第二十五話「罠? 敵の誘い」

ウンディーネに別れを告げて湖を旅立った一同は、山の見える平原を歩いている。
ニナ「あれ……ココって確か……。」
ニナは、辺りを見回して、気付いたようにそう呟いた。
チョコ「どうかしたの?」
チョコモンは、首を傾げてそう尋ねる。
ニナ「…うん……確かココ、ギンギライガーの円盤石を見つけた雪山の近くよ。」
ニナの言葉に、一同は驚き、ゲンキ達(+ホッパー)はしばらく辺りを見回して納得した。
この近くの雪山でギンギライガーの円盤石が見つかったという事は、ライガーとギンギライガーがこの近くで戦ったのだという事を示していた。
グミ「つまりさ~、この近くで~、ライガーとギンギライガーが戦っt・・・」
グミモンがそう言い終らないうちに、サンダーはグミモンを尻尾で思いっきり叩いた。
チョコ「?ねぇ、何か来るよ。……紫色の………犬、かなぁ?」
チョコモンは、向こうの方からこちらへと近づいてくるモノに気付いて、そう言った。
スエゾー「……ちゃう。アレは……ケルベロスや。ワルモンの、ケルベロスや!!」
スエゾーは、その向かってくるモノを凝視してそう言った。
一同「えぇ?!!」
サンダーを仲間に入れてから、サンダーの未来予知をすり抜けてワルモンが来るなど、初めてだった。
それ故に、一同は驚きの声を上げた。
サンダー「あ~、アイツ自身はコッチに危害加える気ないみたいだね。」
サンダーは、一同の驚きを他所にそう言った。
そして、「おれの未来予知は危害加えてきそうな奴にしか反応できないからね……。」と、付け足すように呟いた。

その数秒後……一匹のケルベロスが、一同の目の前へとやってきた。
オルト「……あれがこの世界のケルベロスか……。」
オルトは、そのケルベロスを見て、そう呟いた。
自分の一族である、魔界のケルベロスとは大分違うものだと思いながら。
…この世界のケルベロスは、紫色で角があり、その肌は鱗が生えていた。
アメ「お前、たった独りで何しに来たんだよ!」
アメモンは、サッと前に出てそう問いかけた。
ケルベロス「……サンダー、グレイの所に案内してやろう。」
ケルベロスは、薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
サンダー「何で?」
サンダーは、落ち着いた様子で理由を問う。
グミ「い~じゃん、い~じゃん。案内してもらお~よ~♪」
グミモンはいつも通りの口調でそう言う。
ケルベロス「ただし、案内するのはサンダーだけだ。」
ケルベロスがそう言うと、チョコモン達(+ニナ&ホッパー)は怪訝な顔をし、ゲンキ達はハッとした。
ケルベロスのこの言葉は、ゲンキ達には聞き覚えがあったのだ。
サンダー「だから何で?」
サンダーは、再びそう問う。
ギンギライガー「まさか……あの時の事を再現するつもりか?!」
ギンギライガーがそう言うと、ケルベロスはニヤリと笑った。
ケルベロス「そうだ。あの時のあの雪山で、サンダーとグレイを戦わせる。……さぁ、どうする?付いて来るなら、案内するぞ?」
ケルベロスは、ニヤニヤと笑いながらそう言った。
サンダー「ヤダよ。何でおれがわざわざ雪山なんかに行かなくちゃなんないのさ。」
サンダーは淡々とそう答えた。予想外れのその言葉に、その場にいた全員は驚き、ずっこけた。
アメ「…そういやサンダー、寒いの苦手だったっけ……;」
アメモンは、起き上がりながらそう呟いた。
ケルベロス「…サンダー、お前は確かこの世界とは違う世界から来たんだったな?」
ケルベロスは、思い出したようにそう言った。
サンダー「うん。……だから?」
サンダーは、冷静にそう問い返す。
ケルベロス「良いか、グレイは今や俺達の言いなりだ。俺達が命令すれば、自分の世界も躊躇いなく壊すだろうなぁ……。」
ケルベロスは、薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
オルト「つまり、何が言いたいんだよ。」
オルトは、ケルベロスを睨みつけてそう言う。
ケルベロス「サンダーが俺に付いて来ないと言うのなら、お前の生まれ育った世界をグレイに攻撃させる。」
ケルベロスは、薄ら笑いを浮かべながらそう言う。
ゲンキ「サンダー……。」
ゲンキは、心配そうにそう呟いた。
サンダー「……好きにすれば?」
サンダーは、一回深呼吸をすると、落ち着き払ってそう言った。
ケルベロス「何??!」
そんなサンダーの態度に、当然の如くケルベロスは驚く。
サンダー「あの世界を壊せると思ってるの?グレイより強い奴が何人もいるあの世界を。」
サンダーは、冷たい瞳で口元に笑みを浮かべながらそう言った。
ケルベロス「白々しい嘘を。その世界では、グレイは破壊主だったのだろう?」
ケルベロスは、そう問いかける。
サンダー「確かに、グレイは壊し主だ。……でも、グレイより強い主ぐらい幾らでもいる。」
サンダーは、冷たい瞳でケルベロスを真っ直ぐに睨みながらそう言った。
そして、付け加えるように、「……あの世界は、そう簡単には朽ちやしない。」と呟いた。
ケルベロス「……つまり、断ると言うんだな?」
ケルベロスは、静かにそう問いかける。
サンダー「そうだ。……分かったら帰れ。」
サンダーの言葉に、ケルベロスは一回舌打ちをすると、しぶしぶ帰って行った。
アメ「……サンダー、良かったのか?」
ケルベロスが見えなくなると、アメモンはサンダーにそう問いかけた。
サンダー「うん。…双子だもん。グレイの居場所ぐらい、他人に案内されなくたって大体分かるよ。」
いつも通りの笑顔で、サンダーはそう答えた。
チョコ「そっか……。」
いつも通りのサンダーに安心したのか、チョコモンはそう呟いた。
サンダー「でも、ネットワールド(今後NWと略)を攻撃するかもしれない危険因子をほっとくわけには行かないんだよね……。」
サンダーは、困ったように笑ってそう言った。
オルト「……つまりは、行くって事か?」
オルトの問いに、サンダーは頷く。
アメ「……付いてっても良いか?」
アメモンは、サンダーに問いかける。
サンダー「ベツに良いけど……でも、グレイを止めるのはおれの債務だから、おれがやるよ?」
サンダーはそう答えた。
アメ「ベツにお前の邪魔なんかしねぇよ。ただ、付いて行きたい。」
アメモンは、苦笑してそう言う。
サンダー「うん……じゃあ、おれ先に行ってるね。」
サンダーはそう言うと、念で宙に浮かび、山の天辺まで飛んで行った。
アメ「…っていうか場所教えてけよ!!;」
アメモンは、飛び去っていくサンダーにそうツッコミを入れるが、サンダーは聞かずに去って行った。
ギンギライガー「……多分、俺の円盤石があった辺りの筈だから、ニナ達と行けば分かるよ。」
ギンギライガーは、苦笑してそう言った。
ライガー「俺達は崖のほうから上がっていくが、お前らは脇の山道から来い。」
ライガーはそう言うと、崖を登り始め、ギンギライガーもすぐにその後を追った。
オルト「……オレ、ライガー達と行ってくる。……何かそのほうが近そうだし。」
オルトはそう言って、ライガー達の後に付いて行った。
ゲンキ「……じゃあ、おれ達も行こうぜ。」
ゲンキがそう言うと、残る一同も山道を歩いて山を登って行った。


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