梶尾真治(著)「穂足(ほたる)のチカラ」★★★★★
穂足のチカラ■内 容 成績の上がらないセールスマンの父。 せっせとパチンコ通いを続ける母。 引きこもりで高校生の長男。 未婚の母(父親不明)の娘・七星 そして七星の子・穂足(ほたる:三歳) 穂足以外の面々は、それぞれが問題を抱えているのだけど穂足の存在にそれぞれが癒されて暮らしている。 ある日、大怪我で入院した穂足。 見ないに訪れ穂足の体に触れた家族の身体にビビッと電気が走りそれぞれに不思議なチカラが備わって・・・・。 この海野一家5人におこる宇宙規模の奇跡を巡る物語・・・・。■感想など あいかわらず”梶尾真治=カジシン・ワールド”は心地よい。 心に溜まった澱が流れ出ていくようで、とても清々しい気分になります。-◆- 穂足から不思議なパワーを得た海野家の4人は、それまでつまづき加減だった人生が次々と逆転していく。 セールスマンの父は得意先との関係が劇的に好転し、パチンコで金を浪費していた母は”面白いように当たる台”を見分ける能力が備わって大勝ち。 引きこもっていた長男は高校に登校し対人関係を巧くこなせるようになる。 こうやって悩みが解決して幸運が転がり込む様は小説ながら羨ましいほどで読んでいるこちらまで幸せがやってきたような気分になります。-◆- 穂足の力は伝染性があって、握手などで他人にドンドン広まっていき、九州地方からやがて全国に広まっていく・・・・。 現実社会も、こうして幸福の輪が広まればいいのになぁ・・・・。 で、この穂足の力の正体は約2,000年前に現れたキリストとも関係するという壮大な大風呂敷!! 海野家の茶の間から宇宙の意識にまで広がる計り知れないスケールの物語であります。-◆- とにかく、梶尾真治の真骨頂とも言える温かくて少し切ないような作品。 この著者の作品自体に「穂足の力」が備わっているような・・・・。 梶尾真治だけが書ける物語で、温泉にゆっくり浸かってご馳走を食べた後のような満足感を味わえました。 クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ