山田洋二監督映画“息子”を見ての感想感想
映画『息子』は、椎名誠原作の「倉庫作業員」をベースに山田洋次が監督・脚本を手掛けた、田舎に住む父親と都会でフリーアルバイター生活を送る息子との対立と和解を通して、家族の真の幸福を描くドラマ。岩手の山村で独り暮らす父(三國連太郎)と、東京でアルバイト生活を送る息子(永瀬正敏)。反発しあいながらも、やがて和解していく父と子の絆を、名匠・山田洋次監督が四季折々の風景や当時の社会世相なども交えながら描いたヒューマン映画の傑作。(1991年10月公開)
【あらすじ】
年老いた父は岩手で農業をやっている。肉体労働なので、年老いた身体には堪える事もあるが作物収穫の喜び、独立して生きる誇りでがんばっている。
二人の息子は独立して遠く岩手を離れ東京でそれぞれ生計を立てているが、対照的な兄弟で次男はいまだ職を転々として行方定まらずという感じであるが、父は口ではけなすが次男のことが心配でならずまた自分の歩んできた道と似ているので投影していとおしく思っている様子を三国さんがうまく演技し見ているものに伝わってくる。
美しい岩手の風景と近代化されコンクリートで固められた東京を映しながら、人間の生活に何が大切かをそっと教えてくれる映画である。
次男の恋は突然やってくる。方言と兄へのコンプレックスから自己表現が下手な次男が始めて恋をする.其の相手は聾唖者であったが、優しく美しい女性で戸惑いながらも其の娘と将来を誓い合う。
父は温かく受け入れ3人は本当の親子のような日々をつかの間、東京で過ごす。父にとって次男の恋は喜びは希望に満ちていたもののようだ。
岩手に帰り誰もいない雪に埋もれた大きな家で其の孤独が襲ってくる。
ここで映画は終わっているが次男と嫁になった娘は、父を気遣い、岩手で暮らすようになると思う。
弱者の優しさを監督はいつも描いているからあまり語らなかったが最終的にははそうなると信じてそこに救いを見出したい。
私の場合は、ラスト近くの息子の部屋でのシーンが忘れられません。
興奮ののあまり眠れず、夜中にビールを飲みながら、息子のためにと寡黙な父が歌い慣れない「お富さん」を唄い聞かせる。
そこに父親の様々な想いが凝縮されており、そして反抗してきた息子も、その親の想いを素直に受け止めているのが十二分に感じ取れるシーン。
山田洋次の映画はいつ見ても視線が優しくとくに弱者に、生きる本当の喜びを教えてくれている。私は山田洋二監督フアンです。