セレンディピティ 2セレンディピティ C O N T E N T S 秘密の場所 かんじんなものは目に見えない 本の中の素敵な言葉 乾あんず 片山廣子 詩集 芥川龍之介 その時の天使 中島らも 猫町 萩原朔太郎 白神山地・奥入瀬渓谷 秘密の場所 不思議なもので、見慣れた景色や建物でも、時間や季節が創り出す 神秘のヴェールをまとうと、いつもとは違った表情を見せてくれるものです。 萩原朔太郎の「猫町」のように、不思議の国のアリスのように。 私にも覚えがあります。 少女の頃、一人で、多摩川付近を散策していると、石段がありました。 急な石の階段を上っていくと神社がありました。ふと裏手に周ってみますと その先も道があります。閉まってはいるけれどお店やさんがあって、 そこも突っ切って行くと、木の橋がありました。その向こうは、樹々が 茂っています。緑の好きな私は、嬉しくなって向こう側に渡りますと 幾つもの小道に分かれています。小高くなった森を抜けて行く小道と 下側をゆるりと行く道、もう一つは、多摩川へ下りて行く道です。 小高い森の中では、私より大きいお兄さん達が、ギターを弾いています。 小父さんが絵を描いたりしています。お姉さんが、犬を散歩させていたり 遊歩道になっているようでした。 東屋もあって、恋人達の名前が彫ってあります。 途中には公園もあって、ブランコに乗って多摩川を眺めたりしました。 多摩川沿いに長く続いたこの丘は古墳でもあって、田園調布までと、 一駅分もの大きな丘陵でした。私の秘密の場所として、特別の友人に だけ教えて、私の家に皆で泊まって、朝、このコースを辿って 田園調布から電車に乗って学校へ行くのが、嬉しいことでした。 もう一つ、秘密の場所。原宿の竹下通りは、大勢の人で混雑していますが ある所からひょんと横に抜けると、嘘のように静かで落ち着いたヨーロッパ のような石畳の道に入ります。素敵な鉄門をくぐった先の小道には、小さな黄色の 薔薇が咲き、うっとりするような美しいショップがあります。 ウエディングドレスのお店。グランドピアノのあるレストラン。 たいてい、ここで友人とランチをするのですが、ため息がでてしまうぐらい 素敵なお店。小花を飾ったテーブルでいただくランチは、コースで ゆったり美味しい時間が流れ、一緒に行った友達は誰も喜びます。 食後、このブラームス通りからモーツアルト通りを抜けて、明治通りに 行き当たった時点で夢が覚めるのです。 ↑ページ上部へ↑ |