カテゴリ:おんがく(tunes)
彼を初めて見たのは、テキサスの小さなクラブだった。 ちょっと、面白いハウスバンドがいるカントリーミュージックのクラブがあると 泊まりに行っていた先の友人がたまたま連れていってくれたのだった。 カバーチャージは、たったの6ドル。 クラブは、彼の音楽に合わせて踊る カウボーイとカウガール達であふれていた。 カントリーミュージックは、 日本で言うとちょっと演歌のような雰囲気がある。 私は、それほどカントリーが好きなわけでもなかったし、 ただのハウスバンドである彼の名前など カリフォルニアから遊びに行っていた私たちが知るはずもなかった。 それに加え、何を勘違いしたのかカウボーイの地に紛れこんでしまった私は クラブの中のたった一人の非白人。 最初は、ジンジャーエールを握りしめ 6弦ギターとスティールギターが組合わさった見たことのない変な楽器を まるでマジシャンのようにあやつる彼に ただただあっけにとられて隅っこに突っ立っていた。 ところが、カントリーとサーフロックが混ざったような乗りの良い曲は 私が今まで耳にしたどんなカントリーとも違っていて 2曲、3曲、進むうちに体が勝手に踊り出してしまうのを どうにも止められなくなってしまったのである。 次に彼を見たのは、随分時を経たニューヨークでのことだった。 もう、彼のライブを見たことすら忘れ去っていた頃に 偶然ニューヨークのコミュニティ紙で彼の名前を見つけ、 これは、テキサスで見かけた彼に違いないと ライブハウスに足を運んだのだった。 私はまったく知らなかったのだが その前年にビーチボーイズとコラボレーションをした彼は さらにさらにパワーアップしていた。 特等席は、美女を何人も周りにはべらせたタランティーノ監督やら 映画のプロデューサーやらが何人も陣取っていて もしかしたら、別人のライブに来てしまったのかと不安になったくらいだった。 その頃から、彼はだんだんメジャーになり 宣伝やサウンドトラックも手がけるようになっていった。 彼のCDを買ってみたりもしたけれど 観客の前で燃えるタイプなのか 私のライブの思い出が強すぎるのか あの強烈なパワーを録音からは感じることができず 私のiPodには、彼の曲は入っていない。 あまり頻繁にはニューヨークにこない彼だけれど くるたびに、テキサスで初めて聴いた時の感動を思い出し 自分が昔見つけた宝物を見に行くような、そんな気持ちで 胸をどきどきさせながらライブを聴きに行くのだった。 <ジュニア・ブラウン@Joe's Pub 4/20/2007> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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