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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2021/02/07
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カテゴリ:ITTETSU GALLERY
 ITTETSU GALLERY:もう一つの成田一徹(101)~(120)

 バー・シーンを描いた切り絵で有名な成田一徹(1949~2012)ですが、実は、バー以外をテーマにした幅広いジャンルの切り絵も、数多く手掛けています。花、鳥、動物、職人の仕事、街の風景、庶民の暮らし、歴史、時代物(江戸情緒など)、歴史上の人物、伝統行事・習俗、生まれ故郷の神戸、小説やエッセイの挿絵、切り絵教則本のためのお手本等々。

 今回、バー・シーンとは一味違った「一徹アート」の魅力を、一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと願って、膨大な作品群のなかから、厳選した逸品を1点ずつ紹介していこうと思います(※一部、バー関係をテーマにした作品も含まれますが、ご了承ください)。
 ※故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします。

         (101)振り返る女  1999年
 ※「週刊小説」(実業之日本社・刊)に掲載された作家・北上秋彦氏の短編ミステリー小説「茶の葉とブロッコリー」の挿絵として制作された作品。一徹氏は小説の挿絵の仕事を依頼されることが多かったが、作家から直接依頼されるより、出版社の編集者から頼まれることの方が多く、作品のゲラ刷りを事前に読み、情景をイメージしながら制作することが一般的だった(もちろん編集者から直接、「このシーンを描いてください」と頼まれることも)。この作品の絵柄は、主人公が損害保険の代理店の調査マンと対峙するシーンから着想を得たのだろうと想像している。
 (「週刊小説」は1972年に創刊され、2001年まで発行された小説専門の週刊誌)


         (102)私の愛猫  1996年
 ※自著「切り絵12カ月1000カット」で「作例」として制作された作品。幼い女の子が愛猫を抱く姿。女の子のモデルは、おそらくは一徹氏の娘さんか…。自分ではペットを飼っていなかった一徹氏だが、遺された小作品の中には猫の様々な姿が描かれている。愛玩動物としての猫も大好きだったに違いない。
 ちなみに、一徹氏は「Bar UK」の店名の名付け親。マスターから、名付けた理由を問われた際、「荒ちゃんの家で飼ってる猫の名前、うらん と かんろだったよね? アルファベットの頭文字をつないだら「UK」、ウイスキーの故郷、英国も「UK」。猫好きで、ウイスキー好きのマスターのバーに、まさにぴったりの名前やろ?」と説明したのは有名な?話。


             (103)青江 三奈  2008年(ビクターレコードからの依頼でCD<ベスト盤>カバー・ジャケットのために制作)
 ※1941年生まれ。1966年、「恍惚のブルース」でデビュー。ハスキー・ヴォイスで知られた歌手。代表曲には「伊勢佐木町ブルース」「池袋の夜」など。2000年7月2日、膵臓癌のため59歳で死去。演歌・歌謡曲の歌手というイメージが強いが、ジャズも巧みに歌う一面も。ニューヨークのライブハウスでの公演を収録したアルバム「Passion Mina in New York」(1995年)は、高く評価されている。
 (第31回で紹介した「ちあき なおみ」も同じ頃、このビクターレコードのベスト盤企画のために制作されたものです)。










             (104)絵巻5点  1990年代後半
 ※一徹氏が遺した作品の中には、この切り絵のように、やたら横に長い原画(縦5~8cm×横30~40cmくらいの大きさです)が、かなりの数存在する。この一見「絵巻」のような切り絵は、いったいどの媒体のために、何のために制作したのだろうか?と調べてみたら、月刊「文藝春秋」「オール読物」などの総合雑誌、文芸誌の目次ページや小説、エッセイの上の部分に、見開きのような形で掲載されていた。文藝春秋とも付き合いは古く、上京直後から亡くなるまで、たびたび挿し絵を依頼された。それぞれの切り絵が何をモチーフにしているか、考えてみるのも面白い。



(105)経済学者たちの肖像のための習作(未完?) 1980年代前半 サインペン&ボールペン
 ※大学院修士課程で経済哲学を専攻したという異色の経歴を持つ一徹氏。経済哲学とはどういう学問かはよく分からないが、スケッチブックには、学ぶ対象となったのであろう学者たちの顔が描かれている。フリードリッヒ・リスト、ジョン・スチュアート・ミル、フリードリッヒ・エンゲルス(上段)、ヨーゼフ・アロス・シュンペーター、カール・マルクス(名前の表記はなし)、氏名不詳の1人(中段)、カール・メンガー、マックス・ウェーバー(名前の表記なし)、もう一人の氏名不詳の人(下段)。
 恥ずかしながら、リストとメンガーは初めて聞く名前だ。このような難しい学問を修めた一徹氏が、なぜ専攻とは畑違いの切り絵という芸術に魅せられるようになったのか? 「ほんと、人間って面白いなぁ…」と言うのは簡単だが、生前の本人に、きちんと理由を聞いておけばよかったと後悔している(もっと長生きしてほしかったなぁ…)。



(106)大阪市環境局・舞洲工場 2002年(大阪経済大学「成田一徹ギャラリー」所蔵)
 ※朝日新聞夕刊(大阪本社版)でのフルカラーの連載「どこへ一徹 ひとり旅」の第35回で掲載された作品。ゴミ焼却(廃棄物処理)拠点でもある舞洲工場の外観は、オーストリアの芸術家・建築家であるフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏(1928~2000)がデザインしたもので、2001年に竣工。まるで遊園地のような、斬新・奇抜でカラフルなデザインもあって、今なお国内外から多数の見学者が訪れるという。
 フンデルトヴァッサー氏は、自然との調和を目指した建築家で知られており、「自然界に直線や同一物は存在しない」というコンセプトに基づいて、デザインには曲線や、サイズや形の違う窓が使用されている。壁面のオレンジや赤のストライプ模様は、ゴミを焼却する炎をイメージしたとのこと(ちなみに、氏がデザインを手掛けたゴミ焼却工場は世界で2つしかなく、もう1カ所はウイーンにある)。



(107)船長の肖像(2つの表現手法で) 1980年代前半&90年代中頃
 ※パイプ煙草をくわえた「船長の肖像」も一徹氏がよく手掛けたモチーフ。左はプロデビュー前の80年代に制作したエッチング版画、右はプロデビュー後の切り絵。向き合う形で紹介してみた。版画には「繊細な味わい」がにじむが、個人的には、やはり切り絵の方に「ほのぼのした温かさ、面白さ」を感じる。一徹氏もやはり、最終的に「切り絵」を生業(なりわい)にしてよかったと思っていたに違いない。



(108)ウインストン・チャーチル  2001年
 ※2001年から2002年にかけて、一徹氏は集英社発行の漫画雑誌「スーパー・ジャンプ」で、前代未聞の切り絵漫画「The Cigar Story 葉巻をめぐる偉人伝」を連載した。タッグを組んだのは、大ヒット漫画「ソムリエ」「バーテンダー」などの原作者として知られる城アラキ氏だった。この葉巻を手にしたチャーチル(Winston Churchill<1874~1965>英国の元首相)の肖像は、その連載第1回で使われた。
 雑誌は隔週刊だったが、それでも、原作のストーリーに合わせて2週間で16ページ分の切り絵を制作するというのは、かなり過酷な作業(通常はA4サイズくらいの切り絵で制作には、どんなに早くでも1~2日かかる)。この連載の原画サイズは、1ページが約B4サイズくらいの大きさ。コマ割りもあるので、通常の原画の2~3倍の時間と手間がかかる。なので、とにかく睡眠時間を削ってひたすら机に向かうしかなかった。
 この頃の一徹氏は「毎日ずっと睡眠不足でねぇ…」と嘆いていたが、希代の原作者とのコラボを喜び、絶対に成功させるという意気込み通り、全10話を完成させた。連載は後日、集英社から単行本にもなり、短期間で完売した(本は現在絶版だが、嬉しいことに、近く電子書籍として復刻されるという話)。



(109)扇に椿 Ver.1  2005年頃
 ※「扇と椿」も一徹氏が好んだモチーフ。生涯に、何度も切り絵として制作している。



(110)扇に椿 Ver.2  2010年頃
 ※もう1枚「扇と椿」のモチーフの切り絵を。「109」の椿は扇の上に乗っているかのように描かれていたが、この椿は扇面の絵として描かれている。折り目の立体感が椿の絵付けで際立ち、和扇の端正な美しさが伝わってくる小品だ。



(111)青い眼の女  1980年代後半
 ※青い眼が印象的な女性の肖像。朧げな表情もミステリアスである。没後に、神戸の実家から見つかった作品。外国人がモデルであろうが、誰を描いたのか、何の目的で、何の媒体のために制作したのか、詳細はまったく不明である(何か手掛かりをお持ちの方はご教示頂ければ幸いです。情報は、arkwez@gmail.com までお願い致します)。



(112)湯島天神の男坂  2010年頃
 ※2007年1月から09年9月にかけての約2年半余、一徹氏は朝日新聞東京版の紙面で、「東京シルエット」と題した切り絵とエッセイによるコラムを週1回、連載した。東京のあまり知られていない風景や、働き・暮らす人々の様々な表情を切り絵で描いてみるという挑戦だった。
 幸い、読者の人気コラムとなって連載は111回も続き、後に単行本(創森社・刊)にもなった。この絵は単行本化された折、第5章「この場所で」の口絵として、新たに切り下ろした作品。石の階段の質感や黒と白のバランスが見事である。湯島には一徹氏のお気に入りのバーが、少なくとも3軒(琥珀、EST!、AB..E)はあった。おそらくこの絵の取材帰りにも立ち寄ったことだろう。



(113)吼える獅子  1980年代半ば~後半
 ※どんな動物でも描ける(表現できる)ことは、プロの画家として求められる最低限の技量・能力だと一徹氏は考えていた。なのでプロデビュー前から、様々な動物のモチーフに挑戦してきた。これは切り絵に加えて、筆を使って獅子の毛並みを表現した珍しい作品。おそらくは実験的な一枚だったのだろう。



(114)シャーロック・ホームズ  1990年代後半
 ※シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)は、英国の作家・アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle 1859~1930)が創作した探偵であり、ホームズ・シリーズの主人公。推理小説分野では最も有名な探偵でもある。一連の作品はベストセラーとなり、今日でも世界中で読み継がれている。この作品は、おそらくは(早川書房の依頼で)「ミステリー・マガジン」のために切り下ろしたものだろう。





(115)谷崎潤一郎と法然院 1980年代前半 コンテとクレヨン(上)、クレヨンに手彩色(下)
 ※京都市左京区の法然院と言えば、著名人のお墓が多いことでも有名。作家・谷崎潤一郎をはじめ、河上肇、九鬼周三、内藤湖南、稲垣足穂、福田平八郎らがここに眠る。一徹氏がとくに谷崎好きだったとは聞かなかったが、何らかの理由で法然院を訪れ、文豪の肖像をスケッチブックに残していた。


(116)酒屋の店先で(ワインの販促PR) 1989年
 ※「酒販流通革新」という酒販業界の専門誌から依頼され、1989年秋季号の表紙のために制作した作品。1989年と言えば、海外からの圧力に押されて日本の従価税制度の廃止が決まった年。従来の「特級、一級、二級」という区別がなくなり、輸入酒の関税も見直された結果、ウイスキーやワインの小売り価格も大きく下がった。国産酒メーカーや酒販業界にとっては大きな転換点となった年で、この頃から酒の大型量販店が増え始め、街の小さな酒屋さんは苦境に追い込まれることになる。


(117)柚子の収穫 2004年
 ※当時、銀座「和光」発行の月刊誌「チャイム銀座」で連載されていた、神崎宣武氏(民俗学者)のエッセイ「風物詩でティータイム」第18回「山の幸」の挿絵として制作された(2004年11月号)。この神崎氏の連載で、一徹氏は第1回からタッグを組んでいたが、あの和光からの仕事依頼で、A4サイズの上質紙の雑誌にフルカラーで掲載されるとあって、「毎回とても力が入る連載」と話していた。 




(118)国分300周年 2012年
 ※「缶つま」シリーズでも知られる食品商社大手の国分(こくぶ)は、ことし創業309年という老舗。赤穂浪士の吉良邸討ち入りから10年後の正徳2年(1712)、四代目・國分勘兵衛が、江戸・日本橋に店を構えた呉服屋「大国屋」がそのルーツという。その後、醤油醸造業に乗り出し、様々な食品も扱うようになった。
 この2枚の切り絵は、2012年の創業300周年の際、同社から依頼されて制作したもの(一徹氏は「缶つま」のPRパンフの切り絵を一時担当するなど国分とはそれ以前から仕事上の付き合いがあった)。
 上は日本橋にある現本社ビル(四代目)。下は大正4年<1915>に完成したレンガ造りの二代目本社ビル=下の絵葉書の写真ご参照((C)国分の公式HPから)。屋上にたなびく「亀甲大」の旗は、かつて自社で製造した醤油のマークとしても使われたという。
 創業300周年の記念パーティーでは、参加者への記念品(トマーチン40年超の限定モルト)のパッケージにこの2枚の絵が使用された=下の写真ご参照。一徹氏もこの貴重なボトルを貰ったが、残念ながら、味わう機会がないままこの年天上へ旅立ってしまった。





(119)Good Bar 同好会20周年に寄せて 2004年
 ※まだサラリーマン時代の1984年、一徹氏は職場の飲み友達・田中正樹氏(故人、最初の著書「酒場の絵本」で文章を担当)とともに、「Good Bar 同好会」なるもの結成し、古き良きBarを巡るとともに、会員向けにお気に入りのBarを切り絵と文章で紹介する「Good Bar通信」を、急逝するまで不定期で発行し続けた(通算で67回)。
 「通信」の文章は58回までは主に田中が、最後の9回分は長年の飲み友達でもあった荒川英二が担当した。会員数は一時は200名を超えた。この作品は、同好会が20周年を迎えた記念に2004年に制作したもの。この年の12月、一徹氏らは神戸・北野クラブで20周年の記念パーティーも催し、この際、「酒場の絵本」改訂復刻版をフェリシモから限定出版した。


(120)みなと座の船出 1990年
 ※どういうきっかけだったのか生前聞きそびれたが、一徹氏はエッセイストで評論家の西舘好子氏(作家の故・井上ひさし氏の前夫人)と生涯長く親交を持った。プロデビュー(1988年)直後から、西舘氏の連載エッセイの挿絵画家として起用された。
 西舘氏は、当初は井上氏の立ち上げた劇団「こまつ座」のプロデューサーとして活動していたが、井上氏との離婚後の1987年、後に夫となる西舘督夫氏と劇団「みなと座」を立ち上げた。
 その旗揚げ公演「幻ろさんじん」(1990年、山城新伍・主演、津川雅彦・演出)では、一徹氏はパンフレットに使う北大路魯山人の肖像画(この連載の第43回でも紹介)を依頼され、なんと油絵で描いた。この切り絵は、「みなと座」の船出を祝って一徹氏が贈ったもの。「幻ろさんじん」のパンフでも巻末で使われている。


 ※絵の制作時期については正確に分からないものも多く、一部は「推定」であることをお含みおきください。

 【Office Ittetsuからのお願い】成田一徹が残したバー以外のジャンルの切り絵について、近い将来「作品集」の刊行を計画しております。もしこの企画に乗ってくださる出版社がございましたら、arkwez@gmail.com までご連絡ください。


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Last updated  2021/06/09 06:15:18 PM
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うらんかんろ

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汪(ワン)@ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

Free Space

▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。

▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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