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2021/07/11(日)09:14

福井でBAR巡り/11月27日(日)

各地のBAR巡り(53)

 福井県って関西にも近くて、(原発も多いけど)温泉もたくさんあって、確か全国の都道府県「暮らしやすさ」度ランキングでは、沖縄といつも全国一、二を争うという県なんだけれど、近くに金沢(石川)や京都という観光の人気府県があるので、なんとなく“埋没感”が否めない(福井の皆さんごめんなさい)。  私も、出張とかで金沢や富山へ行っても、帰りの福井はいつも通り過ぎてしまうだけ。BARがあることは知っているんだけど、まだ一度も足を踏み入れたことがない。関西から近いのに、うらんかんろにとっては「今宵も、BARへ…」の「おすすめBAR」でもこれまで、なぜか空白県になっていた。  そういう訳で、先日、富山へ日帰り出張があった際、空白解消の絶好の機会だと、帰りのサンダーバード(JR特急)を途中下車して福井市内でBAR巡りを敢行することにした。以下は簡単だけれども、そのご報告。 【洋酒カクテルバー・ニュー淀】 とりあえず1軒目にお邪魔したのは、福井では最も老舗BARだというこのお店。1970年のオープンというから、今年で41年目を迎える。福井駅からは徒歩7、8分の「順化」という盛り場エリアにある。  なぜここを1軒目にしたかと言えば、お目当ての店の中で、一番オープンの時刻が早かった(午後5時半)から。地方都市のBARは開店時刻が遅くて、日帰り出張族にはあまり有難くないが、ここは早いので嬉しい。  明かりのついた大きな看板のあるビルはすぐに見つかった。重い扉を開けると、少し塗装がはげて年季を感じさせるカウンター、重厚で歳月を感じさせるバックバー、そして柔らかい雰囲気で接客をしてくれるマスター。どこを切り取っても、「良い老舗BAR」の見本のような店だ。  「1週間ほど前に電話した者です」とまず挨拶。地方都市だとたどり着いたら臨時休業なんてこともよくある。だから、僕は前もって、この日開いていることを確認しておいた。「あー、あの方ね。わざわざ本当にありがとうね」とマスター。  マスターのSさんは今年71歳。業界の重鎮で、関西でもその名が知れる。それもそのはず、40年ほど前のNBAの全国カクテルコンペで準優勝したという輝かしい経歴を持っている。美味しいカクテルやハイボール(指定しないのに、マッカランでつくってくれた!)を味わいながら、Sさんから昔のバー業界の秘話をあれこれ聞かせてもらい、僕は大阪や神戸のBAR業界の最近の様子を(知っている限りだが)お話しした。  心地よい空間で、マスターと話し込むうちに、あっと言う間に1時間が過ぎた。いけない! きょうは日帰りで、最終のサンダーバードで帰阪する予定。あと2軒は回るつもりなので、後ろ髪をひかれつつお別れする。 【Bar LOTUS(ロータス)】 ニュー淀から歩いて数分。次にお邪魔したのは、いま福井で一番実力派と言われるオーナー・バーテンダーOさんの営むこの店。カクテルコンペでも優秀な成績をおさめた方で、大阪で懇意のマスター(複数)からも、「福井へ行くならLOTUSだけははずさないで」と言われていた。  ドアを開けると、まだ開店したばかり(店は7時オープン)。「少し遅刻して、まだバタバタしてますが、すみません!」とOマスターの快活な声が返ってきた。  「前から一度来てみたくて、きょうは富山の帰りに福井で途中下車しました」と僕。店はカウンター7、8席とテーブルが二つ。内装はスタイリッシュだが、コーナーに和の雰囲気の石庭があったりしてとてもおしゃれだ。  Oさんは、コンペでバーテンダーが着るような白いバー・ジャケット姿(大阪でもいまどき珍しい正装)。理由は尋ねなかったが、いつもきちんとした仕事がしたいという心意気の現れか。だが、Oさんはその端正な姿とは真逆で、おしゃべりで話好きで、初対面でもすぐ打ち解けてしまえるような気さくさ。一言で言えば、話していて実に楽しい方なのだ。   せっかくだから、2杯目はOさんが一番つくるのが好きだというギムレットをいただく。結構ハードシェイクで、僕好みの「細かい氷がいっぱい浮かせる」つくり方。味もきりっと締まって、実に美味い。地方都市にも、こんな素敵な人柄のバーテンダーがいて、居心地よい酒場があることを福井の人はもっと自慢していいと思う(料金も、1軒目の「ニュー淀」と同様、実に良心的)。  帰り際、Oマスターは「これ、帰りの電車の中ででも、ビールのアテにどうぞ」と乾き物の小さな袋を一つくれた。初めてやって来た出張の旅人にも、こんな優しい心遣いができるなんて! 都会のバーテンダーも見習うべき点は多いのではないだろうか。皆さんも福井にお越しの際は、ぜひ「LOTUS」へ。 【Bar Dufftown(ダフタウン)】 最後もう1軒と立ち寄ったのは福井一モルトの品揃えを誇るというこの酒場。暗い通りで、看板がかなり高い位置にあって気づきにくく、店のドアには何のプレートもないので、一瞬「お休みか?」と思ったが、ドアを開けると、ウッディで温かい空間が目に飛び込んできた。  カウンターに座って、「最終のサンダーバードまで、1時間弱飲ませてください」と挨拶。バックバーのシングルモルトのボトルは、都会のBARにも負けないくらいの充実度。ヒゲが似合うKマスターは基本、物静かだけれど、モルトの話をし始めたら止まらない。モルトへの愛が感じられる。アイラ島の蒸留所を訪れた話も披露してくれた(4年前にアイラ島を訪れた僕と、話が合って盛り上がったのは言うまでもない)。  店はカウンターが10席ほど、テーブルが4つほどあり、なおかつカウンターとテーブルとは程よい間隔が空いているため、実にゆったりした空間だ。グループで来ても十分対応できる広さだ。モルトだけでなく、ビールも種類も豊富だという。ただ、ここもオープンは午後7時と遅めだ(当初は5時半オープンだったそうだが、やはり地方都市だと客の出足はどうしても遅めになり、そうした対応になるのだろう)。  僕はこの夜、シェリー樽熟成のボウモア16年(オフィシャルボトル)と、ラフロイグのクォーター・カスクと計2杯をいただいた。お値段は最初の2軒と比べたらやや高めだが、それでも都会のバーに比べたら、良心的だろう。福井で、こんな心地よいモルトBARに出会えたことに感謝して、僕は家路についた。  福井のBARのマスターの皆様、温かいおもてなしを本当に有難うございました。 【洋酒カクテルバー・ニュー淀】福井市順化1-17-21 旭ビル1F 0776-24-1725 午後5時半~1時 日休 【Bar LOTUS】同市順化1-6-7 金津屋ビル2F 27-2788 午後7時~午前4時 月休 【Bar Dufftown】同市順化1-1-10 シルクビル1F 30-1171 午後7時~午前2時 日休  ※ニュー淀のSマスターはその後(2019年)天国へ旅立たれました。心からご冥福をお祈りいたします。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】

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