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以前、民主党は、「人間を幸福にしない日本というシステム」などを書いたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏を呼んで勉強会を開いています。
民主党:ウォルフレン氏を招き議員勉強会開く『人間を幸福にしない日本というシステム』などのベストセラーで知られる
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏を迎えての民主党の議員勉強会が7日朝、
党本部で行われた。講演のテーマは「参議院選挙後の日本政治」。
1時間の予定時間をオーバーし、熱心な講演・質疑応答が展開された。
引用元:民主党HP |
民主党のマニフェストは概ねこの本に沿った内容になっていると思います。
それでは、この本で言いたいことは何かと言うと、
「日本の官僚はヒトラー」だ。
いかにも外国人に売るのに「分かりやすい」単純な作りになっています。
きっと、日本をよく知らない外国人は検証もせずに鵜呑みにしてしまうでしょう。
何も考えない日本の政治家も同様です。
占領軍は東条英機大将はヒトラーやムッソリーニの日本版だと考えたのだ。そして、民主主義の実現のため日本が何よりも必要としていることは、中央政府の強力な政治指導性だということに、全く思い至らなかった。
1945年以降、日本の寡占支配の構造は変わった。軍人と官僚との連合は、官僚と実業界の経済官僚との連合に取って代わられたのだ。
引用元:「人間を幸福にしない日本というシステム」第1章 日本の奇妙な現状(p140) |
しかも、この本は明らかに検証不足で誤解と偏見に満ちています。
例をいくつか示します。
みずからの権力保持のために明治政府が行ったことは(略)完璧な秩序という観念を以前にもまして明確に打ち出した。(略)
きっと読者の方は、1人残らず、日本の社会は強い調和を天から恵まれているという話を何回ともなく聞いただろう。学校でもそう教えられたし、テレビでもたびたび聞かされただろう。
引用元:「人間を幸福にしない日本というシステム」第3部第2章 思想との戦い(p256) |
日本人でそんな話を聞いたことがありますか?私は一度もありません。
徳川幕府の当局者たちは、争いごとや深刻な対立の表面化を最小限にとどめる巧妙な方法を考え出した。争いごとの当事者双方を、ともに自動的に有罪としたのだ。もしあなたがあの時代に生きていて、暴漢に襲われて殴られたら、あなたも公共の秩序を乱したかどで処罰に値するとされただろう。
徳川時代の社会が歴史上、比較的平和な社会だったと評価されるのは、不思議ではない。もちろんこれは、当時もお上へに一揆や反乱が数多く起こっていたことを考えれば、誤った評価だ。(略)
今日でも、望ましからぬ事件に関わった者は、その全員に多少とも責任があるという考え方が日本に深く浸透している。
引用元:「人間を幸福にしない日本というシステム」第3部第2章 思想との戦い(p258) |
喧嘩両成敗を拡大解釈したようです。余りに雑な解釈ですね。
人の行動を抑止する点で、「あなたは日本人らしくない」というほど効き目のある非難の言葉は、世界中どこにもないと思う。
引用元:「人間を幸福にしない日本というシステム」(p270-271) |
「あなたは日本人らしくない」という言葉もまず使われることはないですね。
このように、日本人への誤った知識・偏見でこのような本を書いているのは明らかですし、
事実やデータに基づいた記載も少なく、
私の評価は「トンデモ本」です。
また、この著者は、自らを省みることなく、ダブルスタンダードで主張を展開しています。
日本の体制派知識人がしているのはもっとひどいことだ。アメリカやフランスで流行っている社会学説を未消化のままごたまぜにして読者に押しつけようとするのである。(p274)
(略)
この「西欧中心的」というレッテル貼りは、これらの知識人が触れたがらない不快ないくつかの偽りのリアリティから、あなたの目をそらすのに役立っている。(p277)
引用元:「人間を幸福にしない日本というシステム」(p274-277) |
「体制派知識人」とレッテル貼りして言論を無価値にしようとしていながら、
一方で、自分に向けられた「西欧中心的」はレッテル貼りだと批難しています。
あまりに不誠実です。
この本で唯一正しいと思ったことは、官僚に「説明責任」(アカウンタビリティ)が必要だということ。
ただし、この本でなくても、そのような指摘はたくさんありますから、大したことは書いていないです。
このような本の著者をわざわざ講演に招いて勉強会をし、それに沿ったマニフェストを作る民主党に甚だ不安を覚えます。
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Last updated
2010.03.15 00:41:47
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