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子育ちパパBook・Trek

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全61件 (61件中 1-10件目)

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日本文芸一般

2010.09.29
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カテゴリ:日本文芸一般
「第20回紫式部文学賞」受賞作、川上未映子の長編小説「ヘヴン」
川上未映子にしか書けない傑作です。
ヘヴン

ヘヴン

価格:1,470円(税込、送料別)


ご面倒ですが、続きの感想は、
下記をクリックして
拙ブログの「別館」でご覧になってください。


川上未映子(著)「ヘヴン」感想



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 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)






Last updated  2010.09.29 17:20:39


2010.08.24
カテゴリ:日本文芸一般
痛快時代小説「のぼうの城」
のぼうの城

のぼうの城

価格:1,575円(税込、送料別)


ご面倒ですが、続きの感想は、
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和田竜(著)「のぼうの城」 感想



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Last updated  2010.08.24 16:04:26
2010.03.17
カテゴリ:日本文芸一般

■内 容

 主人公・川田幸代(29際、独身)は、女友達3人で発行する同人誌に、男同士の同性愛を描いた小説をせっせと書き続けるオタクな腐女子で、『星間商事株式会社』の社史編纂室に所属する会社員でもある。
 会社の50周年に発行予定だった”社史”は、やる気のないゆる~~い本間課長のぺースのせいか、未だに日の目を見ない有様。

 社史編纂室の幸代、矢田、みっこちゃんが過去の資料を集めるが、高度成長期のある時期について資料が集まらず、なぜか先輩社員やOBもこの時期について語ろうとしない・・・。
 幸代たちが、この高度成長期の穴──社の秘められた過去を探ろうと奔走するのだが・・・。

■感想など

 川田幸代の同人誌仲間が結婚し、同棲中の彼氏との結婚を頭がよぎる・・・・。
 アラウンド30の女性の心の動きが、生活感たっぷりに描かれていておもしろい。

 例えば幸代とコミケ仲間の英里子との会話・・。
 英里子「男の人って、種付けしといて子育てはどっか他人事よ?それに対するイライラで削られるエネルギーを、計算に入れておくべきかも」
 幸代「英里子のだんなは、子育てに協力的でしょ?」
 英里子「協力的というのが曲者よ。」「本体なら、自分の子なんだから育児をして当たり前でしょ。『育児に協力的な奥さん』とは言われないのに、『育児に協力的なだんなさん』が褒められるのは変よ。」
 なかなか生々しいでしょ。

 小生も父親の端くれで、子供が小さい頃は積極的に育児参加をして『育児に協力的なだんなさん』のつもりだったから、著者から「協力的というのが曲者よ」としてバサッと斬り込まれると、返す言葉がないのであります。
 降参、白旗!!!
-◆-

 社史編纂室所属という”閑職”にある本間課長、幸代、矢田、みっこちゃんらが、星間商事株式会社の闇の歴史に気づいてしまったことで、なんだかんだが起きるところが物語のメイン。
 NHKの金曜21時枠、あるいは土曜22時枠のドラマにしたら面白そうな内容です。

 オタクな腐女子を自認している幸代の他、幽霊部長、ぬるい課長、女好きで仕事はサボり気味のヤリチン先輩、”いまどき女子”の後輩みっこちゃんら、およそ企業勤めとは思えない連中のキャラが憎めなくて、妙に愛おしくなってしまいました。
-◆-

 同性愛小説を書き続けた幸代が、合コンで偉そうにしている男性を苦々しく思った際に「男性のペニスを100本は描いてきたのだ」と、心の中で自分に気合いを入れて息巻いてる場面に爆笑・・・・。

 こんな具合で、出来すぎたマジメ人間は一人として登場しない、楽しい作品でした。


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Last updated  2010.03.17 19:58:01
2010.02.08
カテゴリ:日本文芸一般
第142回 芥川賞 候補作品

■内 容

 雑誌掲載時に『現代演劇の鬼才が、人間の悪意と尊厳をユーモアとアイロニーに包んで描ききる問題作』と惹句が付いた作品

 顔面の内側が崩壊する奇病にかかったマッサージ師のボクが主人公。
 ある日、ボクが勤めるマッサージ店に、B級映画やホラー映画の脚本を手掛け、1本だけ監督をした経験を持ち、副業としてコラムを書いたり俳優やっている海馬五郎が客としてやってきて、ひょんなことからボクは海馬の弟子になっちゃう。

 そして、海馬が脚本づくりに携わった映画の撮影で北九州の町へと同行するボク。
 この映画で人生初で、恐らく人生最後の主演の座を得た老優・小関泰司が、セリフでNGを出すかを賭けた「老人賭博」が幕を開ける。

 地元のヤンキーや、共演のグラビアアイドル海らも加わったギャンブルの行方は・・・。

■感想など

 「そろそろ”松尾スズキ”を読んでおかないと」と、なんとなく”松尾スズキ未読”への焦りを感じて読んだ一冊。

 顔面の内側が崩壊する奇病だったボクは、治療を受け整形も施した結果「わけもなくつぶらな瞳の青年」に変身しちゃうという、のっけからナンセンスな物語。
 しかし、ボクという一人称の心の声「しのげ。無理にでも。今を。この1日を。」というフレーズに痺れちゃう。
 なんか、短いフレーズなんだけど、切実さだとか、自分を無理に鼓舞するボクの心情とか、諸々の感情がこもっていて、凄い気がする。
-◆-

 海馬五郎が、ボクに老優・小関泰司のことを、「・・・・俺たちはこうしてじいさんの話を聞いてるけど、決して、今、目の前にいるじいさんと会話しているわけじゃないだろ。
 じいさんの記憶のスライドショーを見せられているだけじゃない。そして、じいさんの方も過去を見世物にすることでしか、俺たちとコミュニケーションできないのがわかってるんだな。そこに横たわる圧倒的断絶が俺は哀しいのよ。だって、先生がじいさんの話に興味を持ってもだよ、だからってじいさんと友達になるわけにはいかないだろ。最後までつき合いきれないのに興味を持つのは、遺跡の見学者みたいで、なんだかさ、無責任で残酷じゃないか」
と語る。
 老人・小関と会話することを『じいさんの記憶のスライドショー』『遺跡の見学者みたい』と偏屈な視線で論じる海馬五郎が『無責任で残酷じゃないか』と言葉を締めるこの感覚が、普通の切り口とは違っていて凄い。

 ここいらが、松尾スズキが奇才たる所以かな・・・。
-◆-
 
 老優・小関をトチらす為に、わざわざセリフに早口言葉を入れたり、マチュピチュ遺跡を盛り込んだり、海馬は自分が賭けに勝てるように脚本をいじる。
 監督も賭けに乗ってるから、わざわざカメラの長回しをしてNGを出すように仕向けちゃう。
 賭けの対象になった老優・小関を取りまく俳優、スタッフが皆、小関のセリフに固唾を呑んで、賭けの勝ち負けを気にしてる・・・。
 バカバカしく、ブラックなクライマックスに爆笑してしまいます。

 最初で最後の主演に意気込み、老いと戦いながらも、自らのキャリアとプライドを賭けてセリフを頭に叩き込む小関と、彼の弟子でお世話をする山崎の悲哀も漂ってきて、笑いモノになってる老優・小関が滑稽でもあり、可哀相でもあり・・・・。
-◆-

 芥川賞候補作品であるから、以上の展開から何かのメッセージを読みとるべきかと思ってしまうのだけど、やや毒のある笑いが印象に残ったものの、深読み出来ずに読了。

 主人公が「顔面崩壊」→「わけもなくつぶらな瞳の青年」に変身したことを、もっと膨らませたら筒井康隆の初期作品的な不条理さも出せたかも・・・なんてことも、読後に少し思いました。


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Last updated  2010.02.08 20:41:57
2010.01.25
カテゴリ:日本文芸一般
 爽快、傑作、中学校部活青春小説!!

■内 容

 中学1年生の、海月(みづき:愛称クーちゃん)が主人公。
 両親は、美しい「月夜の海」をイメージし、字面も綺麗な「海月」という名前を付けたが、よくよく考えると”海月”と書いて”クラゲ”と読む・・・。
 だから、愛称はクラゲの”クーちゃん”。
 彼女は、変な名前でぐれることもなく、まっとうに育って中学に入学。
 この中学では部活が必修で、ひょんなことから幼馴染の樹絵里とともに「飛行クラブ」に入部。
 クラブの目的は、ただ漠然と「空を飛ぶことを目的とす」とされているだけで、手段など細かいことは何も決まっていない有様。
 今まで部員は、2年生の変人部長”斉藤神”(通称カミサマ)、野球部と掛け持ちの”中村海星”だけで、1年生の”海月””樹絵里”が加わり、その後、同じく1年生の”るなるな”、”球児くん”、”イライザ”が入部して、総勢7名の零細クラブ・・・。
 さて彼らが空を飛ぶ日はやって来るのか・・・・。

■感想など

 ノー文句に気持ちがよい小説であります。
 小生が知る作家の中で言うと、”有川浩”の恋バナ系小説とか、初野晴の『退出ゲーム』なんかと感じが似てるかな・・・。
 また、アニメ版の『時をかける少女』的でもあるし、NHKの『ドラマ8』になりそうなネタでもあります。
-◆-
 あくまで自分自身が飛ぶことを旨とし、飛行機やヘリでの飛行は除外。中学校の部活なので、予算など諸々の問題を考慮して、人力飛行機を作るなどの方法も排除する「飛行クラブ」って、飛ぶという目的だけが先行していて、具体的飛行手段に関しては、まったく「ノー・プラン」という、かなりナンセンスで、人を食ったクラブ。
 このバカバカしさだけで、小説世界に引き込まれます。(登場人物たちは真剣なんですが・・・)
-◆-
 こういう怪しくも下らない部活に参加する、”クーちゃん”たちの、二度と戻らないみずみずしい中学生活がイイ感じ・・・。
  •  ”海月(みづき)”と言う名の、漢字の読みは”クラゲ”。
  • 中村先輩の”海星(カイセイ)”という名前は、漢字の読みは”ヒトデ”
  • 宝石=ジュエリーの”樹絵里”
  • 「朋」と言う名前は、月が二つだから”るなるな”と読ませる。
  • 野球部員と野球部マネージャーだった両親が、息子の甲子園出場を目指して付けた”球児
  • 障害を持つ”エンゼ”という名の姉を守るために付けられた斉藤部長の”神(ジン)”という名前。
  •  親が入れ込んで付けた変わった名前をもつ中学生たちが、みな個性があって可愛らしい。
     小生は50歳直前でありまして、バカバカしいことにも真剣になれる「飛行クラブ」の面々の若さが羨ましく、自分自身の中学時代が懐かしくもあります。
     そして彼らの淡い恋が、何となくくすぐったい感じ・・・・。
     
     これらがすべて相まって、読後には心がふわっと飛行したような気分に浸れました。
     フ~~ム。これぞ精神的な「飛行クラブ」!!!!

    -◆-
     飛行することって、色々なくびきから解き放たれること・・・即ち”自由”の象徴なんですね。
     だから「飛行クラブ」ってことなのでしょう。

     とにかく、現実社会がドロドロゆえに、この作品の清涼感が心に沁みます。
     あ~~気持ち良かった。


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     ななつのこ












    Last updated  2010.01.25 20:50:33
    2009.12.07
    カテゴリ:日本文芸一般
    面白すぎる琉球王朝ファンタシー

    ■内 容

     美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女真鶴(まづる)は憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった--。
     黄昏の美しい王国にペリー来航。近代化の波に立ち向かう宦官兼側室の真鶴。しかし破天荒な一人二役劇は突然幕を閉じる?。時代の変わり目を嵐(テンペスト)となって生き抜いた王宮人の苛烈な愛と涙の物語。(web.KADOKAWA:テンペストより)

    ■感想など

     著者が未来の東京を描いた「シャングリ・ラ」も、ものすごく濃厚でぶっ飛んだ作品だったけど、本作「テンペスト」も超濃密。
     「シャングリ・ラ」にはアニメッぽさを感じたけど、「テンペスト」は韓流ドラマか、テレビ東京が作りそうな歴史ドラマって感じかな・・・。
    -◆-
     琉球王府では女人は役人に就けないため、主人公の真鶴は宦官を装い”孫寧温”と名乗って任官試験を受け稀に見る好成績で合格。
     役人になった真鶴=孫寧温は、次から次へと事件に巻き込まれて、あるときは知恵を絞って見事に難事を解決して琉球王府のトップ官僚に登り詰める。
     しかし平穏は続かず、女系の王族の恨みを買って足を引っ張られた挙げ句に八重山に島流しになるなど、もう波瀾万丈を絵に描いたようなストーリーで、面白いの何のって・・・。
    -◆-
     生命力たっぷりで濃いめの登場人物が魅力いっぱい。
     登場人物が生き生きしているから、物語もエネルギッシュで力強い。
     凄まじい分厚さの上下2巻だけど、読み進めるには苦痛は皆無。
     極上のエンタテインメントで、非日常的異文化体験を楽しめました。

     (なお、「テンペスト」特設サイトには、池上永一のインタビュー動画や、人物相関図も掲載されていて、本作をより一層楽しめるようになっています。)


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    シャングリ・ラ(上) シャングリ・ラ(下)









    Last updated  2009.12.07 20:00:10
    2009.11.28
    カテゴリ:日本文芸一般

    ■内 容

     片道わずか15分間の阪急電鉄今津線の8つの駅を起点に乗り降りする乗客の物語からなる連作短編。

    ■感想など

     本作の舞台となる阪急電鉄今津線は、北から『宝塚駅(宝塚大劇場前)』『宝塚南口駅(宝塚ホテル前)』『小林駅』『仁川駅(阪神競馬場前)』『甲東園駅』『門戸厄神駅』『西宮北口駅』の8駅。
     小生がよく利用したことのある路線なので、この連作は凄くリアルに心に滲みてきます。
     (今津線は、西宮北口駅から今津駅に向かってあと2駅有るんだけど、歴史的経緯があって西宮北口駅で線路が分断されているのでありまして、この作品では南側の2駅は舞台になっておりません。)

     で、作者が語るように、阪急電鉄今津線沿線は、都市部にありながらどことなく時間の流れが穏やかな感じがする・・・。
     そんな各駅の雰囲気が上手く醸し出されていて、そこに有川浩お得意の”恋バナ”が絡んでくるから、たまらなくイイ感じの物語になっています。

    -◆-
     主人公の一人が二週間に一度のペースで通う図書館で、登場人物が「ああ、あの口うるさいおじいちゃんがまた職員を困らせているな」と口にする・・・・。
     小生もよく図書館で見かける風景で、なぜか図書館には我が儘な文句を垂れる爺さんなどがいるのです・・・。
     曰く「空調の効きが悪い」とか、いんねんの類のクレームを付けたり・・・。

     と言うわけで、有川浩は日常を切り取ったような一コマの描き方が上手い。

     また別の場面では「一般教養の必修科目の教科書だが、講座の教授の自著でえらく高い。これをわざと教科書指定し、一年生に売り捌いて儲けているともっぱらの噂である。必修なので落とせない事情を衝いた一種の悪徳商法で、その教授はおそらく学生全員に嫌われている。」と登場人物が語る・・・。
     ワッ、これまたリアルに大学時代を思い出す。

     こういう登場人物の言葉の積み重ねが、物語にリアルな生活感と味わいを出すんですよねぇ。
     有川浩の作風は、もはや「芸」の域に達していますよ。
    -◆-
     阪急電鉄今津線ではないのですが、小生が住まう街の駅も物語中に登場してなんだか嬉しい気分。
     また、宝塚南口駅前にある”宝塚ホテル”とか、小林駅そのものとか、小生が思い出を持っている駅で物語が動くことにも心地よさを感じました。
    -◆-
     とにかく、有川浩の作品は図書館戦争シリーズを含めてライトノベル風の軽い肌触りではあるけど、生き生きした登場人物の描き方はそんじょそこらのライトノベルとはひと味も二味も違ってるように感じます。
     有川浩の「芸」に脱帽です。


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    ★私鉄 Nゲージ 鉄道模型★阪急7000/7300系(旧塗装)増結用先頭車2輌【グリーンマックス・41...












    Last updated  2009.11.28 20:30:12
    2009.11.08
    カテゴリ:日本文芸一般
    抜群のリーダビリティ発揮の、新興宗教黙示録!?

    ◆◆ 内 容 ◆◆

     この国には、「救われたい」人間が多すぎる――。現代人の本質を抉る渾身長篇!

     男二人が金儲けのために始めたネット宗教。しかし、信者の抱える闇は、ビジネスの範疇を超えていた。家族から無視され続けた主婦、愛人としてホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性……居場所を失った女たちが集う教団は、次第に狂気に蝕まれてゆく。圧倒的密度と迫力! 二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。(新潮社HPより)

    ◆◆ 感想など ◆◆

    【 新興宗教設立 】

     小説家を目指して東京都庁を退職した鈴木正彦が主人公。
     編集者・矢口からゲーム小説の執筆を持ちかけられ、5000枚の大作を書き下ろしたが、これがインチキ話で、金も仕事も家族も失った鈴木正彦・・・。
     で、思いついたのが”インチキ宗教”の立ち上げ。
     『信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる』として、矢口に手伝わせてネット上に宗教サイトを構築して”聖泉真法会”をスタートさせるた。
     教義やなどは、鈴木が書き上げていた5000枚のファンタジー小説が下敷きだ・・・。
     序盤、主人公鈴木正彦が金も地位も失うくだりから新興宗教立ち上げまでは、そっけないほどサクサクとコトが運んじゃう。
     まぁ、新興宗教設立後がメインの物語だから良いようなものだけど、序盤のストーリーはやや雑な感じがしました。

    【 次々と問題が起こって 】

     ”聖泉真法会”がスタートすると、俄然話が面白くなってきます。
     清貧で宗教色を薄目にした鈴木を慕う者がどんどん増えて、信者は最大数千人にふくれあがる。
     組織が巨大化するにつれ、中高年の女性信者と、今風の若者信者の間のジェネレーションギャップによって起きるトラブル。
     ”聖泉真法会”に入れ込んで、会社の施設を提供してしまう会社社長の浮き沈み。
     元・芥川賞作家で、売れなくなって女房子どもを抱えながら、”聖泉真法会”に入信した男が次々と起こすトラブル・・・。
     大手の新興宗教団体による”聖泉真法会”への策謀とスキャンダル。
     そして、”聖泉真法会”を敵視する信者の家族との問題。

     まぁ、次々と問題が起こって、まったく退屈することがない。
     上下2巻、結構なボリュームだけど、どんどん引き込まれてページをめくり続けることに・・・・。

    【 カルト化 】

     国会議員など影響力の大きな人物を敵に回し、仕組まれたスキャンダルなどで教団は財産と多くの信者を失ってしまう。
     一方、わずかに残った信者は「神懸かり」「先鋭化」してゆき、教祖である鈴木のコントロールが効かなくなっていく・・・。
     カルト化を避けようとしていた鈴木の思惑とは正反対の方向に向かって、ことが流れていく。
     「オウム」や「イエスの方舟」のように・・・。
     そして、破滅と転落。

     小生の好みの問題だけど、トントン拍子で教団が拡大していった上巻の成功物語で幕が閉じてた方が、後味は良かったような・・・。
     後半が、あまりにもドロドロしていて・・・。
     でも、作者が書き表したかったのは、ドロドロの帰結なんだろうなぁ。
     新興宗教と、救いを求める現代人が紡ぎ出す破滅がメインディシュなのでしょう・・・。

    【 すっかり小説世界に… 】

     とにかく、色々な信者がいて、それぞれに苛々したり、腹が立ったり、ムカついたり、ウザかったり・・・彼ら登場人物によってすっかり小説世界に引きずり込まれて面白かった・・・。

     ただし、ほんの少しばかり話を整理して、濃縮した方が小説として完成度が高まる気もしました。
     また、篠田節子氏の作品では『ゴサインタン』なんかに比べると、近作の『転生』や本作『仮想儀礼』は随分と印象が変わってきましたねぇ。
     すこしラフな感じがします。


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     転生













    Last updated  2009.11.08 20:10:11
    2009.11.02
    カテゴリ:日本文芸一般
    純文学とエンターテイメントの融合 平野啓一郎の「ドーン」

    ■ 内 容 ■

     2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人(さの あ すと)。火星から帰還した明日人はアメリカ大統領選挙をめぐる巨大な陰謀に巻き込まれ て い く。鍵を握るのは、宇宙船<ドーンDAWN>の中で起きた「ある事件」。明日人の妻・今日子、副大統領候補の娘リリアン・レイン・・・・・・ 
     様々な人 物 た ちの間でうごめくそれぞれの思い。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史上最大の秘密とは?30年後、人類はまだ人を愛することができるのか!?
     『決壊』を経て、平野 啓一郎が描く、最高の純文学かつ究極のエンターテイメント小説。 (講談社HPより)

    ■ 感想など ■

    【 再チャレンジ 】

     実は小生、平野啓一郎『決壊』で途中挫折しています。
     凡人の小生には、濃密に書き込まれた文学的な言葉の羅列が、上手い文章なのか、はたまたくどい表現や過剰な比喩の積み重ねなのか分からないまま、文学を読み切る心の体力が切れてしまい、大作の序盤でリタイア。

     ですから「ドーン」で平野啓一郎に再チャレンジなのであります。

    【 これが平野啓一郎 】

     本作から「これが平野啓一郎の文章だ!!」ってことろを引用します。
    『・・・・そこでひとつの刹那が、彼を衝撃とともに拉し去って、抱擁しながら跡形もなく引き裂くはずだった。
     自分の生の痛ましい痕跡と引き替えに、完全な沈黙へと消え入りながら、もういい、と一言囁いてくれるはずだった。』
     大衆小説やライトノベルではお目にかからないような文章表現です。

     さらに平野啓一郎らしさに溢れる部分を引用・・・。
    『四十億年以上もの時間をかけて、気がつけばこうなっていたという、その完全な偶然任せ!呆れるほど楽天的な結果論的美! あらゆる我執から、清々しいほどに自由な時間への信頼! 目にも見えないほどの分子の結合から積み上げて、その表面を晴れやかに覆い尽くす大気に至るまでの誇大妄想的な運動の連鎖!
     何もかもが、このたった一つの空間の力に引き寄せられている。人と動物との別を問わず、生物も無生物も関係なく、同じ一続きの場所を得て、重力を介して相互に交わり合っている。もし気まぐれに手を離されれば、たちまち、無限の死の世界へと放り出されてしまうような孤独の最中に、特別にそれを意識させられることもなく、あらゆる生命の活動を許し、あらゆる無機物の存在を受け容れながら、ついに一個の自らであり続ける巨大な複製不可能な生命! 地球と呼ばれる完壁な時間! その表層的な器の中で、独創性の限りを尽くして、ありとあらゆる生物が誕生しては、束の間栄えて絶滅してゆく。---人間たち! その極最近になって登場し、異様な繁殖力で「全地の表」を覆い尽くして、その場所を、神が自分たちのために準備したと錯覚しながら、架空の君臨に酔い痴れてきた、愛すべき、滑稽な人間たち! その経営が任されるには、あまりに無力で、あまりに無知で、あまりに卑小な人間たち!』
     登場人物が、宇宙の中の地球と人類を語っているのですが、なんとも凄まじい文学的表現!!
     平野啓一郎は、読者に媚びることなく、言葉の塊をぶつけてくる!!

     これら決して生易しくない文章の連なりを身体が受け付けるかどうかが平野文学を読破できるか否かの分かれ道かな・・・。
     幸い「ドーン」は、人類初の火星着陸を果たした宇宙飛行士を巡るストーリーの面白さがあったので、最後のページまで辿り着くことが出来ました。

    【 何を訴えかけている(1) 】

     さて、文学作品でありますから「ドーン」を通じて平野啓一郎が何を訴えかけているのか、”解”を見つけたいなどと思ってしまいました。(国語のテストみたいな・・・)

     まずは、主人公を巡る身近な物語から・・・。

     医師である主人公・佐野明日人は東京大震災で一人息子を亡くし、その後火星探査に参加し、6年間地球を離れる。
     明日人の妻は、亡くなった息子の詳細データから作られ年月とともに成長する息子のホロイメージを家の中に再生し悲しみを埋め合わせている・・・。

     火星探査によって生じた6年の空白や互いの異性問題など、主人公夫婦に降りかかる複雑な出来事の積み重ねによってすれ違ったり、理解し合おうとしたりする”夫婦の心・感情”が「ドーン」の柱ではあると思う。
     だけど、それだけがこの物語のすべてではない気がします。

    【 何を訴えかけている(2) 】

     作中、2030年代のアメリカの大統領選挙が描かれているのですが、この時代のアメリカは中東を通り越して東アフリカで民主化のための戦争をやらかしていて、一国主義で主戦派の現職と、国連主義で東アフリカ戦争に懐疑的な対立候補が選挙運動を繰り広げています。
     イラク戦争の延長線とも思える「軍産複合体」「民間戦争会社」「ロボット兵器・ハイテク兵器」などの是非を議論する両候補の言葉を通じて、平野啓一郎はアメリカの振る舞いを諫めているのでしょうか・・・。

     でも、平野啓一郎が単純に反米を訴えているようにも思えない。
     もっと深い意味合いがありそうです。

    【 何を訴えかけている(3) 】

     ネット上にアバターを作るように、現実社会で自分の色々な個性・人格を使い分ける「分人」という概念が登場します。
     職場での人格、恋人や家族と過ごすときの人格などを別人格として独立させ、積極的かつ意識的に”多重人格”である生き方・・・「分人主義」

     たしかに複雑な社会を生きていくためには、色々な顔を使い分けていますものね。
     小生自身で考えれば、趣味に没頭するオタクな自分、子どもと接する子煩悩な自分、公の場での完全なる作りものの表情を浮かべてる自分、友人と猥雑な話をしている自分、電車で老人に席を譲る自分、嫌いな上司に憎しみさえ抱く自分・・・考えれば数え切れない自分があります。
     作中の近未来では、これらの自分を独立させて日々を過ごす人が多数派になっています。(小生の稚拙な言葉では表現しきれていないなぁ)

     色々な顔があっても自分は自分だという考え方も含めて、「自分とは何なのか?」を平野啓一郎は語ろうとしている気がしました。

    【 何を訴えかけている(4) 】

     イギリスでは監視カメラが至る所に設置されて犯罪捜査などに利用されていると聞きます。
     アメリカでもいわゆる「愛国者法」に基づき盗聴や監視カメラなどでテロ予防が行われています。
     日本でも、道路に設けられたNシステムで通行車両が撮影され、犯罪捜査に用いられています。
     これら国家権力による監視体制の独占に対抗するために、店舗の監視カメラなど民間が設置したカメラをネットワークでつなぎ誰もがアクセスできる「散影」というシステムが作品の重要なアイテムとして登場します。

     国家だけにコソコソと監視させるより、いっそのことすべての監視映像をオープン化することで国家権力を牽制しようと言う考え方。

     国家権力への問題提起と、急速に進歩する情報通信技術の未来についての考察を、平野啓一郎が提示してるのかな・・・。



     以上を総合すると、「ドーン」には、複雑化した社会が、新しい技術の進歩でさらに深く複雑化したとき、人間の生き方がどう変わるかを書き示されているのか・・・・。
     とにかく「分人主義」「散影」という平野啓一郎の造語による概念やツールが印象的で、翻って”今の自分”、”今の社会”を考える材料となる一冊でした。
    凡庸な小生には難しい作品だったけど、きっと「これが答えだ」なんてモノもなくていいのでしょう。
     一冊読み切って、何かが心の肥やしになればそれで良いのかも・・・・。

     (小さなことだけど、主人公・佐野明日人が”さのあすと”ではなく、”セイノ・アストー”と英語読みで呼ばれていることも妙に印象的でした。)


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    Last updated  2009.11.02 15:04:49
    2009.08.08
    カテゴリ:日本文芸一般
     感動した。涙した。
     零戦による特攻攻撃で命を落とした操縦士の感動の物語「永遠の0(ゼロ) 」
     若い人に是非読んで貰いたい1冊です


    ■内 容

     フリーライターの慶子が第2次世界大戦の特攻隊員を取材することになり、弟の健太郎を臨時の助手従えて、特攻攻撃で亡くなった祖父・宮部久蔵の調査を始める。
     宮部のことを知る生き残った元軍人に取材する内に、宮部を「臆病者」と呼ぶものと「命の恩人」と呼ぶ者がいることが判明する。
     相反するように思える宮部の人物像の背景にあった彼の心の内とは・・・。

     太平洋戦争の痛ましさと、家族愛などを描いた感動傑作。

    ■感想など

     読み終えた時、涙が・・・。
     泣けました。
     そして、世知辛いとはいえ今の平和な日本の礎となった人々に心を馳せました。
    -◆-
     元軍人をインタビューする形で戦争の悲惨さ、愚かさ、理不尽さがヒシヒシと伝わってきます。
     そして、「生き残りたい、妻子と再び暮らしたい」と願い続けた天才ゼロ戦パイロット宮部が、自ら特攻死した経緯が感動的。
     さらに、宮部と彼が残した妻子、そして孫でフリーライターの慶子とその弟・健太郎の不思議なえにしはファンタジックでさえあります。

    ■印象に載ったフレーズ

    「六十年も世代が違うと字も読めなくなるんだなあ」
    「なんか全然違う人種を相手にしてる気分だよ。」
     元軍人から届いた手紙の文字は、旧字体と達筆すぎる文字が並んでいて、若い慶子と健太郎には判読が難しいのです。
     この小さなエピソードで戦後六十数年の時の流れを教えてくれます。
     太平洋戦争は、わずか60数年前でもあり、遙か60数年前でもあるのです。
    -◆-
     旧・日本軍上層部の愚かな作戦や軍上層部の官僚的発想の過ちがよく書き込まれているのですが、なかでもゼロ戦の性能に関する次の文章は、今まで思いもしなかったものでした。
     「八時間も飛べる飛行機は素晴らしいものだと思う。しかしそこにはそれを操る搭乗員のことが考えられていない。八時間の間、搭乗員は一瞬も油断出来ない。(中略)いつ敵が襲いかかってくるかも分からない戦場で八時間の飛行は体力の限界を超えている。自分たちは機械じゃない。生身の人間だ。八時間も飛べる飛行機を作った人は、この飛行機に人間が乗ることを想定していたんだろうか」
     人を人として考えていない設計思想には今まで思いが至りませんでした。

     で、昨今の雇用不安。
     ハケン、期間雇用など非正規雇用の労働者を消耗品として扱う今の労働環境って、特攻隊という究極の消耗戦を敢行した日本軍の思想を受け継いでしまっているような・・・。
     政治や経営者の責任だけではなく、我々日本人全体が個人の命や生活を軽く考える国民性を持ってるんでしょうか?
    -◆-
     戦前戦後の新聞社の姿勢について、作者は厳しく断罪しています。

    ※記者の言い分・・・。
    「戦前の過ちを検証し、戦争と軍隊を否定したのです。そして人々の誤った愛国心を正しました。平和のために。」


    ※元軍人が語るメディア論・・・
     「戦前、新聞は大本営発表をそのまま流し、毎日、戦意高揚記事を書きまくった。戦後、日本をアメリカのGHQが支配すると、今度はGHQの命じるままに、民主主義万歳の記事を書きまくり、戦前の日本がいかに愚かな国だったかを書きまくった。まるで国民全体が無知蒙昧だったかという書き方だった。自分こそが正義と信じ、民衆を見下す態度は吐き気がする。」
     今に通ずるジャーナリズムの在り方が問われていると同時に、人が「唯我独尊」「独善」に陥ることをたしなめているような気がします。
    -◆-
     とにかく抜群のリーダビリティと、精密に組み立てられた物語は抜群に上手い。
     同じく海軍を部隊にした奥泉光の『神器 軍艦「橿原」殺人事件』と共に読むのも面白いと思います。

     そして、家族や仲間を思いながら戦争で命を落とした御霊に合掌であります。


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    Last updated  2009.08.08 21:40:33

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