カテゴリ:父の日記
先週の日曜日、またも母と愛犬2匹を連れて彦根を訪れた。
今年の4月に彦根城へ花見に行って以来、威厳ある天守閣にお濠の趣きといい、城下町の雰囲気といい、私も母も彦根をすっかり気に入ってしまったのだった。 また、彦根といえば江戸時代、城主の井伊氏は茶の湯にも長けており、なので美味しい菓舗が沢山あるのも嬉しいところ。 とりわけ私たちの好みと合ったのが老舗の「いと重」である。 その代表銘菓である「埋れ木」は高松三越にも入っているのだが、私が行くときはいつも売り切れで悔しい思いをしていた。 今回、その「いと重」での買い物も楽しみの一つにあった。 彦根城外濠に面した「たねや」に多くの人が流れる中、少し奥まったところにひっそりとその本店はある。 「埋れ木」は一番に頼んだ。 「道芝」と「あわの海」はお盆のお供えにと取り寄せし、すでに頂戴していたので別のものをと店内を見回した。 目に留まったのは美しい生菓子。 銀杏などの秋らしい造形美の生菓子の中で、秋桜のピンク色が可愛いと思った。 そして、その愛らしい秋桜を眺めていたら、父が生前よく聞かせてくれた京城(現ソウル市)の想い出が脳裏に浮かんだ。 京城生まれで、終戦間近までそこで暮らした父の子供時代、この季節は家の裏の空き地は一面秋桜で埋め尽くされていたそうだ。 その美しい情景は侘しさと相俟って、幼かった父の心の奥深くに焼きつけられたのだろう。 秋桜を見ると京城を思い出す、毎年秋になるとそう言っていた。 この和菓子を父の仏前に供えよう、そう思いついた。 「父さん、今年も秋がやって来たよ。」 お鈴を2回鳴らし、想像でしかない父の故郷を偲びつつ手を合わせた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.05.12 21:47:24
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