様々な輝きをみせる。
拭き漆(ふきうるし):顔料を加えていない漆を木地に塗ってはふき取る作業を何度も繰り返し、木目を鮮やかに見せる手法。
その他、スクリーン印刷のような比較的安価な機械化された技法もある。
日本全国に漆器のそれぞれの特徴を持つ産地がありますが私は京都にゆかりがありますので京漆器について興味があります。
京漆器は長い歴史に育まれ、他の産地に見られない「わび」「さび」といった内面的な深い味わいを備えています。優雅で洗練されたデザインと、堅牢さに加えて、平面や立体の作りの美しさや、繊細な仕上がりが特徴です。
板物、湯曲、挽物等の技法を使って木地作りを行い素地に地固め、布着せ、錆付けを施して研ぎ、中塗り等を経て上塗りをします。加飾は漆で模様を描き、金、銀粉等を蒔き、盛り上げたり、ぼかしたり、色を変えて立体感を表現します。また、貝殻のかけらをちりばめて文様を表現する青貝等の技法もあります。
新春ともなれば、町家でも新年最初の茶の湯の会が開かれます。初春の飾りを施した清楚な茶室の中に、ひときわ目をひく京漆器。それは控え目ですがどこかに凛とした風格を漂わせています。
私は象彦の菓子皿を持っています。シンプルな図柄に赤と黒が映えとても美しいものです。ひとつ日本の文化の奥ゆかしさを手元に置くと心まで豊かになります。
象彦は漆器博物館を所有しておりますので京都に来られた場合立ち寄られることをお勧めいたします。