【カクテル・ヒストリア第3回】
「初めは違った」そのレシピ
現代のバーの人気カクテルの約8割は、1890~1930年代に誕生したクラシック・カクテルである。しかし、誕生当時のレシピがそのまま定着しているケースは極めて稀だ。なのに、現代の標準的なレシピが「昔のまま」と信じ込んでいるバーテンダーも少なくない。
例えば、マティーニは、ジンとドライ・ベルモットでつくる辛口カクテルの代表格。しかし1930年以前のカクテルブックを見ていると、マティーニと言えば通常、ジンとスイート・ベルモットだった。ジン+ドライ・ベルモットのマティーニが主流になるのは、1930年代後半~40年代以降である(写真左=初の実用的カクテルブックと言われたハリー・マッケルホーン著「ABC of Mixing Cocktails」=1919年刊)。
また、現代ではジンと生のライム・ジュースを使い、辛口カクテルの代表格でもあるギムレットだが、英国で誕生した1890年頃は、「甘口系のプリマス・ジン+ローズ社製のライム・コーディアル(甘口のライム・ジュース)」という材料でつくるのが一般的だった(写真右)。
時代が進み、バーで生ライムが手に入り易くなると、ギムレットはベースのジンも含め徐々に辛口志向になり、甘口の“元祖”ギムレットはいつしか忘れ去られていった。
女性に人気があるアレクザンダーは「ブランデー+クレーム・デ・カカオ+生クリーム」というレシピだが、意外なことに、1930年以前は基本ジン・ベースで、ブランデー・ベースが主流になるのはそれ以降である。また、ソルティ・ドッグも現代では通常ウオッカ・ベースだが、1940年代後半の誕生当初から70年代前半まではジン・ベースが主流だった。ウオッカ・ベースが登場するのは70年代に入ってからである。
「最初はそんなレシピじゃなかった」という有名カクテルはまだ他にもある。「過去」を知る・学ぶことは、時には思わぬ発見、そして「次のヒント」にもつながるから面白い。
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Last updated
2021/06/11 12:29:33 PM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。