歩くことは楽しい
日付け順に書いてきた「巡礼日記」は前回でおしまいです。それとは別に、サンチャゴ巡礼についての感想をまとめてみました。●歩くことのすばらしさを実感する身体が慣れないうちはたいへんですが、そのうち一日30kmでも40kmでも歩けるようになってびっくりします。身体からぜい肉がそぎ落とされ、五感は敏感になり、身体の調子がよくなっていきます。●北スペインの美しい自然にひたることができる歩く道はその多くが歩行者の専用道。土の道は歩きやすく、野を越え山を越え、田園風景を楽しみながらの歩行はあきません。●ヨーロッパを中心とする各国からの巡礼者と知り合える老若男女の巡礼者と語り合うことはなににもまして楽しい経験です。「なぜカミーノを歩くのか?」と人に問い、問われることは、「わたしの人生でたいせつなことはなにか?」と自問することにつながりました。●自分を見つめ直すことができる歩いているといろいろなことが頭に浮かびます。これまでのこと、これからのこと。頭がからっぽになり、どうでもいい余計なことが身体のぜい肉同様、そぎ落とされていくような気がします。●感謝の念がわく宿を提供してくれる人、食べ物を用意してくれる人、その他なにかと助けてくれる人。なにかと不便なことの多い巡礼だからこそ、人の親切が身にしみます。●すべてを自分で決める快感を味わうきょうどこまで歩けばいいか、人に指示されたり命令されたりすることはありません。どこで食事にするか、何時に出発するか。すべてそう。みんな自分で決めなければいけません。決められたルールは「巡礼宿に連泊はできない」ということぐらいでしょうか。これまでプライベートと仕事で計30回以上、のべ4~5年くらい海外旅行の経験があります。そのなかでサンチャゴ巡礼はまちがいなく「最も意義深く、楽しかった旅」になりました。