|
カテゴリ:再突撃!アンコールワット
★ カオサンへ その二・・・完結
「娘が一度アンコールワットを見てみろというものですから今回一緒に訪れました。まあ、すごいものですなぁ、日本にああいった遺跡や寺院はありません。しかしこの暑さは何とかなりませんかな」 この父親は五十八歳で、名古屋で商売をしているが最近は少し業容を小さくしているので、十日間ほど娘さんとアンコールワットに来たらしい。娘さんは二十五歳、アジアが好きなバックパッカーで、これまでカンボジアには何度も訪れている。 日本の日本語教師育成学校で学び、目的はカンボジアで日本語教師をしたくて、今回はシェムリアップに仕事先を探しに来たという。 数ヶ所の日本語学校を、見学を兼ねて訪れて、一応ある学校で今年の秋ごろから働くことで話もほぼ決まったとのことだ。ややふくよかな体躯の色白の可愛い娘さんだった。 「東南アジアは初めてなのですが、しかしなんですなぁ、いろいろ驚きますなぁ。日本は本当に平和なんですなぁ。あなたはよくあちらこちらに旅をされるのですか?」 「いえいえ、僕も初心者みたいなもので、あちこち訪れてはビックリしていますよ。でもいいですね、親子でこうしてアジアの旅をされるなんて」 ミニバスが再び出発するまでの間、十数分この父親と言葉を交わした。奥さんを数年前に亡くして、一人娘さんとの二人暮しらしい。そのむすめさんがしょっちゅう旅をしていて留守がちで、しかもこの先カンボジアで日本語学校の教師をする予定。 「それじゃ、この先お一人になってしまわれるのですね。寂しくありませんか?」 「まあ、仕方ありませんよ。娘のやりたいことを阻むことはできません。彼女には彼女の人生がありますからな」 理解のある父親である。彼は今夜バンコクに戻って一泊したあと、明日の飛行機で日本に戻るとのことだった。いくら小さな仕事でも十日以上放っておくわけにはいかないと言っていた。年令のワリにはまだまだ体力がありそうな人だった。 ミニバスは再出発した。整備された道路をグングン飛ばして走る。どこをどう走っているのか分からないが、徐々に建物が多く見えてきて、その反対に田園風景が少なくなってくるとバンコクに近づいているわけである。 空が次第に暗くなり、遠くにオレンジ色の夕焼けが現れた頃にミニバスは高架道路に入った。いよいよバンコクだ。 今回のアンコールワットの旅はSARSの影響で日本人が少なく、日本人が少ないと言うことはシェムリアップの町も閑散としていて、バイタク青年たちも暇をもてあましていた。 短い旅だったが、自分自身としては十分満足なものだった。 蛇足ですが、カンボジアで日本語教師を目指していた娘さんとは翌日の朝、カオサンの屋台で偶然にも再会しました。僕がいつもの店で朝食を食べていたら、たまたま前から歩いてきて、「あれ?」っと顔を見合わせ、彼女も僕と同じ屋台で朝食をとり、そのあと近くのカフェで少し話し込みました。 お父さんは先ほど空港に向かったそうで、彼女はこの先ネパールからインド、パキスタンと旅して、秋には再度カンボジアに入ると語っていました。 「それじゃあ、お元気で頑張ってください」 メールアドレスを交換して別れましたが、その後、インドから二度メールが届いていました。今はきっとシェムリアップで日本語教師として頑張っていることでしょう。 「突撃!アンコールワット」二度目は今回で終了です。 駄文にお付き合いくださりありがとうございました。三度目のアンコールワット旅行記まで皆様、一時サヨナラです。 投票してくださる方は下記から入ってください!m(__)m ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[再突撃!アンコールワット] カテゴリの最新記事
|