3年前の10月、私は、京都で誕生したばかりの初のジャパニーズ・クラフトジン「季の美」との出会いました。あれから3年。その後のジャパニーズ・ジンの玉石混交の"乱立"ぶりは驚くばかりです。
ジンを単独で味わう美味しさは、日本人にもある程度認知されてきた気はしますが、それでも、メーカーや業界が騒ぐほど、(首都圏はいざ知らず)大阪のような地方のバーの現場ではジン・ブームは起きていませんし、定着もしていないというのが実感です(少なくともバーUKでは、一時のジン・ブームは終わっています。「季の美」とサントリーの「六」はそれなりにストレートやロックでご注文頂いていますが…)。
そもそも、ジンをストレートやロックで飲むという習慣がなかった日本人に、プレミアムなクラフト・ジンを根付かせるというのは、そう簡単ではありません。強気なボトル価格(4千円〜6千円)も壁になっています(ウイスキーのような熟成期間を必要とせず、基本、製造すればすぐに商品化できるのに、どうしてシングルモルト並みの販売価格になるのか、私には理解できません)。
一方、バー経営者としては、クラフト・ジンはカクテルのベースに使うには値段が高すぎて、(カクテルの単価にも影響するから)なかなか使いにくいのです。通常のジン・トニックであれば、1本2000円以下のジンをベースにすれば十分美味しく飲めるし、価格的にもその方がお客様の利益になります。4~6千円のクラフト・ジンを使えば、800~900円で提供できるジン・トニックが1000~1300円くらいに跳ね上がってしまいます。
現状、バーUKで言えばほとんどのお客様は、クラフト・ジンに1杯1200~1500円も払うなら、ウイスキーのシングルモルトの方を選びます。日本で、プレミアムクラスのクラフト・ジンが今後定着していくためには、今の強気な価格設定では無理があると私は思います。せめて、1本25000円~4000円以下のボトル価格にしないと、バーではお客様が手を出しやすいお値段で提供できないし、定着していかないでしょう。
世界的にジン生産の蒸溜所が乱立して、過当競争になっている現在、現場のジン需要が今後伸びなければ、いずれは供給過剰となり、ジン市場は頭打ちになります。早晩、経営が成り立たなくなる蒸溜所もいずれ出てくるのではないかと懸念しています。
(※なお、ここに書いたことは、昨今の世界的なウイスキー蒸留所の急増にも同じことが言えます。不適切とも言える強気な高価格が続き、そして現場の需要を無視した過剰供給状態が続けば、いずれビジネスモデルは崩壊し、体力のない蒸留所は淘汰されていくと思っています)。
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Last updated
2021/06/21 08:39:25 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。
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