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Freccia  Celeste

Freccia Celeste

混沌の使い魔 第16話(50パーセント)

.エレオノール心境
シキから愛しているといって欲しい
自分からは告白はできない
惚れさせたい
.からかい
エレオノール
シキの様子見
ロングビル 気づく

からかう
――カフェでのこと私は本気ですよ

人修羅?

――いえいえ女同士の話ですから

もやもやと
その後に惚れ薬騒動
.惚れ薬
ギーシュ
まあ、亡命してきて大変だってのは分かるし
ギーシュが放っておけないというのも分かるけれど
だからってあれは

.タバサ
直接ルイズに?
それとも手紙?
休学
理由は言わない
薬が手に入るかもしれない

危険なの?
お姉さまが何とか
私ができることならやらないといけない
もし、私が戻ってこなくて、うまく言ったならここに届けて欲しい
メモを
止めても行く

.ルイズ、襲われたら
――やだよ

そんな顔……しないで

私は、大丈夫だから
シキがそんな怖い顔をしている方が嫌だよ

笑ってくれなくてもいいの

本当はすごくやさしいこと、知っているから

だから、そんな顔しないで

手だって、真っ赤に汚れちゃって

そんなんじゃ、撫でられたって嬉しくないよ
.下書き
「――全くギーシュったら。……そりゃあ、まあ、亡命してきて不安がっている子に優しくするのは当然だと思うけれど。だからって……」

 亡命者の中には同年代の子達も沢山いる。しかも、アルビオンでは戦争があったのだ。自然、女の子が多くなるというものだ。

 だから――だからというのがまたムカつくんだけれど、ギーシュは亡命してきた女の子達の世話をひたすらに焼いている。「あの子達を安心させることができるのは僕しかいない」なんてことを言って、私よりも優先して。

 納得できないでもない。普段から女の子には優しくというのが絶対の信条になっているギーシュが、不安がっている女の子を放っておけるはずがないし、それは貴族としても当然だと思う。

 でも、それとこれとは別でムカつく。理由はどうあれ、私よりも他の女の子を優先しているのだから。それに、状況が状況だからだろう。ギーシュが何時も以上にもてている。それが何より許せない。私のことを一番だといっておいて、まんざらでもない様子なのだから。

 いや、今はあの子達は僕を必要としているんだなんて言って、確かに私よりも優先している。なまじ亡命してきて不安だということが大義名分になるだけに、余計に性質が悪い。

 ――ああ、もう。考えているだけでもムカついてきた。早く、作らないと。材料は後一つだけなんだから、すぐにでも手に入れて調合しないと。……あの子達には悪いけれど、放っておいても後で悲しむことになっちゃうしね。最後の材料を頼んでいた店へと続く路地を小走りで進む。



「――例のものを」

 怪しげなものが立ち並ぶ路地の中、一際怪しいものを扱っている店の店主に、声を潜めて尋ねる。店に負けず劣らず怪しい格好をした店主が、心得たとばかりに店の奥にへと入っていく。

 この店は私の行きつけだ。小遣い稼ぎに作っている香水の材料の一部もここで調達しているし、趣味で作っているポーションの材料もここで調達している。確かに一つ一つの材料は安くても、結構な数を購入しているから、私も立派なお得意さまだ。

 ――だから、多少の無茶も聞いてくれる。たとえば、ご禁制の素材を融通してくれたり。今回作るポーションにも、それが欠かせない。

「……これでギーシュのやつも他の女の子に目が行かないはずよね。まあ、女の子に優しくするのはいいけれど、一番は私なんだから」

「……確かに好きな人が他の女の子に目移りしていたら嫌よね」

「……ええ。惚れ薬なんて使うのは気が引けるんだけれど、ギーシュの性格じゃ惚れ薬でも使わないと泣かされる子が増えるばっかりだもの。だから、それを食い止めるためにも仕方がないのよ。ご禁制の薬だけれど、そういうことなら始祖ブリミル様もきっとお許しになるわ」

 きっとそうだ。言わば必要悪よ。それに、もともと私が一番だというのなら何の問題もないはず。

「……優柔不断な性格だとそういうのも必要になってくるのかしらね」

「……ええ。女の子に優しくするというのはいいことよ。でも、それに優柔不断が加わったら性質が悪くてしょうがないわ。だから、これは必要なことなの。私が恋人だってことが回りにはっきりと分かるようになれば、泣かされる子も減るんだから」

「……そうねぇ。あなたの言うことにも一理あるわ」


「……例のもの、だけれど……」

 奥から戻ってきた店主がこちらを、訝しげに見ている。気にならなくもないけれど、今は店主の手にあるものの方が重要だ。

「……代金はここに」

 す、とカウンターの上に金貨がぎっしりと入った袋を置く。地道に香水を売ってためてきたお金だ。ちょっと惜しい気がしなくもないけれど、これもまた必要経費だ。これで皆が幸せになると思えば安いものだ。

「……ああ、じゃあ、これを……」

 店主から例のものを受け取る。

「……ふふ。これで材料は全部揃ったわ。早く調合してギーシュに飲ませないと」

 つい笑みが漏れる。今回調合する惚れ薬はそれなりに難度が高い。調合が趣味の私としては、そういう意味でも楽しみである。学院に戻るのが待ち遠しい。店に背を向けると早速歩き出す。ああ、本当に待ち遠しい。

「……それで、惚れ薬の調合に必要なものは全部揃ったの?」

「ええ、後は調合するだけよ」

「……ええと、モンモラシーだったかしら? あなたの気持ちは分かるんだけれど、立場上、止めないわけにはいかないのよねぇ」

「……え?」

 そういえば、さっきから話しかけてくるこの人は――誰なんだろう? いや、もう声で大体分かったんだけれど……振り返りたくないなぁ。つい立ち止まっちゃったけれど、もう逃げちゃおうかな……。

「……とりあえず、これは預かっておくわね」

 ひょい、と手に持っていたものを取り上げられ、回り込まれる。やっぱり、エレオノール先生だ。この人だと、言い訳はできそうにないなぁ。

「……はい」

 すごく、高かったのに……。

「私は先に戻っているけれど、後で私の部屋に来なさいね。分かった?」

 それを無視するなんていう勇気は私にはない。

「……うう……はい……」

 よりにもよって、この人なんて……。他の先生ならもう少し誤魔化しが効いたかもしれないのに……。先を歩くエレオノール先生を見送る。……うう、帰りたくない。もしかしたら、私……退学になるのかなぁ。




◇◆◇




「……うう……」

 ノックしようとして持ち上げた手を、ゆっくりと下ろす。できる限り引き伸ばそうと思ってゆっくりと帰ってきたんだけれど、とうとう辿り着いてしまった。ノックをする勇気がなかなか出ないのだが、もうここまで来てしまった。これ以上は引き伸ばすのも難しい。それに、遅くなったことで機嫌を損ねるわけにもいかない。

 ゆっくりと、ノックをする。もし留守ならとも思ったのだが、やはりそんなことはないらしい。すぐに返事があり、入るようにと促される。

「……失礼します」

 ゆっくりとドアを押し開け、部屋へと入る。

「――案外早かったのね。もしかしたら来ないかとも思っていたんだけれど」

 椅子を回転させ、エレオノール先生が振り返る。話に聞いていた通り、亡命者の受け入れに関して仕事がたまっているからだろう。部屋のそこかしこに書類が山積みになっている。

「……それであなたの作ろうとしていた薬だけれど、ご禁制なのはもちろん知っているわよね?」

 確かめるように、ゆっくりと尋ねる。つい、目に涙が浮かんでくる。

「……私……退学ですか?」

 ご禁制の薬を作って退学になんてなったら、家にも影響が及ぶかもしれない。只でさえ厳しい状況のモンモラシ家、どうなるか、分からない……。

「――なんで?」

 しかし、予想とは違って不思議そうな声が返ってくる。

「――それはまあ、褒められたことじゃないけれど、まだ作っていないんでしょう?」

「……それは、まあ……」

 もしかして、見逃してくれるんだろうか? そんなこと絶対に許してくれそうもない人だと思っていたのに。

「……まあ、以前にも作ったことがあるのかもしれないけれど、少なくとも今は作ってはいないのよね。だったら、退学になんてならないわよ。――それに、あなたの気持ちも分からなくもないって言ったでしょう? 本当なら叱るべき所なんでしょうけれど、そんな気にもならないしね」

「……じゃあ」

「ええ。まあ、今回は厳重注意という所かしら? 別に学院長に報告するつもりもないから心配しなくてもいいわよ」

「……良かった。ありがとう、ございます」

 さっきとは、違った意味で涙が出てくる。

「――それと、これをあげるわ」

 差し出された小瓶を受け取る。

「……これは?」

 ポーションだということは何となく分かるけれど、さすがにどういったものかは分からない。

「さっき没収したものはさすがに返すわけにはいかないから、その代わりっていうところかしね。――惚れ薬がご禁制になっている理由は分かるかしら?」

 ゆっくりと尋ねる。

「……ええと、人の心を歪ませるものだから、ですか?」

 惚れ薬は、好きでもない人を好きにさせることを可能とするものだ。つまり、人の心を操る。それは、本来許されないことだ。

「――そう。人の心を歪ませるということは本来許されないことよ。だから、惚れ薬はご禁制になっているの」

「……はい」

「――ふふ。そう硬くならなくてもいいわよ。別にお説教をしようというわけでもないんだから。軽く聞き流してくれてもいいわ。――それでね、惚れ薬は心を歪ませるものだから許されないの。だったら、歪ませるものじゃなければ構わないはずよね?」

 まるでいたずらを披露するように、楽しげに口にする。

「……確かに、そうなりますね」

「その薬はね。惚れ薬に似ているといえば似ているんだけれど、ちょっと効果が特殊なの。それはね、一番好きな人への想いを強くするっていうものなの。ほら、そういうことだったら歪めるということにはならないでしょう?」

「……えーと、そう、ですね。でも、なんでそんなものを私に?」

 理屈上では問題なくても、そう気軽に渡していいものでもないはずだ。

「――あら、言ったはずよね。あなたの気持ちも分からなくもない、って。本当に、はっきりして欲しいって思うわよねぇ」

 まるで、自分のことのように呟く。私と――同じってことなのかな。でも、誰に……


◇◆◇
 




「――何か手伝えることはありますか?」

 ミス・ロングビルが話しかけてくる。正直な所、一人では手が回らない部分がある。ルイズも手伝ってはくれるけれど、やはり授業が優先ということであまり期待するわけにもいかない。だから、申し出は願ってもないことだ。

「――本業の方に支障が出ないのなら、ぜひお願いしたいです」

「そのことについてはご心配なく。学院長からもあなたを最大限サポートするように言われていますから」

 微笑を浮かべそう言うと、早速書類の山を一つ抱え揚げる。処理能力に関しては文句のつけようもないし、先日まで行っていたのはこの人だ。何も言わずとも安心して任せられる。

「じゃあ、そこの席をお借りしても構いませんか?」

 視線、で今では物置状態になっている予備の机を示す。当然片付けてからということになるだろう。なんだか悪いが、片付けるほどの余裕はない。

「――散らかっていて悪いのですが、お願いできますか? この部屋にあるものは自由に使っていただいて構いませんから」

「ええ。お借りしますね」

 それだけ言うと、書類の束を空いた場所に行った置き、手際よくスペースを確保する。







「――そろそろ休憩にしませんか?」

 ちょうど、先ほどお願いした仕事が終わったんだろう。書類をまとめながら、ミス・ロングビルが口にする。――私は、切りがいいところまではあと少し。

「――じゃあ、紅茶でも準備してきますね。準備が終わるころには一息つけるでしょうし」

 私の様子から察したんだろう。本当によく気が利く人だ。

「――すいません。お願いします」






 やはりここも物置になっていたテーブルを片付け、ポット、カップと手際よく並べられていく。ミス・ロングビルは学院長の秘書をやっているだけあって、こういうことに関しても得意らしい。……メイドに任せたことしかない私と違って。

「――どうかしました?」

 手元をじっと見つめていた私のことを不審に思ったんだろう。不思議そうに私を見ている。

「――あ、いえ、何でもできるだなぁと思って……。私はお茶の準備だとかあまりやったことがなかったので」

「必要に迫られて、ですよ。必要がなければ私もできなかったでしょうしね」

 少しだけ、ほんの少しだけ悲しげに口にする。だが、すぐにいつものように微笑を浮かべる。いつものように、同姓から見ても魅力的な。綺麗で、有能で、何でもできて……胸も大きくて。確かに魅力的だろうなぁ。見ていてよく分かる。

「――シキさんとは、お付き合いされているんですか?」
 
 この前は結局聞き損なっちゃったけれど、そういうことなんだろうなぁ。

「……え?」

「――あ、い、今のは……」

 私は何を言っているんだろう。こんなことをいきなり……

「――うーん、どうなんでしょうねぇ?」

 困ったように口にする。

「前にも言ったように、私はシキさんのこと好きですよ? ……この前は体の関係も持ちましたし」

「……そう……なんですか」

 やっぱり、そうだったんだ。……そっか。

「――でも」

「……でも?」

 シキさんのことが好きで、関係を持って――それで何があるんだろう?

「シキさん、私のことを好きだって言ってくれたわけじゃないですしねぇ」

「……でも、……その、シキさんと関係を持ったわけでしょう? だったら、シキさんも……」

 当然、そういうことのはずだ。

「うーん、なんて言えば良いんでしょう。男の人って、そういうのとは別にできるんですよ? 聞いたことありません? 男の下半身は別人格だって」

 からかうような口調だ。

「……ありません。それに、シキさんはそんな人じゃ……」

 シキさんは絶対にそんな人じゃない。

「……でもですねぇ。シキさん、女性の扱い――って言うのも変ですけれど、とにかく、ものすごく手馴れていたんですよね。たぶん、関係を持った相手は一人や二人じゃないんじゃないかな?」

 思い出すように頬に指を当て、呟く。少しだけ、顔を染めながら。

「……そんな」

 ないとは、思う。でも……確かに優柔不断そうなところはあるような……

「――まあ、それはあくまで予想ですけれどね。でも、想いぐらいはちゃんと言葉で伝えたらどうです? ――好きなんでしょう、シキさんのこと」

「――はい」

 ――今更、隠してもしょうがないか。

「だったら伝えたらどうです? 私に遠慮する必要なんてないし、遠慮するものでもないですしね。もちろん、私も引く気はないですけれど?」

「――私も、引く気はありません」

 お互い見詰め合って、どちらからともなく笑う。なんだかおかしいような気もするけれど、不思議と悪い気はしない。こういうのも、なんだかいいな。





◇◆◇





「――シキさん、

迫る
押し倒す
……どうしよう
する

どっちを
優柔不断


――ああは言ったけれど、優しくして優柔不断っていうのは罪よね
.回想 つなぎ
「――シキさん、今日の夜ちょっと飲みませんか? ちょうど珍しいお酒が手に入ったんです。お米を使ったもので、結構強いんです。たぶん、シキさんでも楽しめるはずですよ。……もちろん、良かったらですけれど」

「――米の酒か。興味はあるな」

「――良かった。じゃあ、部屋でお待ちしていますね。……待ってますから、来てくださいね」







 何度目になるか分からないけれど、ゆっくりと部屋を見渡す。仕事も大分片付けたおかげで、積んである書類も随分減った。本当はそれもどうにかしたいんだけれど、そればかりは仕方がない。それ以外に関しては、掃除もシェスタに念入りにさせたし、右から左に視線をやっても大丈夫だといえる……はず。お酒に合わせた器も準備してみた。

 ……もう一回お風呂に入ってこようかな。なんだかまた汗をかいたような気がするし。――でも、もうシキさんが来ちゃうかもしれないし。でも、もし……


 ――やっぱり、もう一度入ろうかな






「――ねえ、シキ。お米のお酒ってどんなのかな? そもそも、お米でお酒なんて作れるの?」

 ルイズは米で作った酒というものに興味があるものの、どうやら半信半疑らしい。

「ワインと味は全く違うが、問題なく作れるぞ。まあ、昔飲んだときには味なんてよく分からなかったが、あれはあれで悪くないだろう」

 今飲んだら、どう感じるのか興味がある。日本酒という、言ってしまえば故郷の味なのだから。

「ふーん……、飲んだことあるんだ。だったら、ちょっと楽しみかも」

 どうやらそういう酒があるというのは信じてくれたらしい。もっとも、今までワインしか飲んだことがないようだから、味にはあまり期待していないようだが。

「――まあ、好き嫌いはあるだろうが、一回は飲んでみるといい。ただし、飲みすぎるなよ?」

「……分かっているわよ」

 ばつが悪そうに目を逸らすルイズを尻目に立ち止まる。ちょうど部屋の前についた。ゆっくりとノックをする。



「……は、はい。ちょっと待ってください……」

 言葉は聞こえてくるが、すぐには開かない。まあ、片付けるものでもあるんだろう。書類が山積みになっているだけに、その辺りは仕方がない。

「……珍しいこともあるのね」

 何かを考えながら、ポツリとルイズが呟く。

「仕事が忙しかったんだろう。その辺りは仕方がない」

「……そうね」



 そうしてしばらく待って、ようやく扉が開く。

「――お待たせしてすみません。あの、準備はもう整っていますから、どうぞ入ってください」

 申し訳なさそうにしているエレオノールが、部屋へと促す。

「そんなに待ってはいないさ。それに、米の酒っていうのは楽しみにしていたからな」

「そうですか。――そう言ってもらえると嬉しいです。じゃあ、入ってください。道具もお酒に合わせて色々と揃えてみたんですよ」

 嬉しそうに口にする。俺も、日本酒というのはたまたま珍しいものをということなんだろうが、やはり楽しみだ。

「――シキ、楽しみにしていたものね」

 「そうだな。ルイズも気に入ってくれればいいんだがな」



「…………なんで、ルイズが?」

 ルイズを見て、今気づいたとばかりに呟く。

「……まずかったか? てっきり誘うつもりだと思っていたんだが……」

「――あ、いえ……。ただ、明日からも普通に授業がありますし、遅くまでというのはまずいかなぁと思っていて……。でも、そうですよね。せっかく珍しいものを手に入れたんですし。――ルイズ、あんまり遅くまでは駄目よ?」

「あ、はい……」




◇◆◇


「――シキさん、どうぞ」

 そう言ってエレオノールが徳利を手に。道具までといってもどんなものがと思っていた。だが、なかなかどうして、徳利……本格的に揃っている。まあ、金髪の女性がという部分には違和感があるが、そこはご愛嬌といったところか。

「――ありがとう」

 素直に受ける。

「――返杯というんだったかな?」

 お返しということで

「――ありがとうございます。でも、面白いですね。手に入れたときに作法だとかを聞いた時には変わっているなぁと思ったんですけれど、これはこれで利にかなっているんですね。」

  楽しそうに。ワインでは確かにこういうことは見ないような気がする。いや、もしかしたらあるのかもしれないが、基本的にはメイドが。貴族が自分でということがないということだろう。

「――ルイズはどうだ? 

「うん? んー、温めて飲んだりだとかは初めてだけれど、これはこれで面白いのかなぁって。ちょっと強いけれど、少しずつ飲む分には気にならないし。……ただ、チーズとかはちょっと合わないかも」

 確かにそれはあるかもしれない。道具は揃っているが、つまみにはワインと同じものが準備。まあ、この酒自体が珍しいのだから、そうそう手に入るものでもないだろう。それに、いかにも日本酒の友といったものがあったら、それはそれで違和感がある。




「――ルイズ、あなたはそろそろ寝なさい。この前みたいに二日酔いになるわけにはいかないでしょう?」

「……はい。――じゃあ、シキ、そろそろ寝ましょうか」

「まあ、授業があるのに二日酔いになるのはまずいしな。この前と同じになるととても授業どころじゃないからな」

「――え? あの、シキさんもですか。……その、一人で飲むのも寂しいですし、えーと、できたら……」

 しどろもどろに

「……せっかくだからな」

「じゃあ、私も「あなたはもう戻りなさい」……う……「いいわね?」……はい」


とぼとぼと
「……シキ、早めに戻ってきてね」


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