934448 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

I love Salzburg

I love Salzburg

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2017.07.05
XML
カテゴリ:展覧会
大阪へ行くのなら京都にも足を延ばそう。

毎年世界で一ヶ所しか開催されないフランスのハイジュエラー・ヴァンクリーフ&アーペルと、日本工芸とがコラボした展覧会が京都であると知り、そう決めた。

もともとジュエリーには全く興味のなかった私だが、7年前にモスクワのクレムリンで迷い込んだダイヤモンド庫との出会いが私を変えた。
「本物」と呼ばれるものの圧倒的存在感は、人をも狂わすに値するだけのことはある。





1200年以上昔から都として栄えた京都には、衣食住に関連する最高級なものが生み出されてきました。
十二単や小袖、辻が花、能衣装など金襴を惜しげなく使った装束は、現在の西陣のような織ものから染ものまで技術の粋が詰まった地域で、熟練した職人の技と心意気により作られました。

フランスを代表するハイジュエリーメゾンのヴァンクリーフ&アーペルも同様に、熟練した職人が一子相伝のように技を伝えています。

本店では「技を極める」をテーマに、ヴァンクリーフ&アーペルの秀逸な作品が伝える「技」と、長い歴史の中で生まれた七宝や陶芸、漆芸、金工などの日本工芸の「技」の対比や結びつきを紹介します。
フランスと日本の技の競演をお楽しみください。
(リーフレットより)


私が最も見たかったのが、「ミステリーセッティング」という宝飾技法だった。

それは偶然テレビで見て知ったのだが、宝石を支える爪を表から見せない特別な技法で、格子状に作られた石座へ一つずつ石を置いていき、隣接する石がぴったりと合うようにカットして、パビリオン上にレーザーで溝を彫り格子状の枠へはめていくというヴァンクリーフ&アーペル独自のものである。
特にルビーとの相性がよく、思わずため息が出てしまう。
釘付けになった目の中でもキラキラと煌めきを放っていたに違いない。

もちろん、カッティングの素晴らしさだけでなく宝石の大きさや光具合にも心を奪われた。
とりわけバードクリップにつけられた大きな一粒のイエローダイヤモンドからはしばらく目が離せないほどだった。
小さなペンダントに輝くそのダイヤの大きさは、なんと96.62カラット。
はああああ、といった感じである。

そして数多く見ているうちに、本物と呼ばれるものほど光の放ち方が上品で、色合いも控えめだという印象を持つようになった。
控えめというより奥行きのある煌めきといった方がより近い表現かもしれない。
だから余計に石の世界に引き込まれてしまうのだろう。

多くの宝石に吸い込まれ心惑わされそうになりながら、だが、ふと心癒されていく自分に気付く。
手が届かない宝石の中にあって、段々と心が開放されていく感覚はフシギだった。

「本物」なんだと思った。

その「本物」を作り上げていく過程を、展覧会では工程ごとに映像で見ることができる。
驚くべきことは、そのすべてが今も手作業であること。
これだけコンピュータが浸透している現在において、デザインもすべて人の手で描かれているのだ。
細かい作業を一つ一つ見つめていると、そのすべてが愛おしくなってくる。
心が開放される、心が癒される、その理由がその時ほんの少し理解できたような気がした。


と、ヴァンクリーフ&アーペルのことばかり書いてしまったが、日本工芸も負けてはいない。
私が好きな並河靖之氏の七宝焼に、信じられないほど細かく見事な孔雀図屏風など、技を極めるということにかけて決してヴァンクリーフ&アーペルに引けを取らない作品たちがずらっと並んでいる。
ただ、今回の私はヴァンクリーフ&アーペルの煌めきに夢中になってしまっただけ。
それは自分でも愉快なほどヒカリモノに魅かれていったのだった。




私は現実に戻るため、美術館のカフェで少し早めのランチをとる。
ぼおおっと冷めやらぬ余韻にテラス席で浸っていると、一匹のスズメが私のパンを盗んでいった。
ダイヤやエメラルドはやれないが、パンならどうぞといった感じ。笑




この展覧会は京都国立近代美術館にて8月6日まで。
一見の価値ありと自信をもって伝えられる。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.07.10 06:17:21
[展覧会] カテゴリの最新記事


PR

Category

カテゴリ未分類

(228)

父の日記

(10)

愛犬たちの記録

(66)

旅行記 クライストチャーチ '18.09月

(0)

旅行記 グアテマラ&ベリーズ '18.7月

(7)

旅行記 欧州6ヶ国 '13.3月

(67)

旅行記 中欧8ヶ国 '12.9月

(118)

旅行記 アウグス2&ミュンヘン '12.5月

(11)

旅行記 ドブロヴニク&モスタル '11.12月

(32)

旅行記 ザルツブルク4 '11.10月

(19)

旅行記 メキシコ '10.12月

(25)

旅行記 モスクワ '10.5月

(32)

旅行記 ブダペスト '09.12月

(23)

旅行記 ザルツ3&アウグスブルク '08.12月

(38)

旅行記 韓国2 '08.5月

(19)

旅行記 ザルツブルク2 '07.12月

(15)

旅行記 ザルツブルク '07.7月

(10)

旅行記 スイス&リヒテン公国 '06.12月

(7)

旅行記 イタリア&バチカン市国 '05.12月

(4)

旅行記 バンコク&アユタヤ '05.3月

(1)

旅行記 オランダ&ベルギー '04.12月

(3)

旅行記 韓国 '04.6月

(1)

旅行記 ウィーン '03.12月

(5)

旅行記 ニューヨーク '03.2月

(3)

旅行記 ペルー '02.3月

(10)

旅行記 オーストラリア '02.2月

(6)

旅行記 クックアイランド '01.10月

(1)

旅行記 NZ '01.7月~'02.3月

(15)

旅行記 北京 '00.10月

(1)

旅行記 モンゴル '00.6月

(5)

旅行記 カンボジア '00.3月

(4)

旅行記 パリ '00.1月

(5)

旅行記 台北 '99.9月

(1)

滞在記 クライストチャーチ '01.7月~3月

(26)

クライストチャーチ

(10)

日本の旅

(108)

四国へようこそ

(117)

お遍路さん

(25)

城跡めぐり

(3)

観劇・ライヴ

(36)

展覧会

(57)

映画・DVD

(41)

音楽

(34)

読書

(30)

コラム

(36)

お友達

(42)

Freepage List


© Rakuten Group, Inc.