クラシック・カクテルの研究をしていると、思わぬところから、予期せぬ(驚くべき)嬉しい情報を得ることがあります。今回ご紹介するのは、「日本へのカクテル伝来の歴史を書き換えるような貴重な発見」とも言える文献です。
日本最初のカクテルブックと言えば、1924年(大正13年)に出版された秋山徳蔵著の『カクテル(混合酒調合法)』と言われてきました。秋山本以前には、「飲料商報」という業界紙に載った「西洋酒調合法」(伊藤耕之進編、1913年=大正2年)という連載が、「西洋のカクテルを活字として紹介した最初の例」とされてきました。
しかし今回、私は友人からの情報で、さらに8年も遡る「活字になった西洋カクテル」を目にしたのです。それは『欧米料理法全書』(1905年=明治38年刊)という本に付いていた「洋酒調合法」という附録です。編著者は、高野新太郎という人。約90頁ほどの小冊子で、約180種類のカクテルを紹介しています。材料の分量表記も判り易く書いていて、かなり実用的です。
ならば、「日本で最初のカクテルブック」の称号はこの本にとって換えられることになるのかとも思いましたが、あくまで料理書の「附録」という体裁をとっているので、やはり、単行本としてのカクテルブックとしては秋山本が第一号なんだろうなぁと考えています。
ただし「附録」とは言え、様々な発見がありました。収録されているカクテルの中には、現在のバーでも知名度を持つ、以下のような16種類のカクテルが含まれていて、従来考えられていた日本初出年が書き換えられることになりました。
ウイスキー・サワー、ウイスキー・ドディ、エッグノッグ、オールド・ファッションド、ジャパニーズ・カクテル、シャンパン・カクテル、シャンディ・ガフ、ジン・リッキー、トム・コリンズ、トム&ジェリー、ビジュー・カクテル、ブルー・ブレイザー、ホーセズ・ネック、マティーニ、マンハッタン、ミント・ジュレップ
これらのカクテルは従来、1913年の「飲料商報」や秋山本、それに秋山本から1カ月遅れで出た前田米吉著の「コクテール」上で国内で初めて紹介されたと考えられていましたが、初出が8~19年も遡ることになりました(もっとも外国人居留地のホテルのバー等の現場では、当然、もっと早くからお目見えしていたことでしょうが…)。
ちなみに、「洋酒調合法」に収録されているマティーニのレシピは、「オールドトム・ジンGlass半分、ドライ・ベルモットGlass半分、ガムシロップ2dash、ビターズ2~3dash、キュラソー(またはアブサン)1dash ※客が望めば」となっていて、当時は甘口のオールドトム・ジンが主流で、ベルモットの量もかなり入っていたなど貴重な情報が分かります。
他にも、ミント・ジュレップは当時、ブランデー・ベースだったことや、現在のハイボールとはレシピはかなり違う「ウイスキー・ハイボール」が登場していたことも分かります。
私は別の機会に、この「洋酒調合法」の内容をさらに精査したうえで興味深い事実があればご紹介したいと思いますが、もし本の内容を詳しく読んでみたいという方は、国会図書館のHPで検索すれば無料でご覧頂けます。
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Last updated
2022/12/26 08:44:45 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。
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