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カテゴリ:海外ミステリー
おなじみ、リンカーン・ライム・シリーズ第8弾。
■内 容 リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人の罪で逮捕された。 アーサーは無実を主張するが、DNAなど証拠が揃い有罪は確定的で、弁護士もサジを投げかけてる。 アーサーの妻ジュディに助けを求められたライムは、そろいすぎた証拠に違和感を覚え、確定的証拠が揃いながら被疑者が無罪を訴えるケースを洗い出すと、すでに複数の同様の事件が・・・。 姿の見えぬ何者かが、巧妙に証拠を捏造し、己の罪を他人になすりつけ、殺人を繰り返しているのだった。 史上もっとも卑劣で神のごとき力を持つ犯罪者『すべてを知る男』と、ライムや刑事アメリア・サックスたちの戦いの火蓋が切って落とされる・・・。 ■感想など リンカーン・ライムシリーズの近作の中では、小生はこの作品にインパクトを感じました。 何しろ、”五二二号”と名付けられた犯罪者「すべてを知る男」が恐い。 ”五二二号”は、小売店での購買履歴、サービス利用履歴、電話の通話履歴、クレジットカードの利用履歴など、膨大なデータベースを蓄積・分析して顧客全体のニーズの傾向などを洗い出してビジネスに役立てる”データマイニング”を業務にする『SSD社』の関係者。 データベースを不正利用してターゲットの好みや趣味を把握して近づき、やがて絵画などを奪った上で暴行し殺害。 また、犯行の際には、巧妙に証拠を捏造し、偽の目撃情報を流すなどして、無実の人間を犯人に仕立て上げる・・・。 データベースを駆使し、コンピュータ上の記録を書き換えることで、セリットー刑事の検査結果を書き換えて薬物使用者に仕立て上げたり、電気代未払いのデータをでっち上げられたライムの自宅は、電気を止められ停電する始末・・・・。 偽データによりアメリアも愛車を没収されてしまい、捜査陣は混乱。 コンピュータ上のデータに依存しきっている社会を好きなように改変出来る”五二二号”は、全知全能の力を持つ男なのです。 -◆- ”五二二号”が犯罪を始めるにあたって、”練習台”にされた男は、見に覚えの無い借金などが降りかかるなど、あれよあれよと言う間に仕事も家族も財産をも失い、人生をズタボロに・・・。 いまでは半ば精神を侵され、携帯電話、クレジットカードをはじめ、あらゆる電子機器を徹底的に避けるパラノイア状態。 とにかく、オーウェルの小説「1984」に出てくる”独裁者ビッグブラザー”が市民を監視しているようなことを、データマイニングを行う一企業『SSD社』が行っていて、個人情報について神経質にならざるを得ない怖い物語となっています。 -◆- で、現実に”データマイニング”という手法は存在しており、<”五二二号”に人生を奪われる>なんてことが、まったくの絵空事とは云いきれないから背中が寒くなってきます。 知らない間に収集されている個人情報を思うと怖い・・・。 楽天が顧客データを収集してる話なんて、『ソウル・コレクター』状態でしょ。 小生は、インフォシークでは検索しないようにしてますが、アンケートとかに答えているからヤバいかも・・・。 -◆- 『SSD社』に犯人がいることは安易に想像出来るんですが、社長以下、社員には、犯人らしき怪しげな登場人物が何人も周到に配置されていて、読者を惑わせる技は一級品。 また、前作「ウォッチメイカー」の犯人の影も現れ、続き物としての魅力も・・・。 細かいことは抜きにしても、抜群のリーダビリティは健在だし、ライム、アメリア、プラスキーらレギュラー陣も活きいきしており、文句なく楽しめました。 500ページを超える長編ですが、全然長い気がしない娯楽作です。
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Last updated
2010.06.15 18:14:11
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