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Pero's Kingdom の植民地

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2006.04.12
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カテゴリ:国内
 被調査人の母親から「どちらからご出張ですか?」と聞かれて、「大阪です」 と応えるか否かに、五秒間ほど光ファイバーのような超ミラクルスピードで考えた。
 理由は被調査人、つまり彼女の息子が大阪に住んでいるからである。

 勘の良い人なら、これから先あれこれ突っ込んだ事を聞くと、「あなたそんなことまで何故聞くの?あっ、そういえばあなた大阪から出張と言っていたわね。もしかして興信所の方?息子がいよいよ結婚したい相手がいると言っていたから・・・」などという展開になる可能性も三パーセント程度の確率で発生してしまう懸念がある。

 しかしそんなことばかり気にしていては調査にならない。気にすると表情や態度にぎこちなさが出てしまうものだ。

 「大阪です。松江は初めてじゃないのですが、いいところですね。前回は会社の慰安旅行で来ました。随分前なのではっきりと記憶にないのですが、皆生温泉で一泊して、翌日小泉八雲記念館とかいうところを訪れました。小泉八雲は日本人だとばかり思っていましたよ」

 このような話題を持ち出して、相手を安心させるというわけだ。

 小泉八雲略歴 

 小泉八雲記念館 

 「松江はねぇ、大阪の人からすれば田舎でしょうけど、いい町ですよ。宍道湖の魚介類も新鮮で美味しいし、町中はきれいだしねぇ。でも私は松江の生まれじゃないですけどね」

 「えっ、女将さんは松江の生まれ育ちではないのですか?」とここでさりげなく聞く。

 「私は安来なのよ。松江からは近いですよ。何もないところだけど」

 「へー、安来ですか。僕は知ってますよ、安来節とそれから鋼(ハガネ)では江戸時代から有名ですよね。鳥取との県境にある町ですね。行ったことはありませんが興味はあります」

 安来市(やすきではなくやすぎである)について知っていると客から言われて、母親は嬉しそうな顔をした。誰だって自分の生まれ育った故郷のことを、他人が少しだけでも知っていると言うと嬉しくなるものだ。

 探偵はあらゆるジャンル、あらゆる事柄を広く浅く知っておくということが必要で、このような個人調査においても生きてくるというわけである。

  安来市のホームページ  
              ↑
 是非アクセスしてみてください。面白いドジョウすくいが見られますよ!

 ビール二本を空にし、日本酒の熱燗を注文した。まだこの季節、熱燗が冷えた体に心地良くしみるというには早いが、冷たいビールを二本飲んだ体を温める意味がある。

 熱燗を飲みながらテレビのバラエティー番組を眺めていた。
 まもなく奥で飲んでいた二人のサラリーマン風の客が帰って行った。まだ時刻は八時半である。店内は母親と二人だけになってしまった。

 「田舎にはよく帰られるのですか?」

 帰った客の後片付けが終わった頃を見計らってから聞いた。

 「それがねぇ。近くなのに滅多に帰らないのよね。親も兄弟もいるんだけど・・・」

 「家庭を持って、女将さんのようにこのようなお店を経営して、それは忙しいでしょう。お盆か正月くらいにしか故郷に帰らないというのは普通ですよ」

 プライベートなことは何も知らない客を装っていることに気をつけながら、僕はさらに言った。

 「実は私一人身なのよ。息子は仕事で大阪だしね。あっ、そうそうお客さんは大阪からの出張でしたよね」

 母親はテレビの画面から顔をこちらに向けて言った。






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Last updated  2006.04.12 21:30:11
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