カテゴリ:読書
今月頭に京都を訪れた。
職場の元施設長との日帰り二人旅。 その折、彼女からこんなことを教わった。 「朝起きて、一日一回身支度をきちんと整えて外出する、 一日十回は笑う、 一日百文字を書く、 一日千文字を読む、 そして一日一万歩歩くといいようですよ」 日ごろスマホやパソコンに触れるようになって全く文字を書かなくなったことを改めて反省した。 書かないと書けなくなる。 そこで、本を読むときに曖昧に理解している言葉をノートに書きだし、きちんと確認した意味を書き留めることにした。 書かないといい加減に解釈している単語のいかに多いことか。 今、私は八年ほど前に出版され話題となった時代小説「みおつくし料理帖シリーズ(髙田郁著)」を読んでいる。 この5月に黒木華さん主演でドラマ化されるのを知りやっと手にした次第。 今月10日過ぎから読み始めたのだが、面白くて次から次へと手が伸びる。 全十巻あり、残りは一冊、十巻目のみとなった。 料理帖シリーズであるからそこに描かれる料理の品々も心惹かれるし、髙田さんの柔らかく豊かな表現からも学ぶことが多い。 このシリーズを読んでいると、毎日感謝して頑張ろうと思えてくる。 さて、その中で「生麩」が登場する話がある。 京坂では馴染み深いのに江戸では見かけない食材、生麩とは文字通り乾いていない生の麩。 「串に刺して、味噌をつけて炙った生麩田楽ほど美味しいものはないですよ。豆腐と違ってもちもちしていて、炙ると焦げ目が」 思わず涎が出そうになって、澪は慌てて口を押えた。 ちょうど先日、京都は美濃吉本店・竹茂楼で昼食をとった際、口に入れた途端に思わず唸ってしまった一品がその生麩田楽だったことを思い出した。 私が初めて生麩を食べたのは、確か四国霊場第87番札所長尾寺で戴いた菜懐石だったと記憶している。 その時も麩のイメージを180°変えたその味と舌ざわりに驚いたのだが、さすがは美濃吉、今思い出しても感動が胸に広がる。 主人公である澪が自分の進むべき料理人としての道、それがはっきり見えたところで九巻目が終わった。 『食は、人の天なり』 食は命を繋ぐ最も大切なものだ。ならば料理人として、食べるひとを健やかにする料理をこそ作り続けたい。 澪は潤み始めた瞳を凝らして自身の手を見つめる。 叶うことなら、この手で食べるひとの心も身体も健やかにする料理をこそ、作り続けたい。 この命のある限り。そう、道はひとつきりだ。 「食は、人の天なり……」 作り手はその一心で料理する。 一心で無心。 だからいつまでも感動が残るのか。 いい本に出合った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.03.30 21:54:32
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