(1)18世紀半ばからニュージャージー州で造られていたアップル・ブランデー「レアード・アップルジャック(Laird Apple Jack)」を使ったドリンクが発展し、その後19世紀末頃、そのバラ色の色合いから「ジャック・ローズ」と呼ばれるようになった。(なお、「Jack」は人名ではなく、「アルコール度数を増す」という意味のスラング(動詞)に由来する)(出典:Mainespirits.com<2019年>ほか)。
(2)1899年4月28日付の「New York Press」という新聞記事では、「ニューヨークのエバーリンズ・バー(Eberlin’s Bar)で働いていたフランク・ハース(Frank Haas)というバーテンダー(写真右下=1900年頃当時の新聞に描かれた似顔絵)が、オーナーのために(「アップルジャック」を使った)このカクテルを考案し、店で提供して人気を集めている」という話題が紹介されている(出典:「Americanprohibitionmuseum」「Oxford Companion to Spirits and Cocktails」など複数のカクテル専門サイト)。
(3)1905年4月22日付の「National Police Gazette」という新聞記事では、「ニュージャージーのバーテンダー、フランク・メイ(Frank J. May)が考案した。カクテル名は、彼自身のニックネームだった」と紹介するが、なぜメイがジャック・ローズと呼ばれていたのか、その根拠については触れていない(Wikipedia英語版ほか)。
(4)1900年代の後半に、ニューヨークで誕生した(考案者は不詳)。カクテル名は、当時の著名な暗黒街のボス、ジェイコブ・ローゼンワイヒ(Jacob Rosenzweig 1876~1947)のニックネーム「ボールド・ジャック・ローズ(Bald<ハゲの> Jack Rose)」にちなんで、名付けられた(同上)。
※この「ローゼンワイヒ説」は以前、多くの人から支持されていた。しかし、彼が暗黒街に登場する以前から「ジャック・ローズ」は普及していたことから、現在、その信憑性は否定されている(写真左下=ジャック・ローズ誕生のきっかけとなったと言われるアップル・ブランデーの銘柄「Apple Jack」)
(5)ウォルドルフアストリア・ホテルの著名なバーテンダー、アルバート・クロケットは、1931年に出版された著書で、「このカクテルの名前は、ジャック・ミノ(Jacque Minot)という名のバラの花の色がローズピンクだったことに由来する(考案者や誕生の時期には触れず)」と書いている(出典:アルバート・クロケットの回想録「Waldorf Bar Days」から, 1931年刊)。
ちなみに、「ジャック・ローズ」が欧米のカクテルブックに初めて活字になったのは、現時点で確認できた限りでは、1908年に米国で出版されたジャック・グロフスコ(Jack Grohusko)の「Jack’s Manual」と、ウィリアム・T・ブースビー(William T. Boothby)の「World Drinks and How To Mix Them」の2冊(写真右。表紙はいずれも近年出版された復刻本)。