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ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

BHC サイドストーリー 23

(げんじつとうひパラサイトサイド)サケとバラ  ぴかろん

冷たさは時として人を美しく見せる。その言葉どおりのつかみどころのない美しい男は、奇遇なことに、『よく知った顔』をした『よく知らぬ男』と食事をしていた。平素、他のものに興味など持たぬ男が、目の前で元気よく笑い、話し、食する男に対してはそうすることができなかった
自分とは正反対の地点に属するその快活な男に、まさかこれほど心が揺れるなんて…

「美味しそうに食うな」
「はい。美味しいです」
「君の店の従業員たちは、とても健康そうだが」
「健康でなければお客様に満足していただけるサービスは提供できませんから」
「特に若い連中ははきちれんばかりだな」
「…」

快活な男は急に押し黙り、美しい男をまじまじと見つめた

「どうした?」
「貴方って結構お喋りなんですね。クールビューティーは無口なものだと思ってました」

そう言われて初めて、確かに今日は口数が多くなっていると感じる美しい男であった

「君は特に心も体も安定しているように思うが」
「僕達の店の仲間は、それぞれ色んな事情を抱えています。みんな、一生懸命それを乗越えようと頑張っています。僕だって…」
「辛い過去があった?」
「辛い…というと甘ったれるなってお叱りを受けるかもしれませんが、僕なりに悩んだことは沢山あります。みんなそうです」
「君の恋人もかい?」
「…彼は…ええ、僕よりもっと辛かったに違いありません…」
「笑顔が絶えない職場だと思ったが、ふむ」
「…。単細胞ばかりの集まりとでも思われましたか?」
「そんな事は言っていない」
「苦しくても辛くても、希望を持ち続けたい。僕達は…少なくとも僕はそう考えています。明るく楽しく過ごしていれば道は拓けると信じてます」
「いい心構えだ」
「四六時中、苦しいことばかりじゃないでしょ?ほんのちょっとした事であっても楽しいかったり嬉しかったりするでしょ?僕はその瞬間にどっぷり浸ります」
「ほお」
「楽しい、嬉しい、ああ幸せじゃないか僕は…ってそう思います」

幸せそうに笑った快活な男の話しに、美しい男は自覚なく微笑んでいた
新たに運ばれてきた魚料理を、快活な男は一口で全て口中に納め、話しを続ける。美しい男の顔が引き締まった

「待ってくれ」
「なんですか?」

美しい男は目頭を指で押さえ、唾を飲み込んだ

「目眩?」
「いや…」
「お腹すいてるんじゃないですか?さっきから僕ばかり食べてますけど」
「…大丈夫だ…。こんな事は初めてなので少し面食らっただけだ…」
「初めて?商談相手以外との食事が初めてってこと?」
「…そうじゃない…。すまない、食事を続けてくれ」
「はい。貴方は食べないんですか?」
「食べているよ、心配はご無用だ。美味しいか?」
「美味しいです。サーモンですね?」
「ああ」

美しい男は給仕を呼び、快活な男のために早く次の料理を持ってくるよう命じた

「そんなに急がなくても大丈夫ですよ、僕」
「手持ち無沙汰だろう?よく噛んだか?」
「は?」
「料理をよく噛んだか?」
「噛んでますよ、今も」
「今も?」
「はい」

そう言われてよく見れば、快活な男の頬が膨らんでいる。一瞬、美しい男の脳裡に栗鼠が浮かんだ。彼はその映像を振り払い、快活な男に注目した
微笑みながら口を動かしている。咀嚼しているのか?
再び美しい男の脳裡に栗鼠が浮かぶ。それも二匹。彼は頭を左右に振り、深呼吸した

「話から察するに、君のモットーは『常に明るく』なのかな?」
「そうありたいと願ってます」

頬を膨らませたままハッキリとした口調で話す快活な男に、美しい男は驚いた

「お待たせいたしました」

新たに運ばれてきた肉料理を見て、快活な男は、うまそうだなぁと呟く。頬の膨らみがいつの間にか消え失せている
今度の料理は七つほどに切り分けられている。一口では無理だろう。美しい男は漸く自分の前にある料理に手をつけた

「お箸ならなぁ…」

快活な男の小さな声が聞こえ、美しい男は顔を上げた。快活な男は、フォークで肉を突くと、目にもとまらぬスピードでそれを口に運んだ
あまりに早すぎて肉片を確認できない。快活な男は手を止めず、次々と肉を口に運ぶ。二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ…
美しい男は度肝を抜かれ、普段決して見せはしない『呆気にとられる』という顔をした
全ての肉片が口中に納められたというのに、どうして涼しい顔で微笑んでいるのか?
美しい男の脳裡に掃除機が浮かんだ。彼は目を固く閉じてその映像を振り払った

「…聞き捨てならないことを言ったな?」
「なんですか?」

もぐもぐと口を動かしながらハッキリ喋る快活な男に、栗鼠と掃除機の映像が被る。美しい男は軽く頭を振って話しを続けた

「箸ならどうだと言うのだ?」
「え?ああ、お箸ならもっと早く食えるのになぁって思ってつい…」
「もっと…早くだって?」
「はい」
「どうしてゆっくり食べないんだ?料理は逃げないぞ」
「…すみません、ついクセが出ちゃって…。美味しいものだとパクパク食べちゃうんです、僕…。キムパプならもっと早いしそれに…」
「それに?」
「あ…や…。やめときます…」
「気になるじゃないか、途中まで言っておいて、卑怯だぞ」
「卑怯?」
「キムパプならもっと早く食べられると?」
「食べるっていうか、口の中に納められる」
「それは見ていてよくわかる。それに…それになんだ?」
「あんまりやんないけど、キムパプ六つぐらいまとめてパクっといけます」
「六つ?」
「縦にこう、並べておいて、パクッと…」
「な…なんだって?」

美しい男の脳裡には、高性能サイクロン掃除機の映像が音声入りで流れた

「信じられない。そんな事、できる人間がこの世にいるのか?」
「かっこ悪いとか言ってやんないけど、ウチの店の従業員、BHC顔の連中は全員できますよ」
「な…なんだって?」
「貴方の従兄弟のラブも」
「…あのこが?」
「はい」
「嘘だ。信じない。ハッタリだろう?」
「嘘じゃありません。キムパプがあれば貴方に見せてあげるのに」

掃除機と栗鼠と笑顔。その口の不思議。仕事一途に生きてきた美しい男は突如沸き起こった好奇心に戸惑った
くだらぬ事だ、なんのメリットがある?
幾度も唾を飲み込み、美しい男は自身を叱咤した
早くこの場を切り上げよう、そうすればこのおかしな気持ちをシャットアウトできる
美しい男はもう一度深呼吸をした

「お下げいたします」
「キムパプを」
「は?」
「キムパプを1本、彼に…」
「キムパプ…でございますか?」
「無いなら取り寄せろ」
「…は…畏まりました」

はあ…と大きなため息をつき、美しい男は天を見上げた。何という事だ、ブレーキが効かない
ちょうど快活な男の皿を下げに来た給仕に自ら無理な注文をしてしまった。まさかこの自分が、目の前の平凡な男にこれ程までに動揺させられるとは…
にっこり微笑んだ快活な男は、既に肉料理を胃の中に落としたようだ
美しい男は、はあ…と再びため息をつきグラスワインを一息で飲み干した

「参ったな…こんな事は初めてだ。この僕が…」
「苦しそうですね。どうして?」
「いつもならスルーだ」
「なにが?」
「君はとても興味深い人だね」
「そうですか?」
「この僕が…。ふう。抑えられないなんて…」

「お待たせいたしました、キムパプでございます」

切りわけられたキムパプの皿が快活な男の前に置かれる

「わ。美味しそう」
「証明してくれ」
「はい」

慣れた手つきでそののり巻きを真っ直ぐに並べる快活な男を見ながら、なぜこんなにも胸が高まるのか、美しい男は不思議に思った

「いっただっきまぁっす」

両手でキムパプの端と端を押さえながら持ち上げた快活な男は、あーんと口を開けた。
するすると飲み込むようにキムパプを滑り込ませていく。まるで手品のようにキムパプは男の口の中に納まった
驚愕の表情でその様子を見つめていた美しい男は、微笑みかける快活な男に握手を求めた

「…素晴らしい…」

プライベートでは寡黙と言われている美しい男のその一言は、最上級の誉め言葉である。握手に応えた快活な男は、暫しキムパプと格闘し飲み下したのちにこう言った

「これの時は流石に話しができなくて」
「そうか」

二人同時に安堵の笑みを浮かべた

「いい食べっぷりだな。デザートは何がいい?」
「どーなつ」
「どーなつ?」
「はい。大好物です!」
「また一口でいくのか?」
「はい!」
「気持ちがいいな。ははは」
「あ。笑った」

美しい男と快活な男は、声を立てて笑った。その様子を、奥の席から、じとりとした視線が捉えていることなど、二人は知る由もなかった

「さあ、お望みのドーナツだ」
「うわ。美味しそう♪いただきまぁっす」

快活な男は、大きめのドーナツを手に取りあんぐりと口をあけ、至福の時を迎えんとしていた。背後から粘ついた低音が響くまでは…

「失礼」

快活な男の微笑が凍りつき、大口は徐々に小さく閉じられていった

「置いて」
「…え…いやだ…」
「置きなさい」

静かだが威厳のある低音で、快活な男に命じる男。快活な男からは明るさも元気よさも笑顔も消え失せ、手にしていたドーナツは力なく皿に戻された

「行こう」
「失礼だが…」

美しい男は威厳のある男に声をかける

「見ての通り僕達は食事中だ。貴方に邪魔される筋合いはない。君、ドーナツを食べなさい」
「貴方は」
「貴方に僕達の食事を邪魔されるのは不愉快だ」
「彼と貴方がどういうわけで食事をすることになったのか、その経緯は存じません。しかし、彼は食べるべきではないのです」
「彼がはちきれんばかりの肉体をしているから?若者は貴方のようなご老体と違って新陳代謝が活発です。少々食べ過ぎてもすぐ消費しますよ」
「少々なら構いません、しかし彼は」
「とにかく、僕は食事を邪魔されるのは嫌いだ。お引取りください」
「ご存知ないからだ…」
「なにを?」
「直前まで、彼は僕と食事をしていました。それもかなりの量の…」
「…」
「彼は食べ物を粗末にしません。出された物は全て平らげます。この短い時間でもお解りいただけたかと存じますが、彼は人を和ませ、元気づける男です。老若男女、誰からも愛される人間です」
「ああ…わかるよ」
「それゆえ、彼はどこででも過剰にもてなされるのです」
「…」
「先程申しましたが、彼は絶対に食べ物を残しません。ここへ来る直前まで、僕と食事をしていました。出された物を全て、全てですよ、平らげたのです。なのにその上このような…」
「…せんせ、ここは高級なトコだから、美味しいモノがチョコっとしかでてこないんだよ。だから全然大丈夫…」
「魚と肉については僕も目を瞑った。しかしキムパプの1本食いには黙っていられない。ましてやドーナツなんて…」
「…でも、デザート食べてないもん…」
「だめ!それ以上食べたら僕はもう知らない。僕が入院するハメになっても構わないんだね?!」
「…。待ってください。なぜ彼でなく貴方が入院することになるのですか?」
「今でさえ悲鳴を上げているのに…これ以上重くなったら、僕は…支えきれない」
「悲鳴?」
「…わかったよセンセ…我慢する…。だから、外で待ってて。僕、彼にお礼を言ってから行くから…」

威厳のある男は静かに店から出て行った。快活な男は漸く笑顔を取り戻して美しい男に言った

「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです。ありがとう」
「…いや…こちらも楽しませてもらったよ。ありがとう」
「それじゃ失礼します」
「待って」
「はい?」

立ち上がりかけた快活な男を引きとめ、美しい男は皿に置かれたドーナツをナプキンにくるんだ。それから自分のハンカチを取り出し、こどもにお八つをやるように包んだ。ハンカチの端を結びながら、美しい男はくすくすと笑っている。こどもみたいだ、彼ではなくて自分が…。こんな事が楽しいなんて…
快活な男は、美しい男の長い指を見つめながら、彼の心の呟きを聞いたような気がした

「どうぞ。持って行きなさい」
「…え…」
「好きなんだろ?」
「え…ええ。はい…好きです」

美しい男は優しく微笑んで快活な男を送り出す。同時に給仕を呼んで会計をし、店の前に車を回すよう頼んだ。半時間もすれば会議が始まる。会社に戻らなければならない
商談相手との食事がキャンセルになり、通りかかった『見慣れた顔』を誘った。車に乗り込み、着いたら起こしてくれと声をかけ、美しい男は目を閉じた
居心地のよい職場らしい。従兄弟坊主が居座るわけだ…。そしてあの真っ直ぐな男が離れられないわけだ…

真昼の夢…
美しい男は心地よい眠りに落ちた



「だから…サーモンとお肉だよ、食べたのは…」
「何の肉?」
「豚肉。バラ肉の煮込みみたいなの。口の中で蕩けてくの」
「夜ご飯、抜きね」
「ええん、そんなぁ…(;_;)」

サケとバラ…鮭とバラ肉…ああ…おおお…


(サイド)解読 あしさん

「くしゃんっ」
「どうした、風邪か」
「ドンジュンは鼻炎なんだ」
「スヒョンさん、あなたに聞いていない」
「こいつのことなら全て答えますよ」
「あなたに聞いていないと言ったんだが?」
「この時期はいつもこうなんです」
「俺の言葉が聞こえなかったのか?」

「あいへんはしへうのはっ」
「何だって?」
「何ケンカしてるのさ、ですよ、ウソクさん」
「俺はドンジュン君に聞いてるんだ」
「ああ、そうでしたね、ではどうぞ」

「へっくしょんっっ」
「…」
「今のはわかりましたか?ウソクさん」
「へっくしょんに、意味でもあるって言うのか」
「あるんですよ」
「…」
「どうです?」
「あ、あるのか?」
「ええ」
「聞かしてもらおう」
「あいつに聞いてみたらどうです?」
「いいだろう、どういう意味だドンジュン君」

「ぶっへーっくしゃいっっ」
「なるほど、そういうことか」
「おわかりになったんですか?」
「ああ、俺としたことがとんだ失態だった」
「ほう」
「まぁ、あの時のことだろうな」
「…」
「どうかしたのかな?」
「あの時?」
「ああ、スヒョンさんには関係のないことだ」
「関係ないとはどういうことです」
「おや、何でもおわかりになるんじゃないんですか?」
「もちろんです」

「びゃひゃっくひゃいいいいっっ」
「「 これはどうですっ? 」」

「うるはいっっ!へっひゅもっへほいいいーっっ」

「「 あ、ティッシュね、はい 」」 コソコソ…

「ったく…あいつら遊びやがってよ(  ̄場@場@ ̄ )ズルル」


(サイド)フェルデ通信  あしばんさん

「ボスさま、本年もよろしくお願い申し上げます」
「おう、テンドン担当かい、まぁ今年も報告頼むわ」
「早速ご報告させていただきます」
「あうっ、フェルデしゃん、あけおめでございましゅ」
「これはこれはミソさま、お元気ですか?」
「あい、フェルデしゃんも風邪ひいてましぇんか?」
「はい、私は…」
「おい、挨拶はもうええ、フェルデ、何の報告や」
「お題は、初春の天使さまとドンさまにございます」
「何やヤらしい響きやな、どや、ふたりの調子は」
「ご調子は…」
「いろいろあって、年始早々つめたーいムードが漂ってんのとちゃうか?」
「いえ…そのようなことは」
「今何しとんのや」
「はい、ベッドの上でございます」
「おおおっっ、いきなりそう来たんかい、ええぞ」
「ドンさまは ”もういい加減に動かせヨ、じじいっ”と仰ってます」
「お…」
「天使さまは ”3戦目だからね、じっくり行きたいんだ”と」
「ゴク…」
「ドンさまが ”降参って言ったら許してあげてもいいけど”」
「…」
「ボス、よだれが出てましゅよ」
「あ、天使さまがようやく動かれました」
「お…おう」
「ドンさまが ”ああっそんなのってずるい!僕初心者なのに!”と叫ばれました」
「ボス、よだれが」
「ミソ黙っとけ!フェルデ!はよ続けんかいっ」
「は、はい、ええ…ドンさまが…あっ…」
「どないした!」
「バラバラに…」
「バッ…バラバラかいっ、どないなバラバラや!詳しく解説せい!」
「ドンさまがご自分の髪をかきむしって」
「おうっ!」
「駒を全部散らしておしまいになりました」
「こ…駒?」
「天使さまが ムッとされて ”それはないんじゃない?」と」
「…」
「ドンさまが ”だってそんな手知らないもん、ずるいもん”とふくれられて」
「おい」
「天使さまが ”勝負に手加減は不要だろ”と」
「おい!」
「はい、ボスさま」
「やめんかい」
「もうよろしいので?」
「何やっとんのや」
「は?」
「テン、ドンは、今、ベッドの上で、何を、やっとんのや」
「将棋にございます」
「…」
「天使さまの手ほどきで本日はずっと…」
「わかった」
「もう、よろしゅうございますか?」
「ああ…ようわかった」
「年頭よりお役に立てましたでしょうか」
「ああ、充分や」
「ホッといたしました」
「まぁ…今年も頼むわ」
「はい、天使さまドンさまのことはお任せ下さいませ」
「ふう…」
「ボスさま、お疲れですか?」
「フ、フェルデしゃん、ボスは大丈夫でしゅ、ちょっと力入り過ぎただけでしゅよ」
「さようですか、どうぞご自愛下さいませ」
「おう」
「で、では、フェルデしゃん、またでしゅー」

「ボス、大丈夫でしゅか」
「次回から、ヤツの報告はまずお前が聞け」
「あい」
「ふう」
「あ…おせちの残り食べましゅか?」
「いらんわ」


(サイド)ミソチョルの挑戦  ぴかろん

『ねえねえねえ。あいたんだけどぉ~』
「あい。お久しぶりでしゅ」
『あれ?ボスは?いないの?口うるさいボス』
「ちっとショヨウでセキをハズしゅと…」
『チットショーで咳をハクション…。そう…風邪だね。ジジイなんだから大事にしてねって言っといて』
「あいたん、本とは優しいんでしゅなぁ」
『まあね。トッショリは大事にしないと。後々うるさいじゃん?こう見えてもあいたんってトッショリコロガシ、上手なんだよ、うふっ』
「え?図書理工画市場図でしゅか?…。あいたん。むじゅかしい言葉でしゅ」
『トッショリ孝行ってこと』
「図書理工高でしゅか!なるほど!あいたんからそんな言葉を聞くとは思いましぇんでした。あいたんは中々勉強家なんでしゅね、ミソ、あいたんを見直しましたでしゅ」
『そ?基本だよ、基本。ところでさ、ウチのラブたんなんだけどぉ~』
「あいっ!何か喜ばしい報告でもごじゃいましたか?」
『んとね、このところとっても穏やか~な顔してるの、幸せ~ってカ~ンジィ。ボスがほしがってる様なネタはないよ』
「穏やかで幸せって漢字を坊主が干し柿にするような妬みはない…。あいたん、ちっと哲学的でしゅね、さすが図書でしゅ。でもどういう意味でしゅか?」
『だからぁ~、相変わらずエロミンはエロくなくてぇ、だけどラブたんはそれでも満足らしくってぇ、なんて言うかぁ、ココロとココロが繋がってるからとぉっても幸せってカンジぃ?』
「愛は変わらず、えろみんはえろでなく、それでも裸豚は豚足らしくて、コロコロ転がってるから通ってもしわ寄せという漢字…。段々お話が難しくなってきてましゅ…。あいたん、いつの間に哲学や理科や漢字のお勉強をしたのでしゅか?」
『ハナシ、難しい?そぉお?あいたん、勉強家?うふっ。ウレシ~。あいたん、そんなにお勉強してないよ。ただぁ、感性っての?感受性っての?どっちかな、どっちもかしらん、うふっ。それがぁ、鋭いっつーかぁ』
「ただ阿寒製だの甘受せいだのどっち仮名、どっち鴨菓子欄、それが明日ルドイッツーカーさんでしゅね?…ふむ。…。あいたん、もしかして、ドイツ語を混ぜて喋ってましゅか?ミソはチンプンカンプンでしゅ…」
『鹿をドツいて混ぜてしゃぶる?味噌入れてチンプンカン鍋?そんな料理あるの?』
「料理?料理の名前なんでしゅね?ああ、それで甘味とか鴨とか菓子とか…。あ!わかったでしゅ!ルドイッツーカーっていうのは調味料でしゅね?!」
『鋭いつかみ?チョウ・ミリョウ?誰よそれ。漫才師?』
「は?何の話でしゅか?」
『わけわかんない!何言ってるのさ!ミソチョルさんったらちーっとも話が通じない!ダメだね、チェンジしてよ!』
「ちぇじう?」
『ちがーう!ボスに代わってよ!話になんない!ボス、ホントにいないの?!』
「…ミソは、そんなにダメでしゅか?」
『ダメ。使えないもん』
「つっかえ棒になりましぇんか?ボス、いないんでしゅけろ…(;_;)」
『あーもー、泣かないでよ、あいたんはトッショリの涙に弱いんだからさ』
「ミソはトッショリーノではありません、ミソチョル・ミソチョノーレでしゅ!」
『あっそ。まぁいいや、とにかく、ボスに伝言お願い』
「ぐしゅん。わかりました。何を伝言しゅるでしゅか?」
『後で通信するっちっといて。じゃね』☆
「あ!切られたでしゅ…(;_;) えと…後でツーシ・スルチットーテ・ジャネ…と…。…イタリア料理の名前らしいでしゅね。ということは…。ふむ。ボスにイタリア料理を奢れっちってるでしゅね?なんて厚かましい!ぶいっ」
「…。やっぱりもうええ」
「ボス」
「報告は俺が受ける」
「でもボス、あいたんとフェルデ爺からの報告はミソ担当だって決めたでしゅ!」
「…。ふぅ」
「ちゃんと伝言承りましゅ!」
「…こないだからな」
「あい!」
「『RRH日誌』を読んでたんや」
「…そんなものがあったでしゅか?」
「おう。あったんや。ここの住人が殴り書きしてるんや。『ミソチョルに伝言はまかせられねぇ:イナ』と書いてある」
「なんでしゅと?!イナしゃん、裏切り者でしゅっ!」
「お前、昔、正統派からの電話の内容を自分なりに解釈して五歳児に伝えたらしいな」
「あ…はい…しょうれした…。はっ!そう言えばミンチョルさんに『ミソチョルは事務能力に長けてない』っちわれました…」
「…ふぅ。すまんだな。ムリなこと頼んだわ。通信は全て俺が受けるから、お前は今までどおり、俺の横でツッコミ入れてくれたらええわ」
「…」
「ミソ?怒ったんか?」
「いえ、五歳児の裏切りに傷ついただけでしゅ…」
「裏切り?」
「ミソの悪口を書いていたなんて(;_;)」
「悪口?事実やがな。ほかんとこには『ミソチョルは可愛い』ってあったで」
「誰が書いたでしゅか?!」
「天使と色気小僧とエロミンの名前が書いてあった」
「きちゅねとごさいじは?!」
「『可愛い』とは書いてなかった」
「うらぎりもにょ!(;_;)」
「でも『宝物』って書いてあった」
「…」
「大事にしてもうてんねんで、お前。…ボケとるけど…」
「…」
「ミソ?どうしたんや?」
「あうあう。大好きでしゅっ!きちゅね~、ごしゃいじぃ~(;_;)だいしゅきでしゅうぅぅあうあうえうえう」
「あ~うるさい。泣くな!騒ぐな!」
「あうえうおう~」

ぬいぐるみ騒動であった…




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