ぴっこらイタリア

2006/10/31(火)23:27

ステファノのこと。

ご近所物語(99)

先週土曜日はおっとの新しく雇った従業員、ステファノの家に行って来た。 わたしはそれまでステファノは彼がおっとの横で配達の予行演習をしているときに一回しか見たことがない。 なので印象的には おっとの貸した制服があんまり似合ってないな、というかサイズが合ってないな、とか いきがっておっとから覚えたばかりのスペイン語のスラングを連発してるけど、地についてないな、とか そんな細い身体で大きな荷物、大丈夫?とか なんか、その程度だった。 話は戻して、彼のワゴン車はガソリンを満タンにして1週間持つ。 なので寂しがりやのおっとはすっかり懇意になった我が家の近所のガソリンスタンドに「週一回一緒に給油をしにいこう!」と誘っていたのだが、ステファノは「え~、うん。。」と生返事。 それもそうだ。そこは彼の家からも、彼が配属になったミラノ市の北部からも遠い。 で、彼なりに自分んちの近所に安いガソリンスタンドを見つけたので、そこを下見に行くことになったのだ。 普通、そんな用事でおっとが出かけるときはおもしろくないのでついていかないのだが、今回は違った。 覚えておいでの方もいらっしゃるだろうが、彼は元ピアニストだ。 元ピアニストがなんでこんなにうさんくさいエクアドル人の従業員になったのか、謎を解き明かしたかったし、彼の家族を見たかったし、彼がどんな家に住んでるか興味があったし。。。 というわけでお供した。 彼の家はミラノ郊外で我が家と同じミラノ北部でも、我が家のように北東に上がるのではなく、北部まっすぐのところにある。そこは家具で有名な街が近くにあることもあって、そこそこ拓けていて、きれいなアパートが立ち並んでいる。 ステファノの家はそんなきれいなアパートの中のレンガ作りのシックなアパートだった。 インターフォンを鳴らすとステファノが出てきた。 彼は黒いぴったりしたGパン、黒いとっくりのセーターに黒い皮ジャンをさりげなくはおり、いきに帽子を被っている。 それにひきかえおっとは、昨日パジャマ代わりに着て寝たTシャツそのまんまの上によれよれのフリースのジャケットを着て、ジッパーを開けているので、だらしなく出てきたビール腹が丸見えである。お供したわたしもどうせガソリンスタンドだし。。と適当な姿だ。(←似たもの夫婦?涙) 彼、とてもこんなにうさんくさいエクアドル人の従業員に似合わない。。。_| ̄|○ わたしは更にステファノに対する謎を深めながら、家には入らずすぐに彼の運転でガソリンスタンドへと出かけたのだった。 そのガソリンスタンドはひなびていて、油で真っ黒のこわそうなおっちゃんが事務所とは名だけのプレハブ小屋のなかからノシノシ出てきた。 おっちゃん「おう、待ってたぜ。」と低いガラガラ声もその容姿からはずれない。 ここでも浮くステファノとぴったり馴染むおっと。 こ、こわいよ。。。わたしはすっかり引いて、30mほど離れたところまで行ってじーっと様子を伺っていた。 しかしどうやらすでにステファノとは話がしてあったようで(想像がつきにくい)あっという間に契約が済み、ステファノは慣れた手つきで給油し、わたしはおっちゃんの顔をちらりと見てワゴン車に飛び乗り、彼の家へと戻ったのである。 ステファノ「ちょっとうちに寄っててよ。ピアノを弾くから。」 ええ!いいのっ?(待ってました。) 門を開け、2階のステファノの家のドアへ上がっていく階段は、ガラス張りでモダン。(一度おっとと一緒に来た酔っ払いガットはガラスが見えずに体当たりしたらしい) ドアを開けると壁にはジャズのポスター、彼の小さな息子の写真、古い楽譜などが壁いっぱい張られたリビング。 家は広くて、3人家族にちょうどいい大きさだ。 息子と奥さんは出かけてるのか。 ステファノ「散らかってるから、流しは見ないで。ビールぐらいしか飲むものがないんだけど。。。」 言葉とは裏腹にきちんと整理されたキッチンに通されて、ステファノはシャンパングラスに慣れない手つきでビールをそそぐ。 おっと「そうそう、この家、庭付きなんだよ。」と勝手にベランダの扉を開けると小さな草ぼうぼうの庭が広がった。 わたし「。。。ああ、素敵な空間だね。花とか植えたらもっと素敵になりそう。」と枯れた植木をみやる。 ステファノ「庭にかまう趣味はあんまりないから。。」 奥さんも共働きなのかな?でも庭があるのにもったいないな。 ステファノ「ピアノは寝室にあるんだ。おいでよ。」 どこの家でもそうだが、夫婦の寝室に入るのはやっぱりちょっとためらう。いいのかな。。と思いながら寝室に入るとダブルベッドがあって、古い木製のピアノと小さな洋服ダンスが1つあるだけのガランとした部屋だった。 ふう~ん。。。 こんな小さな洋服ダンスに3人分の衣服が入るってすごいな。息子はどこで寝てるんだろ。。。? ステファノはピアノの前に座って、古い楽譜を広げ、ショパンを弾き始めた。 確かに上手だけど、ところどころでつっかえている。「もう2週間弾いてないからね。」と彼ははにかんだ。 ふう~ん。。。? ステファノ「もっと違うの弾くよ。」とジャズを弾き始めた。 ジャズは楽譜を見なくてもつっかえることなく楽しげに弾いている。そうかそうか、彼はこっち専門だったのだな。 ジャズを弾くステファノは生き生きしていた。 弾き終わると、わたしたちは惜しみなく拍手をし、わたしは「こんなに上手ならピアノ教えたらいいのに。」という。 ステファノは「教えてたんだけどね。。ぼくには向かないみたい。」と暗い顔をしたので、何かあったのか?と慌てて口をつぐんだ。 ステファノ「今日はね、夕方友人たちと持ち寄りパーティをするんだ。ぼくはズッキーニの詰め物を作っていくんだよ。」 わたし「へえ、楽しそう!」 ステファノ「じゃあ、次回はぼくたちで企画しようよ。君は日本料理、マルちゃんがエクアドル料理を作ってきたら、かなりインターナショナルになって楽しいぞ。」 そうだね。 わたしはチラリ、と目目さんの顔が浮かんだ。 じゃあ次回はうちでやって韓国人の目目さんやブラジル人のエルトンを誘ったらもっと楽しいかも!? 壁のステファノの息子の写真を見たら、目目娘ちゃんと同い年の5歳ぐらいだし、家族で来て貰ったら、にぎやかで楽しいかな? わたし「ねえ、息子はいまいくつなの?」 ステファノ「11歳だよ。」 え?大きいな。 ステファノは「ぼくたち結婚してすぐ子供を作ったんだ。そのほうが子供のためだと思って。でも、ぼくと奥さんのためにはならなかった。。。」と意味ありげな目でわたしをジーっと見た。 ????? わたしたちは家を出た。 クルマに乗り込んでおっとに「ねえ、ステファノの奥さんと子供って。。。」 おっと「離婚したよ。言わなかったっけ?ちょっと前に。」 ああやっぱり!どうりで奥さんの写真が1枚もなかったわけだ。 だからかな? わたしは想像力を働かせた。 プロのピアニストを目指すステファノはほそぼそとピアノの教師をして収入を得ていた。 しかし、プロとしてはなかなか成功できない。 そこをもってきて、奥さんと食べ盛りの息子を養っていくには苦しい。 やがてそんなダメなおっとに奥さんは愛想をつかせて出て行ってしまった。 悲嘆にくれるステファノ。酒にしばらく溺れているうちに、ピアノの教師までクビになってしまう。 OOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHH、NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!! もうオレはピアノにたずさわる資格なんてないんだ! というわけでプライドを捨て、どんなバイトでも渡り歩いているうちに、うさんくさいエクアドル人と出会ってしまったのだった。 「正社員として雇ってやろうじゃないか?」とおいしい話を持ち込まれ、もうやけくそにうなずくステファノ。 ここから彼の新たで波乱な運命が始まるのであった。。 謎をまだまだ秘めてステファノの話は。。。。。たぶん続くか? *********************** PS.日曜日はおっとは引越しの手伝いだった。最近、こういった重労働はおっとは贅沢にも断っているのだが、なにせ文無しの我が家。行くことになった。涙 重なるときは重なるもので、あのサルデーニャに一緒に行ったエルビスも突然土曜の夜に「日曜日の姉の引越しを手伝って欲しい。」と言ってきたが、手伝うのは無理、ステファノのワゴン車を貸すことにしたのだった。 エルビス「夜の7時までに返しに行くから。」 しかし、エルビスは7時を過ぎても帰ってこない。携帯に電話しても通じない。 ステファノは次の日の仕事にワゴン車がなくては困る~!とパニック、おっとの携帯は家に置き忘れて行ったし、わたしが間にはさまって更にパニクッていたら、夜中の12時ごろにやっとエルビスはワゴン車をステファノの家に返しに来たそうである。 おっと、いやエルビス、どっちのふたりも!! ラテンのペースで無関係のわたしやステファノを巻き込まないでくれっ!!!

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