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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2019/02/23
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【おことわり】今回の追補編では、比較的現代に生まれたカクテルで、その後全国的な(あるいは世界的な)知名度を勝ち得た作品をいくつか取り上げます。

 追補1.Augusta7(オーガスタ・セブン)

【標準的なレシピ】(容量単位はml) パッソア(45)、レモン・ジュース(15)、パイナップル・ジュース(90) 【スタイル】シェイクして、氷ごと大ぶりのトロピカル・グラス(またはコブレット)に入れる。

 大阪・梅田のバー「オーガスタ(Augusta)」のオーナー・バーテンダー、品野清光氏のオリジナル。パッソアとは、ブラジル産などのパッション・フルーツとレモンの果汁でつくったフランス産のリキュールで、1986年に商品化されました。トロピカルな味わい、雰囲気が人気を集め、現在ではカクテルの材料として幅広く使われています。

 品野氏ご本人によれば、パッソアが日本に初めて輸入された1997年頃、懇意だったカクテル評論家・福西英三氏からのリクエストもあって、「オーガスタ」のカウンターで創作したとのことです。レシピを決めるにあたっては、「当時とても質の良いパイナップル・ジュースが手元にあったので、これと合わせればとても美味しく仕上がるんじゃないかと考えたら、まさにその通りになった」とのことです。

 カクテル名の「7」は、品野氏の7番目のオリジナルという意味。1997年に刊行された福西英三氏の著書「リキュール・ブック」の「パッソア」の項で初めて紹介されています。通常は、あるカクテルが本に載るまでには少し時間差が生まれますが、オーガスタ7の場合はほぼ同時です。

 その後、1998年に、古谷三敏氏が「漫画アクション」誌上で連載していた人気漫画「Barレモンハート」で取り上げられた(福西氏は、古谷氏に漫画のネタを時々提供していました)ことで、全国的に広く知られるカクテルとなり、国内のオーセンティック・バーでも確かな知名度を得ることになりました(現在、文庫版では第15巻に収録)。

 短期間で全国に幅広く普及した要因としては、どこのバーでも手に入りやすい3種類の材料なので、つくりやすかったこと(末尾【注】ご参照)、さらに、低めのアルコール度数で、女性にも飲みやすい、あまり甘すぎない、優しくフルーティな味わいだったことが大きかったと言われています

 「オーガスタ7」は現在では、日本国内のオーセンティック・バーであれば、おそらく9割以上の店で「頼めば通じる」カクテルになっています。“全国区”となった背景には、もちろん人気漫画の力は大きかった訳ですが、自らの名刺に「オーガスタ7」のレシピを印刷し、全国の同業者に会うたびに、「あなたの店でもオーガスタ7をぜひつくって、お客様に勧めてください」と名刺を渡してPRしたという品野氏の地道な努力も、普及に大きな力となったことは間違いありません。

 なお、古谷氏が「レモンハート」で取り上げることは、品野氏には事前に知らされず、(品野氏は)店のお客様から「漫画雑誌に載ってるよ」と知らされて驚いたという、面白いエピソードもあります。いずれにしても、「オーガスタ7」は、「ソル・クバーノ」と並んで関西のバーテンダーが考案し、現代の「スタンダード」として定着した数少ないカクテルです(最後に嬉しいニュースが一つ。パッソアの裏ラベルには、2019年夏頃から、オーガスタ7のレシピが印刷されるそうです)。

 【確認できる日本初出資料】「リキュール・ブック」(福西英三著、1997年刊)。※収録されているレシピは、97年当時のレシピで「パッソア45ml、パイナップル・ジュース100ml、レモン・ジュース10ml。シェイクして氷を入れたタンブラーに注ぐ」です。


【注】バーテンダーであれば、誰しも自分がつくった創作カクテルが次世代へ伝わり、将来的には「スタンダード・カクテル」として認知され、定着してほしいと願うのが普通だと思います。しかし80年代以降、日本の創作カクテルは、コンペで優勝、準優勝しても2、3年経てば忘れ去られ、全国的に普及して次世代へ受け継がれるものは、残念ながらほとんどありません。
 その大きな理由の一つが、一般的にコンペ出品作のレシピで使う材料が5~6種類と多すぎることです。材料の中には特殊なお酒やリキュールも多いので、他のバーではつくりたくても入手がそう簡単ではありません。特殊なリキュールがゆえに短期間で生産中止(廃番)になってしまう商品もあります。
 もう一つの理由は、日本のコンペでは甘口系カクテルの方が高く評価されるため、出場選手が甘口系のカクテルばかりで競うことです。結果、上位に入賞するカクテルのほとんどが甘口系です。一口に甘口系と言っても様々ですが、5~6種類のスピリッツやリキュール、ジュースを混ぜるので、味は複雑になる半面、(見かけの色は違っても)似たり寄ったりの味わいに陥りやすいという指摘もあります。

 一方で、飲み手であるお客様は近年、甘口系よりも辛口系の、さっぱりした味わいのカクテルを好む傾向が強くなってきています。結果として、作り手の目指す方向と飲み手であるユーザーの嗜好に溝が生じています。このため、優勝した創作カクテルであっても、短期間で忘れ去られてしまうというのが現実なのです。
 言い方を替えれば、飲み手の嗜好をあまり考えず、作り手の論理でつくる甘口系カクテルばかりがコンペで評価されるということが、後世に残らない要因の一つでしょう。当たり前のことですが、カクテルの味を評価するのは最終的にその対価を支払うお客様であって、作り手やコンペの審査員ではありません。

 現代で「スタンダード・カクテル」として定着しているものでも、最初から「スタンダード」であったのではなく、最初は個人が考案した創作カクテルでした。世界中の数多くバーテンダーがそのカクテルをつくって提供し、たくさんのお客様に愛され、長年飲み継がれて、ようやく「スタンダード」になった訳です。
 個人的な意見ですが、もし「スタンダード」として末永く認知されることを目指すなら、全国どこのバーのバーテンダーでも手に入りやすい3~4種類以内の材料で創作しなければ、幅広く普及し、次世代へ残っていくことはないだろうと感じています。


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Last updated  2021/06/13 09:18:18 AM
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うらんかんろ

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