雑誌「TOYRO BUSINESS(トイロ ビジネス)」からの転載
連載コラム【愉しみは酒の数だけ…第7回】
シェリーはバーにもよく似合う
バーのカウンターに登場する酒の一つに、「シェリー(Sherry)」という酒類がある。スペイン・アンダルシア地方特産の美酒だ。現地では「ヘレス(Jerez)」(または「Vino de Jerez」)と呼ばれるが、英国人が発展させ、世界へ普及させたため、英語での呼称「Sherry」の方で定着してしまった。
シェリーはブドウを原料とした白ワイン(醸造酒)の一種だが、蒸留酒であるブランデーを加えてアルコール度数を高めているため、「酒精強化ワイン(Fortified Wine)」とも呼ばれる(写真左=近年、シェリーは数多くの銘柄が輸入されている)。
シェリーという名前は、ウイスキー好きの方には、熟成樽の一つ「シェリー樽」としてよく知られている。しかし、フルーティな味わいが特徴のシェリー樽熟成シングルモルトを飲んだことがある方でも、実際にシェリーを口にした人は、意外と少ない。
私はカウンターでお客様からよく、「シェリーって、甘いんでしょう?」という質問を受ける。その時、いつも次のような答えを返す。
「シェリーには甘口から辛口まで10数種類もある、実に間口の広いお酒です。だから『シェリー=甘い』というのは、大いなる誤解です。見た目は白ワインのようですが、しっかりした味わいで、度数もワインより少し高い程度なので、とても飲みやすいですよ」
私のバーでは、シェリー好きのお客様も結構いるので、辛口タイプのシェリーを常時5種類(フィノ、マンサニージャ、アモンティリャード、オロロソ、パロ・コルタド)置いている。シェリーは、度数が高めなので、ワインよりも長期間保存ができるのも有難い。
シェリーは、辛口タイプの場合は冷やしてそのまま味わっても旨いし、オーセンティック・バーでは、シェリー・ベースのカクテルを楽しむこともできる。代表的なシェリー・カクテルと言えば、例えば「バンブー(Bamboo)」や「アドニス(Adonis)」。
「バンブー」=写真右=は、1890年、横浜の外国人居留地にあった横浜グランドホテルで誕生したと伝わる。考案したのは、同ホテルの米国人支配人、ルイス・エッピンガー(1831?~1907)。辛口シェリーとドライ・ベルモットを使った爽やかな辛口カクテルだ。
そしてエッピンガーが考案する際、インスパイアされたというのが後者の「アドニス」で、これは中甘口シェリーとスイート・ベルモットを使った甘口カクテルだ。他にも、近年ではラム・ベースの有名なカクテル「モヒート」のベースを、辛口シェリーに換えた「レブヒート」というドリンクも人気上昇中。
シェリーは、現在では数多くの銘柄が輸入されている。気軽に飲めるのはどちらかと言えば、スペイン・バルのような店が多いが、近年ではオーセンティック・バーでも、品揃えを充実させる店が目立つ。機会があれば、ぜひシェリーの素晴らしい世界を味わってみてほしい。
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Last updated
2025/03/23 07:06:09 PM
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Profile
うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。