雑誌「TOYRO BUSINESS(トイロ ビジネス)」からの転載
連載コラム【愉しみは酒の数だけ…第4回】
テキーラからメスカルへ
「一気飲みされる、アルコール度数の高い危ない酒」。そんなイメージで語られることが少なくないテキーラだが、バーには欠かせない蒸留酒で、決して「危ない酒」ではない。の数だって、普通のテキーラは40度で他の蒸留酒とほとんど変わらない。「危ない」のはそういう良からぬ飲み方をする連中なのである。

「テキーラ(Tequila)」とは、メキシコ国内のハリスコ州の町、サンティアゴ・デ・テキーラ含む周辺の5州で、竜舌蘭(Agave=アガヴェ)から造られる蒸留酒である(写真左=日本国内では現在様々なテキーラ、メスカルが楽しめる)。
16世紀、入植したスペイン人が現地の材料を使って蒸留酒(スピリッツ)の製造を始めたのが起源とも言われている(「サボテンが原料」と誤解している人も少なくないが、竜舌蘭とサボテンはまったく別の科の植物である)。
70年代までは一般的に「アガヴェ・スピリッツ=テキーラ」と認識されることが多かったが、1974年に「原産地呼称制度」がテキーラにも導入された。今では、この5州で原料、製法などの法的ルールに従って生産されたものだけが「テキーラ」と名乗ることを許されている。
テキーラは日本のバーでは、マルガリータ、マタドール、パロマ、テキーラ・サンライズなど人気カクテルのベース・スピリッツとして用いられることが多いが、メキシコではそのまま飲むのが普通のスタイルだ。愛好家はライムをかじりながら楽しみ、最後に塩を舐めるという(写真右=メキシコのテキーラ蒸留所。収穫したアガヴェの茎が積み上げられている。(C)Yoriko Kondoh)。
テキーラもラムと同様、色(熟成度)の違いで大きく分類される。製造されすぐに瓶詰めされる「ブランコ」、2カ月から1年未満樽熟成させる「レポサド」、1~3年間樽熟成させる「アネホ」、3年以上樽熟成させる「エクストラ・アネホ」などがある。
ところで、同じアガヴェを原料にしたスピリッツで、2010年頃から世界的に注目を集めているのが「メスカル(Mezcal)」である。メキシコ国内の(テキーラ地域以外の)10州で製造されている蒸留酒。数年前までは、メスカルのボトルなどほとんど見かけなかった日本でも、輸入銘柄が少しずつ増えている。

テキーラとメスカルはどう違うのか。「ブルー・アガヴェ」という単一品種で造るテキーラに対して、メスカルには100種類近いアガヴェが使われる。テキーラは「すっきり軽やか、植物の香り」が特徴だが、メスカルは「スモーキーさと複雑な旨味」を持つ。多様なアガヴェを使うので、メスカルはその土地(蒸留所)ごとの個性がよく反映されるという(写真左=メキシコのアガヴェ畑(C)Yoriko Kondoh)。
ちなみに、意外なことだが近年、メキシコでの蒸留酒生産は約70%がラムで、伝統的なテキーラやメスカルは20%弱と押され気味。日本では、アガヴェ・スピリッツは気候的なこともあって生産されてこなかったが、2022年、沖縄県金武町のベンチャー企業がアガヴェの苗1200株を輸入し栽培を始めた。5~6年後に「国産アガヴェ・スピリッツ」が味わえるかもしれないと思うと、今から本当に楽しみである。
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Last updated
2025/03/23 11:45:32 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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