テーマ:バリアフリーの世界(188)
カテゴリ:人とのふれあい(people)
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レントゲンを取り、診断をしてもらい 松葉杖で病院を出たころには午前0時を回っていた。 診断は「ただの捻挫」。包帯をくるくると巻かれ(アメリカに湿布はない) 痛かったら市販のイブプロフェン系の鎮痛剤を薬屋で買って飲むこと また、4日しても痛みがひかなかったら、指定の整形外科を訪ねることを指示された。 ただ、当日は痛みが強いだろうからと紫色をした錠剤をのませられた。 アメリカの薬は、健康な男子、つまり身長190センチはあるかと思われる 体格のよい白人男性を基準に作られている。 彼らよりも余裕で30キロは軽い私には、アメリカの薬は強すぎるのだ。 たとえば、日本の市販のイブプロフェン系鎮痛剤は有効成分が150mgだが アメリカの薬屋で通常売られている同系の薬は250mgだ。 いつもなら、薬に慎重な私だが、空腹のあまり、 口元に持ってこられた薬を、ぱくっと飲み込んでしまった。 空腹に強い鎮痛剤をのんだため、思い切りハイになり 非常に愉快な気分で、帰途についた。 「ひゃっほー、ただいまぁ~、見て見て、かわいい松葉杖もらっちゃったよぉ。」 家の戸を開けるなり、叫んだことは覚えているが、その後の記憶はまったくない。 ~~~ アメリカの病院システムは、日本のものと随分違う。 どちらかというと、弁護士のシステムに似ているといえばわかりやすいだろうか。 つまり、通常、医師は「クリニック」または「ドクターズ・オフィス」と呼ばれる 自分自身の事務所というものを持っており、そこで、患者からの相談を受ける。 何か重篤な問題があり、自分のクリニックの施設では処置ができない場合、 その医者自身が、総合病院、つまり「ホスピタル」に出向き、 そこで手術なり、検査なりの処置を行うのである。 自分で、処置できない場合には、他の医師への紹介状を書いてくれる。 例を取って言えば、 私には、かかりつけの内科医がいて、 普段は、その内科医の「クリニック」へ行っている。 一度、ちょっとしたことで入院したことがあるのだが、 その時は、その内科医師が提携を結んでいる「ホスピタル」へ入った。 入院中は、その「ホスピタル」に、 かかりつけの内科医師および担当の胃腸科の医師が 「往診」に訪れ、処置をしてくれるのだ。 退院後は、入院していた「ホスピタル」には行かず 内科医および胃腸科医の個人のそれぞれの「クリニック」に通い フォローアップの検診をしてもらっていた。 つまり「ホスピタル」というのは「施設のある箱」であるので 救急の場合や入院、または特別な機器が必要な検査や処置をする時以外は 同じ医師でも、個人のクリニックに相談にいくことになる。 もちろん例外もあって、 インターンは「ホスピタル」に雇われているので自分のオフィスを持っていないし 医師によっては、「ホスピタル」の中にしかオフィスがない、 つまり自分の「クリニック」を外には持っていないケースもある。 有名な医師は、いくつかの「ホスピタル」と提携している場合もあるし、 手術をしないような医師は全く「ホスピタル」とは提携せず すべて自分の「クリニック」または「オフィス」で処置を済ませる。 また「クリニック」を2つや3つかけ持っている医師もいる。 日本では、大病院の先生は、勤務時間はずっとその病院で働き、 外で患者を診るということはない。 また町医者が大学病院に出向いて 入院している患者を診ることはしないので その点が、大きく違っているのだ。 そうやって、同じ医師が「ホスピタル」に行ったり 自分の「クリニック」で患者を診たりするので、 受診には予約が必ず必要だ。 予約が必要ということは、混んでいる場合には、当日の予約が取れないこともあるわけで 風邪などの場合には「受診した時には、すでに治っていた」なんていうこともざらである。 また、風邪等、軽い症状の場合には、ただ、医者に 「薬局で市販の風邪薬を買って、寝てください。」と言われるのがオチなので 大人の場合には、ちょっとやそっとの風邪では医者にかかることは少ない。 ~~~ 翌日、薬による恐ろしい二日酔い状態で目覚めた私は 腫れ上がった足を見て、前日の出来事が夢でなかったことを恨んだ。 実は6日後には、日本へ行くことになっていたのだ。 予定を変更することはできなかった。 4日後に医者に行くかどうかを決めていたのでは遅すぎるので、 熱と吐き気で朦朧としながらも、起きてすぐに指定された医者に予約を入れた。 数日後訪れた整形外科医には、 「捻挫ではなく、ヒビが2箇所に入っており、じん帯もやられている」という説明を受けた。 取り外し可能な簡易ギプスで固定し、余分な重みをかけないことを指導されたが それ以外は、「4週間たったら、またいらっしゃい」ということであった。 (簡易ギプスについては、こちらを参照) 実際にヒビが入っていたことには驚いたが、大げさな話ではなさそうだったので 楽天家の私は、そんなものかと簡単に考えていた。 そして私は、その状態で不思議の国『ニッポン』に旅立つことになったのである。 つづく ![]() 淑女のたしなみ。 ヨーロッパのシステムは知らなかったが エミリーさんの日記によると、 イギリスも同じようなシステムのようである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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