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カテゴリ:映画・TV・演劇
メリル・ストリープが主演し、米アカデミー主演女優賞を獲ったことでも話題となっている映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を観てきました。
メリル・ストリープは、40代から80代まで(それまでの若い時代は別の女優さんが担当)、サッチャーの話し方や仕草、着こなしだけでなく、認知症になりかけた晩年の姿もみごとに演じ切っていて、改めて凄い女優だと感心しました。とくに、米国人であるストリープ本人が「必死で訓練した」と言う「ブリティッシュ・イングリッシュ」は、日本人の僕にも完璧だと思いました。 サッチャーは食料品店の娘として生まれ、苦学してオックスフォード大学に進学。20代で早くも政治を志し、大学卒業の4年後の1950年、下院議員選に立候補するも、落選の挫折を味わいます。翌年結婚した夫のデニスは、「家で皿を洗うだけの主婦で終わりたくない」という妻の夢を、献身的に支えます。 そして、1959年に下院議員に当選。その後その巧みな弁舌で保守党内で頭角を現し、とうとう党首にまで登りつめ、それまで男社会だった英政界で女性の地位を大きく切り開きます。1979年、総選挙で保守党が大勝したため、サッチャーは英国政治史上初の女性首相に就任します(写真は映画の1シーン=(C)20世紀フォックス/ギャガ)。 首相として彼女は、社会保障や経済政策で「自助努力・自己責任」という考え方を押し進め、財政破たん寸前だった英国経済を復活に導きました。1982年のフォークランド紛争では、アルゼンチン相手に一切の妥協を排して、軍事的強行手段を貫き、勝利をおさめました。 さまざまな問題に直面しても、あくまで自分が正しいと信じる道を貫いたという意味では、とても頑固な「信念の人」で、立派だとは思いましたが、サッチャー政権の経済政策の結果、国内では失業者が増大し、富裕層優遇の医療制度改革で社会保障から切り捨てられた一般庶民から反感を買い、英国では必ずしも彼女を評価する人ばかりではないようです。 また、この映画でも描かれていたように、サッチャーは他の閣僚や側近など他人の意見にあまり耳を貸さない一面もあったようです(この辺りや伝記や側近らの証言に基づいているでしょうからおそらく事実でしょう)。晩年、彼女が閣内で孤立し、辞任に追い込まれたのは、自業自得という面もあったのかもしれません。 いずれにしても、11年半も首相の座を守ったサッチャーが、稀有な力量を持った政治家であったことは疑いありません。ただし、母や妻としてはサッチャー本人も認めるように、決して完璧ではなく、悔い(とくに夫デニスへの愛について)が数多く残った人生だったようです。86歳の今も健在だけれども認知症が進み、この映画のこともおそらくは理解できない彼女のことを思うと、少し切ない気持になりました。 PS.【評価】★4つ半(5つで満点) とてもよく出来た映画だと思いましたが、大学で化学を専攻し、卒業後、化学会社に就職し研究者の道を歩んでいたサッチャーが、なぜ畑違いの政治の世界を志すようになったのか、その辺りがほとんど描かれていません。それが唯一の不満として残りました。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012/09/29 12:32:12 PM
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