2020/11/10(火)20:03
「カクテル(混合酒調合法)」秋山徳蔵著: (26)本文 Sの項<下>/1月29日(土)
S<下>
ショウ・ミー・カクテル(Show Me Cocktail)
大きい調合器に砂糖小匙で一杯を入れ、牛乳二匙を加えて溶かし、次にクレーム・ド・カカオ一ポニーと、アップル・ジャック【注1】か、またはブランデー一ジガーを加え、砕き氷を三分の一位まで詰めて牛乳をつぎ入れ、充分に振蕩して大きいゴブレットか、またはソーダ水呑に漉してうつしてすすめます。
シルヴァー・フィッズ(Silver Fizz)
調合器に砂糖中匙で一杯を入れ、水二匙を加えて溶かし、次にレモン一個の露を搾りこみ、鶏卵一個を割って落とします。砕き氷を三分の一位まで入れ、上等のジン一ジガーを加えて充分に振蕩し、ハイボール・グラスか、またはパンチ・グラスに漉してうつし、ゼルツェル・ウォーターか、サイフォン・ソーダを九分目までつぎいれ、レモンの皮一そぎを押しつまんで浮かし、麦稈をさしてすすめます。
スノウ・ボール(Snow Ball)
小さい調合器に砂糖小匙で一杯を入れ、水二匙を加えて溶かし、次に鶏卵の白身だけ一個分を加え、砕き氷を二分の一位までと、ウイスキー一ジガーを入れます。充分に振蕩してソーダ水呑に漉してうつし、季節の果実を浮かし、麦稈をさしてすすめます。
ソーダ・カクテル(Soda Cocktail)
大きいゴブレットに砂糖大匙で一杯を入れ、ソーダ水二匙を加えて溶かし、アンゴスチュラ・ビター一注を加え、氷の塊二つ三つを入れ、ソーダ水を九分目までつぎ入れ、よくかき混ぜ合わせてすすめます。
ソーザーン・フィッズ(Southern Fizz)
これは「N」の項で説明しました「ニュー・オルレアン・フィッズ」の別名です。
スターボード・ライト(Starboard Light)
ハイボール・グラスか、又はソーダ水呑にクレーム・ド・マント一ジガーを入れ、別に壜のまま、ごく冷たく冷やしたゼルツェル・ウォーターか、或いはサイフォン・ソーダか、又は別の沸騰水【注2】を九分目までつぎ入れ、静かにかき混ぜ合わせ、麦稈をさしてすすめます。
【備考】これは通俗には「クレーム・ド・マント・ハイボール」と呼び、「スターボート・ライト」の名は、少なくも混成酒通によって呼ばれる綽名(あだな)で、このニックネームの起(おこ)りは、昔ある詩人肌の旅行家が、星月夜の海濱(かいひん)をよぎるとき静かな海の彼方より、港に向かって来る船が灯している、右舷のラムプの美しさを見て、心ゆくばかり旅愁を慰めたが、その夜の宿りに疲労を癒そうとして「クレーム・ド・マント・ハイボール」を求めた。
しかるにその色といい輝かしさが、ゆくりなくも宵に見たラムプのうつくしさにはほうふつとしていて、懐かしい詩的な感想を呼び起こした。それからは「スターボード・ライト」と呼んで、この清新な飲料を一層に愛し、かつ又大いに宣伝して綽名を広めたによるといいます。前に「P」の項で説明した「ポート・ライト」も、これに因(ちな)んで生まれたニック・ネームにほかならないのであります。
スター・エンド・ストリップス(Star and Stripes)
これは「P」の項で説明しました「プース・カフエ」の別名です。
ステー・ダウン(Stay Down)
ハイボール・グラスに小さい氷の塊一個を入れ、クレーム・ド・ケシ【注3】一ポニーと、コギャク一ジガーを入れ、イングリッシュ・クラブ・ソーダ【注4】か、又は他のソーダ水を九分目までつぎ入れ、静かによくかき混ぜ合わせてすすめます。
【注1】「J」の項の【注3】を参照
【注2】言わずもがなだが、ここで言う「沸騰水」とは熱湯ではなく、ソーダ水のこと。
【注3】クレーム・ド・カシス(「M」の項の【注6】を参照)
【注4】「クラブ・ソーダ」とは精製した水に炭酸ガスを封入した飲料。英国製のクラブ・ソーダはこの時代、相当高価なものであったであろう。
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