新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者及び濃厚接触者に対する抗ウイルス薬使用の暫定的手引き
国立感染症研究所 感染症情報センター 新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者及び濃厚接触者に対する 抗ウイルス薬使用の暫定的手引き-改訂版 表1. 新型インフルエンザA(H1N1)感染の抗ウイルス薬治療または化学予防の推奨投与量(表は季節性インフルエンザに関するIDSAガイドラインからの抜粋)1歳未満児 1歳未満児は季節性のヒト型インフルエンザウイルス感染で合併症を起こすハイリスク群である。新型(H1N1)インフルエンザウイルスのヒトへの感染の特徴は現在研究中であり、年長児や成人に比べて乳児が新型(H1N1)インフルエンザウイルス感染に関連した合併症に対してより高い危険性があるかどうかは分かっていない。 オセルタミビルは1歳未満児での使用に関するライセンスはない。しかし、1歳未満児の季節性インフルエンザに関するオセルタミビル治療の安全性データは限られているが、重篤な副作用の発生は稀である。 乳児はインフルエンザの有病率および死亡率が高いという結果があるので、新型(H1N1)インフルエンザ感染のある乳児に対するオセルタミビルでの治療は有益かもしれない〔表2及び3、タミフル(オセルタミビル)の緊急的使用権限 〕。表2. 1歳未満児のオセルタミビルを使用した抗ウイルス薬治療の推奨量表3. 1歳未満児のオセルタミビルを使用した抗ウイルス化学予防の推奨量 医療機関は、新型(H1N1)インフルエンザウイルス感染が確認された重症の乳児、あるいは新型(H1N1)インフルエンザが確定された患者に曝露した乳児においてオセルタミビルの使用の検討する際に、安全性及び使用量のデータが欠如していることを知っておく必要があり、オセルタミビルを使用した時に副作用に関して乳児を注意深く監視するべきである。本年齢層に対するオセルタミビルに関する追加情報を参照のこと。 妊婦 妊婦は季節性インフルエンザウイルス感染による合併症のリスクが高いことが知られており、妊婦の間での重篤な疾患は過去のパンデミック時にも報告されていた。新型(H1N1)インフルエンザウイルス感染が確認された妊婦が重篤な病状になったことが報告され、1988年には妊婦が他のブタインフルエンザウイルスのタイプに感染したのちに亡くなっている。 オセルタミビル及びザナミビルは”妊娠期分類C”薬物、すなわち妊娠中の女性に対するこれらの薬物の安全性を評価するために実施された臨床研究はない。何人かの妊婦がこれらを服用した後に副反応があったという報告があるが、これらの薬剤服用と副作用の間の関連は証明されていない。妊娠は、オセルタミビルまたはザナミビル使用に対して禁忌であると考えるべきではない。 オセルタミビルは全身作用があるために妊婦の治療に好まれている。予防薬としての選択は不明確である。ザナミビルは体内吸収が限定される理由で望ましいかもしれない。しかしながら、ザナミビルは吸入による投与なので、特に呼吸器系障害のリスクのある女性において、ザナミビルに関連する呼吸器系合併症を考慮する必要がある。 副作用及び禁忌 抗インフルエンザウイルス薬についての禁忌や副作用を含んだ詳細な情報に関して、下記を参照のこと: 季節性インフルエンザに関する抗ウイルス薬:副作用及び副反応 MMWR:インフルエンザの予防及びコントロール:予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)の勧告、2008年 MMWR 2008年8月8日/57(RR07);1-60 Harper SA, Bradley JS, Englund JA, et al. 成人と小児の季節性インフルエンザ-診断、治療、化学予防及び施設のアウトブレイクマネージメント:アメリカ感染症学会の臨床実践ガイドライン 抗インフルエンザウイルス薬の副作用はアメリカFDAのMedwatchのウェブサイトに報告したほうが良い。(2009/5/20 IDSC 更新)