祭り

ある村に辿り着いた一同。その村では、祭りが行われていて、一同はその祭りを楽しんでいる。
ゲンキ「あ、金魚すくい!」
ゲンキは、金魚すくいの屋台を見つけて、やりたそうな顔をする。
オルト「……あのさぁ、ゲンキ。金魚なんか捕ってどうするんだよ;」
オルトは、呆れ顔でそう言う。
ホリィ「そうよ、無駄遣いは出来ないんだから。」
ホリィがそう言うと、ゲンキは口を尖らす。
……そんな会話をしながら一同が歩いていると、見知らぬ男がホリィにぶつかって来た。
男「気ぃ付けろ!」
男は、そう悪態を吐くと去って行った。そして男は、すぐ人ごみに消えて行った。
ニナ「何よ、アイツ。自分からぶつかって来たくせに。」
ニナは、男が去って行ったほうを睨みつけながらそう言った。
ホリィ「ホントね………ぁ…お金が無い!!」
ホリィがそう声を上げると、一同も驚きの声を上げる。
アメ「…まさか、さっきの奴が……!」
アメモンはそう言って、男が去って行った方向を睨む。
チョコ「っていうか、サンダーいないよ!!?」
チョコモンの声に、一同は再び驚く。
グミ「もしかしてサンダー、さっきの奴追ってったんじゃ~……。」
グミモンがそう言うと、ライガーは血相を変えて、男が去って行った方に向かって走り出した。
一同「ってライガー!!!?」
一同が呼ぶのも聞かず、ライガーは人ごみを掻き分け(時に押し退け)進んで行く。
ギンギライガー「あぁもぅ……;ニナ、俺と兄さんはサンダーと掏りを探し出してくるから、ニナ達はどこか分かりやすい所で待ってて。」
ギンギライガーはそう言うと、ライガーの後を追って、人ごみを飛び越えながら走って行った。
アメ「……あーあ、行っちゃったよ。」
アメモンは、ヤレヤレといった顔で腰に手を当てそう言った。
ニナ「…とにかく、人ごみから外れようか。」
ニナの言葉に、一同は移動を開始する。

……その頃、ホリィからお金を掏った男は、さりげなく人ごみから外れて、屋台の裏側を歩いていた。
 「やっと追い付いたよ、泥棒さん?」
男がその声に振り返ると、そこには小さな黄色い猫のような狐のような生き物が笑顔で立っていた。
男「誰だ、てめぇ。」
男は、その生き物を睨みつけてそう言う。
生き物「おれの名前はサンダー。……さっき、おじさんが掏ったお金の持ち主の仲間だよ。」
その生き物――サンダーは、笑顔でそう答えた。
男「……何の用だって言うんだ?」
男は、嘲笑うかのようにそう言う。
サンダー「またまたぁ、分かってるくせにぃ。」
サンダーはケタケタと笑ってそう言う。それに、男は顔をしかめる。
サンダー「さっき、おじさんが女の人から掏ったお金、返してくれない?」
サンダーは、やはり笑ったままそう言った。…しかし、その瞳だけは凍りつくように冷めていた。
男「…っは、そう簡単に返すと思うか?」
男がそう言うと、暗闇から濃い目の灰色に黒の縞模様を持つ恐竜のようなモンスター――バジリスクが現れた。
サンダー「……うん、だろうと思ったけどね。」
サンダーは、顔全体から笑を消して、氷のように冷めた表情でそう言うと、そのまま男に体当たりをした。
男「…ってっめぇ!!バジリスク!!!」
男がそう言うと、バジリスクはサンダーを咥えて上に放り投げ、尻尾で叩いて地面に叩き付けた。
サンダー「ぃった……。」
サンダーはそう呟くと、バジリスクを睨み上げ、身体中に電気を溜めて、空高く飛び上がる。
それに向けて、バジリスクは火の玉――ファイア・ボールを放った。
サンダー「っ……『ジオンガ』!!」
サンダーはそう言って、向かってくる火の玉に向かって黄色い雷を放つ。

――そしてその頃、ギンギライガーはライガーに追い付き、共に走っていた。
……すると、脇のほうで黄色い雷が光るのが、2人の目に入った。
ギンギライガー「あれは……。」
ギンギライガーがそう呟くと、2人はその光のほうへと走って行った。
――黄色い雷。
それは、この世界では滅多に見られない。何故なら、自然の雷は全て青白いし、この世界のモンスターの雷技も、全て青いからだ。
故に、黄色い雷が光った所にサンダーがいると考えても、ほぼ間違いはない。……少なくとも、この兄2人はそう思っている。

そして2人が雷が光った所に駆けつけると、そこには2人の予想どうり、サンダーがいた。
……しかし、ロードランナー種のバジリスクと戦っていて、状況はサンダーが不利のようだった。
ライガー&ギンギライガー「サンダー!!」
探し人をようやく見つけた事に、2人はそう呼びかける。サンダーは、それに応えるように振り向いた。
…しかし、その油断がいけなかった。後ろを振り返ったサンダーに、バジリスクの放った炎――ファイアブレスが迫る。
その熱気に、サンダーは再び前に向き直るが、もう避ける時間はなく、その炎はサンダーに直撃した。
ライガー&ギンギライガー「サンダー!!!
ライガーとギンギライガーはそう言ってサンダーに駆け寄る。
ギンギライガー「大丈夫か!?サンダー!!」
ギンギライガーの呼びかけに、サンダーは応えようとするが、痛みで起き上がる事も答える事も上手くできなかった。
男「何だ、お前ら。そのチビの仲間か?……なら、一緒にあの世に送ってやるよ。」
男がそう言うと、バジリスクは再び炎を放つ準備をする。
ライガー「貴様…っ!」
ライガーは男を睨んでそう呟くと、空高く飛び上がって、素早く己の角に雷を溜める。
そして、バジリスクが炎を吐き出すよりも早く、いつもの何倍もの雷撃をバジリスクに向かって放った。
その攻撃に、バジリスクはロストし、それを見た男は、恐怖にその場を逃げ出す。
……しかし、大事な弟を傷付けられて怒ったこの兄達が、ソイツをみすみす見逃してやるワケもなく、
その男の逃げ道に、ギンギライガーが素早く回り込んで立ち塞がった。
ギンギライガー「…サンダーをこんなに傷付けておいて、簡単に逃げれると思っているのか?」
ギンギライガーは、その男を冷たく睨んでそう言う。
ライガー「サンダーが受けた痛み、100万倍にしてお前に返す!」
ライガーは男を睨みつけてそう言うと、男に突進して行き、角で男を放り投げる。
そしてギンギライガーは、放り投げられた男に雷撃を喰らわせる。
男「ぎゃああああああああああ!!」
男は、雷撃が命中すると、そう悲鳴を上げて落下してきた。
ギンギライガー「……一応、死なない程度には加減してやった。」
ギンギライガーは、そう言いながら男に歩み寄り、冷たく睨みつける。
男「ひぃっ……!」
そんなギンギライガーの冷たい瞳に、男はビクッと肩を竦ませた。
ギンギライガー「とっとと消え去れ!!」
ギンギライガーがそう言い放つと、男は一目散に逃げて行った。
ライガー「……おい、あのまま逃がして良いのか!!?」
ライガーは、逃げていく男を目で追いながら、そうギンギライガーに問う。
ギンギライガー「良いよ。ゴールドなら、サンダーが掏り返してるだろうし……サンダーは、無益な殺生は好まないからね。」
ギンギライガーはそう言って、サンダーに歩み寄る。
ライガーは、そんなギンギライガーの言葉に、軽く舌打ちする。…弟達に聞こえないほどに小さな舌打ちだったが……。
ギンギライガー「大丈夫か?サンダー。」
ギンギライガーは、サンダーにそう優しく問いかける。それに、サンダーは明るく頷くが、やはりまだ回復していないらしく、立ち上がることも難しいようだった。
そんな弟に、ライガーは小さな溜息を吐き、サンダーを咥えた。
サンダー「へ!?ら、ライガーにいちゃん!!??」
サンダーは、突然起こった出来事に、焦り戸惑う。……元々サンダーは咥えられるのが好きではない所為でもあるが……。
しかし、ライガーはそんなサンダーを無視し、そのままギンギライガーの背中にサンダーを乗せる。
ライガー「…どうせ歩けないだろう?……大人しくそこにいろ。」
ライガーは、戸惑っているサンダーにそう言った。
サンダー「でも……。」
サンダーは、耳を弱々しく垂らしてそう抗議の言葉を出す。……しかし、その先の言葉は出ない。
ギンギライガー「サンダー、ゴールドはちゃんと取り返したよな?」
ギンギライガーは、背中のサンダーに優しく問いかける。
サンダー「うん、ちゃんと掏り返したよ。」
サンダーは、少し身体を起こすと、胸を張ってそう答えた。
ギンギライガー「そっか。……じゃあ、皆の所に戻ろうか。」
ギンギライガーはそう言って、一同の匂いがする方へ歩みだした。
サンダー「ギンギにいちゃん。……その前に、月の光が当たるトコに行きたい。」
サンダーは、そう頼んでみる。傷を癒したい、と。
ライガー「一回ホリィ達の所に戻ってからだ。……アイツらも心配してるだろうしな。」
ライガーは、ギンギライガーが答える前に、そう答えた。その答えに、サンダーはシュンと耳を下げた。

そしてその頃一同は、人気の少ない社の前で、ライガー達を待っていた。
チョコ「サンダー、大丈夫かなぁ……?」
チョコモンは、心配そうにそう呟いた。
アメ「大丈夫だろ。……アイツ、昔っから掏るのは得意だし。今頃掏り返してると思うぜ?」
アメモンは、悪戯っぽく笑ってそう言った。
チョコ「そうだと良いけど……。」
チョコモンは、それでもまだ心配なようで、俯いてそう言った。
…と、そんな話をしていると、ライガー達がこちらに駆けて来るのが見えた。
グミ「あ、おかえり~。」
グミモンは、笑顔でそう言って迎える。
チョコ「…ってサンダー大丈夫?!!」
チョコモンは、ギンギライガーの背にいるサンダーを見てそう言った。
サンダー「大丈夫だよ。……ここなら、月の光も程よく当たるし……。」
サンダーはそう言うと、紫色の光を纏って宙に浮き、月に近づく。……すると、サンダーの傷はみるみるうちに癒えていった。
グミ「……キレーだね~、サンダーが傷を癒す姿って~。」
グミモンは、満面の笑顔でそう言う。
サンダー「……そうか?」
サンダーは、傷を癒し終えて、一同の元へ下降しながらそう言った。
グミ「キレーだよ~。すっごいキレーに光っててさ~。」
グミモンは、更に笑顔でそう言う。……サンダーが傷を癒す時だけ、サンダーを覆っている光は、紫色から淡い黄色に変わって輝くのだ。
サンダー「そ……かな。」
サンダーは、少し照れながらそう言った。
アメ「ところでサンダー、お金取り返せたか?」
アメモンは、話題を切り替えるようにそう言った。
サンダー「うん、勿論!」
サンダーはそう言ってゴールドの入った袋を、尻尾から取り出した。
アメ「お、さっすがぁ。」
アメは、サンダーを小突いてそう言った。
サンダー「へへ~。……掏り返してやったんだけどね、何か簡単すぎて拍子抜けしちゃった。」
サンダーはそう言って、ケタケタと明るく笑った。
チョコ達(+オルト)「簡単?あの傷でか?」
チョコモン達(+オルト)は、怪訝な顔でそう言った。……あの怪我で“簡単”だった筈はないと思ったからだ。
サンダー「簡単だったよ~?……掏るのはだけど………。」
サンダーは、目を逸らしがちにそう言った。
ゲンキ「…っていうかさ、サンダー。お前、どっからゴールド出してんだよ;」
ゲンキは遅くも、予想だにしてなかった場所から物を取り出したサンダーにツッコミを入れた。
サンダー「どこからって……尻尾からだよ?」
サンダーは、キョトンとした顔で首を僅かに傾げてそう言い、その袋をゲンキに渡した。
ゲンキ「いやだからさ、何で尻尾に荷物が入るのかって話だよ;」
ゲンキは、ゴールドの入った袋を受け取りながら、またツッコミを入れた。
サンダー「ん~、まぁおれは創られ者だから。」
サンダーは、笑顔でそう答え、「ある意味、何でもありなんだ。」と付け足した。
(その後ろでは、オルトが「だからそういう事言うなって」とイラ付いた様子で呟いていたが)
ゲンキ「ふぅん……ま、ゴールドも戻って来たし、また祭りを楽しむとするか!」
ゲンキはそう言って、ゴールドの入った袋をホリィに手渡した。
ホリィ「……そうね。」
ホリィは、ゲンキから袋を受け取ると、優しく笑ってそう言った。
そうして一同は、この祭りを楽しんだ。

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