『西郷どん』感想 第8回 ~吉之助は家族と郷中仲間の期待を背負って、いざ江戸へ
2018年NHK大河ドラマ 『西郷どん』 。第8回の部分的な感想です。19世紀に入ってから日本に欧米諸国の船がちらちら出入りするようになり、少しずつ時代が動こうとしていたとき、1853年にアメリカのペリー艦隊が浦賀に来航して、日本が変わる大きなきっかけとなりました。ドラマもやっと動き出した感じです。今回は西郷吉之助の妻・須賀を演じる橋本 愛さんのセリフや行動に感動した方が多いと思います。しかし私は、西郷家の中での須賀の言動が、これは現代の視点ならば共感できるだろうと思われる部分をあちこちに感じて引っかかってました。でも今作は私は好きです。毎週日曜日を楽しみに『西郷どん』を見ています。ボロッボロの布団を干す須賀(橋本 愛さん)を見て信吾や熊吉が、あのお嫁入りのときのフカフカの布団はどうしたかと訊いてきました。そして須賀は、あの布団はとっくに質に入れたと。(このボロボロ布団は小道具さんがせっせと作ったのか、どこかから持ってきたのか、ちょっと気になりました)このころ大久保正助は、3年に及んだ謹慎が解かれました。一方江戸では浦賀に来航したメリケンの艦隊にどう対応したらいいのか、幕府が大混乱をきたしていました。メリケン艦隊来航の知らせを、島津斉彬(渡辺 謙さん)は参勤の帰路の尾道で受けました。側近の山田為久(徳井 優さん)は慌てふためくけど、斉彬はジョン万次郎から話を聞いていて、だいたい予想どおりだと冷静でした。斉彬は急ぎ薩摩に戻り、殖産興業や軍備などに対し矢継ぎ早に指示していき、斉彬が最も重要とする篤姫の輿入れの準備に入りました。そして西郷吉之助(鈴木亮平さん)にはナント、殿・斉彬より指名で年明けの江戸への参勤に同行するよう命じられました。殿に同行できる誉れで喜びにわく西郷家ですが、妻の須賀から参勤には大金が要ることと、この家は借金を返せていないことを指摘されます。さらに須賀は、夫のいない借金まみれの家で江戸帰りを待つのは嫌だとも。(はじめ須賀は「貧乏は恥じゃない」とは言ったけど、さすがに毎日朝から晩まで働き詰めでは、裕福な育ちの須賀にはキツイと思う。)吉之助が江戸行きをどうしたものかと、ひとり木の上で悩んでいたら正助(瑛太さん)が上がってきました。吉之助が江戸行きを殿から直々に命じられたと聞き、正助は吉之助がたまらなく羨ましくなります。吉之助が金がないことと家族のしがらみを理由に江戸行きを諦めようとしているのを見て、正助は無性に腹が立ってきました。自分こそ殿に付いて江戸に行きたい正助は、お声がかからない自分の代わりになんとしても吉之助に江戸に行ってほしいのでした。そして二人はこの後、殴り合いの大喧嘩になりました。兄・吉之助にはなんとかして江戸に行ってもらいたい吉二郎(渡部豪太さん)たちは、もう一度兄を説得してほしいと正助に頼みこみました。しかし正助は説得はもう嫌だと言い、その様子を須賀が見ていました。でも兄さぁに江戸に行ってほしい気持ちは、須賀を除く西郷家の皆が同じで、女たちは内職を増やそう、熊吉は酒を売ってくると、それぞれ頑張ります。まだ幼い信吾(佐藤和太くん)や小兵衛(斎藤絢永くん)だって同じで、自分たちも稼いでくるとどこかへ行ってしまいました。さらに隣家の大久保家の女たちも、これまで世話になったお返しだと、内職の手伝いを申し出ます。しかし須賀は、こんなことをしてもどうにもならないと言い、西郷家を出て実家に帰ってしまいました。そのころ吉之助は篤姫の警護役として、指宿から鶴丸城に向かっていました。篤姫から直々に声がかかり、そのとき姫は吉之助に言います。「西郷、次は江戸で会おう。共に、お殿様のために尽くそうぞ。」江戸行きを諦めようと思っていた吉之助の心が大きく揺らぎました。西郷家の皆が吉之助のために必死に頑張っている姿を見て、そしてやはり吉之助自身が本当は江戸に行きたい思いがあるのを感じ取った正助は、郷中の仲間たちに「吉之助のために」と呼び掛けます。そして仲間たちは快諾し、支度金集めに走り回ります。正助はその足で大商人の板垣与三次(岡本富士太さん)の元に走ります。板垣は最初は借金を断りましたが、友を思う正助の熱意に打たれ、借金ではなく餞別として5両の金を持たせてくれました。皆で力を合わせて、吉之助が江戸に行くための支度金を用意しました。吉之助は最初は受け取るのを拒みましたが、“Cangoxina” の紙を見て少年の頃の熱い思いがよみがえり、皆の気持ちに応えるためにも、何より正助の気持ちに応えるためにも、江戸行きを決意しました。吉之助が江戸に行くと聞いて、隣りの部屋にいた熊吉(塚地武雅さん)が嬉し泣きをし、実は皆がそこにいたことがバレてしまいました。でもこういうときは、悪い気はしないですよね。ところがその後、実家に帰っていた妻の須賀が突然、父の伊集院直五郎(北見敏之さん)と一緒に西郷家にやってきました。直五郎は吉之助に、娘の我儘だけど離縁してやってくれと頼みます。そしていくらかの金子を餞別だと言って置いて、父娘は去りました。西郷家からの帰り道、須賀は父に本音を語ります。本当は吉之助の優しさが好きだったけど、吉之助が江戸へ行って自由に働くためにも自分は離れたほうがいいと思った(意訳)と。暗い夜道に月明りと提灯と父娘のシルエットが綺麗な演出です。そしてここで思ったことです。須賀は別れた理由を吉之助のためにと言ってますが、別の本音では、やっぱりもう西郷家には居たくないというのがあったのかと。貧乏大所帯での働きづめの共同生活で、ここの中で気の合う誰かがいるわけでもない。せめて主婦として家の中を采配できたらやりがいもあるけど、お婆さまも義妹の琴もいてそうはいかない。要するに西郷家は須賀には居心地が悪いのです。居心地が良ければ、妻として好きな夫の帰りをそこで待っていればいいのですから。ただ、手切れ金だの清々したなど酷い言葉で吉之助と西郷家の皆を傷つける汚名をいとわなかった、つまり言葉を飾って相手に中途半端に期待を持たせることをしなかった部分は、ある意味あっぱれと思いましたが。そして年が明け、安政元年(1854)1月21日、吉之助は出立しました。吉之助の晴れ姿を皆が見送りに来てくれ、熊吉は嬉し涙が止まりません。「皆のおかげで江戸へ行ける、おいは幸せ者じゃ。」吉之助は心から皆に礼を言いました。吉之助は郷中仲間には、必ず文を送ると約束します。そして誰よりも江戸に行きたかった正助は、これからは自分もお勤めに励んで、自分も江戸行きに選ばれる身になると吉之助に誓いました。郷中仲間たちの「気張れーっ!」「チェストーッ!」の声を背中に受け、吉之助は駆けだしていきました。そして桜島に向かって「行ってくっで~!」と叫びました。