赤牛クロニクル・サイドB(スクーデリア・トロ・ロッソ)
今年は丑年ってことで、お正月に「赤牛クロニクル」と称してレッドブル・レーシングを扱ったけど、今度は2021年シーズン開幕記念として今は亡きもうひとつの「赤牛チーム」の年代記を。 万年資金不足(一説にはお食事にカネをかけ過ぎたとか)で優勝争いとは程遠く、入賞できればお祭り騒ぎのミナルディF1チーム。オーナーが変わっても状況は好転せず、ついに刀折れ矢尽きて25年のF1活動にピリオドを打つことになったミナルディを、チーム本拠地、チームクルーごとごっそり買い取ったのがレッドブル。 新人発掘に力を発揮したミナルディチームの性格そのままに、レッドブル傘下の若手ドライバーを乗せて経験を積ませるというBチーム的な位置づけとしてスタート。2006年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR1 コスワース(コンストラクターズランキング9位)#20 ヴィタントニオ・リウッツィ(ドライバーズランキング19位) ミナルディを買収したけれど、ミナルディ最後のマシンPS05を改修するんじゃなくて、掟破りのレッドブルの前年型RB1を使用。完全にコンコルド協定違反だが「そもそもRB1は消滅したジャガーチームの作ったマシンだから、レッドブルが2チームにシャシーを供給したことにはならないのよ」とゆーへ理屈に近い理屈で合法化。 しかし、さすがに1年落ちのマシンでは10位前後で戦うことが多く、レッドブルを追い出されたリウッツィが値千金の8位1ポイントを獲得して全戦ノーポイントを免れた。2007年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR2 フェラーリ(7位)#19 スコット・スピード(ランク外) 牛だかなんだかよくわからんデザインだった背中の牛が、STR1よりは牛らしく見えるようになったSTR2。シャシーは相変わらずレッドブルRB3と共通(したがってデザイナーはエイドリアン・ニューエイ)だが、レッドブルとは別会社(レッドブルテクノロジー)のデザインだと言い張って合法化。さすがニューエイデザインなのかワークスホンダとスーパーアグリの上をいく戦績だったが、チームの内情は上層側がドライバー2人とも気に入っておらず、シーズン序盤にして「来年は。。。」とか言っちゃう始末で、特にスピードとテクニカルデレクターがつかみ合いのケンカをしたとかしないとか噂が流れ、それを肯定するかのようにシーズン半ばで解雇された。後任はチームの希望通りセバスチャン・ベッテルで、終盤それまでのチーム最上位(4位)をゲット。2008年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR3 フェラーリ(6位)#14 セバスチャン・ボーデ(17位)ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR3 フェラーリ(6位)#15 セバスチャン・ベッテル(8位) 予算の都合上、各チーム1台が大原則なんだけど、なぜか大量購入(笑)のSTR3。なんでだっけ?と調べてみたら大昔の記事に書いてあった。因みにセバスチャン・ボーデは当時ブルデーだのボーダイだの呼ばれていたけど、後になって本人が「セバスチャン・ブルデイだよ」とのことだけど、執筆された年代・状況を考慮し記載当時のまま掲載しています(笑)ま、浮き世の義理はどこにでも転がってるってことなのよね~で終わるところが終わらないことをこの時は知らなかった。ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR3 フェラーリ “イタリアGP 優勝”#15 セバスチャン・ベッテル 25年間のミナルディ時代を含めチーム初優勝を記録した雨のモンツァ。もちろんベッテルも初優勝。親チームよりも先の初優勝。この勝利もあってレッドブルよりもランク上位になった(現在に至るまで唯一)ウェットタイヤだけじゃなくノーズのブリッジウィングの太さ、バックミラーの高さ、高速仕様のリアウィングなど芸が細かい。そりゃ買っちゃうよね。2009年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR4 フェラーリ(10位)#12 セバスチャン・ブエミ(16位) この年からどのチームのF1マシンもノーズが細く長く、リアウィングが狭く高くなり、シャークフィンも相まってとってもカッコ悪い見映えになった。そして赤牛の占有面積も減ってレッドブルを前面に押し出す形になる。今やトヨタ(WEC)と日産(フォーミュラE)を股にかけるブエミでも、F1の壁は厚く。2010年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR5 フェラーリ(9位)#17 ハイメ・アルグエルスアリ(19位) 前年同様、スリークなボディワークなんだがノーズ形状がカモノハシ(平べったく)になった分、マシになった気がする。この年からレッドブルのお下がりではなく自社設計自社製作のシャシーとなった。とはいえデザイン自体は前年好成績のレッドブルRB5に酷似とゆーことで、シーズン前は期待されたが蓋を開ければまさかのテールエンダー争いとゆー厳しい結果。ノーズに随分と赤が入っているのが珍しいが、とっ散らかった感もあり。2011年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR6 フェラーリ(8位)#19 ハイメ・アルグエルスアリ(14位) うちはレッドブルとは別設計ですよとばかりに、差別化のためにサイドポンツーン下部を大きく抉って、その様はまるでかの駄馬フェラーリF92Aダブルデッキ。チーム創設当初のようにレッドブル単独資本じゃ難しくなってきたのか、レッドブル以外のスポンサーが一気に増えた(それもレッドブル資本とは違うんですよとゆーブラフだったかも)2012年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR7 フェラーリ(9位)#17 ジャン=エリック・ベルニュ アンダートレイになるべく多くの空気を流し込むために高くなる一方のフロントノーズに対して、Tボーンクラッシュ時の安全性を確保するためにノーズ先端の高さが改定された結果、世にも醜い「段差ノーズ」が生まれることになった。シーズン前半はエキゾースト開発の方向性を間違って成績は低迷、夏休み明けからようやく本来のポテンシャルを発揮するも時すでに遅し。フォーミュラEの2連覇チャンピオンのベルニュも入賞4回で、下にはチームメイトがいるだけ。ただし、その下に更に無得点者が何人もいるある意味いい時代だった。2013年ミニチャンプス1/43 トロ・ロッソ STR8 フェラーリ(8位)#18 ジャン=エリック・ベルニュ(15位) 前年の「段差ノーズ」はあまりに醜いと各方面で散々叩かれたので、空力面で有利とならず安全性も問題ないカバーをつけてもいいよ、とゆー事になった。ベルニュは自身最高位の6位入賞するも無得点リタイアも多く、同僚ダニエル・リカルドに上を行かれてしまった。2014年スパーク1/43 トロ・ロッソ STR9 ルノー(7位)#25 ジャン=エリック・ベルニュ(13位) FIAテクニカルレギュレーションの迷走は続く。この年は、ノーズ先端の高さを思いっきり引き下げたが、その断面積は小さくても構わなかったために、レギュレーション逃れのための一策として意図されたのが通称「アリクイノーズ(もっとあからさまに下品な言い方もあったが)」美しさカッコよさのカケラもないね。7シーズンに渡って搭載したフェラーリPUからルノーユーザーに変わった。 ベルニュは自身二度目の6位入賞するも、戦績が下位の同僚(ダニール・クビアト)が翌シーズンにレッドブル昇格することが決まり、要は遠回しの戦力外通知どおりにシートを失った。スパーク1/43 トロ・ロッソ STR9 ルノー#33 マックス・フェルスタッペン(ランク外) ベルニュが解雇されるきっかけにもなった人。17歳と5日とゆー年齢で日本GP金曜初日フリー走行でF1デビューを飾ったマックス・フェルスタッペン。後のトップドライバーにシートを与えるのは、前身ミナルディ譲りの面目躍如といったところか。2015年スパーク1/43 トロ・ロッソ STR10 ルノー(7位)#55 カルロス・サインツ(15位) FIAテクニカルレギュレーションがやっと正常化し、へんてこ「アリクイノーズ」は1年で姿を消すことなった(万歳)新加入のサインツは、同じく新加入のマックス・フェルスタッペンに戦績では水を開けられるが、実は予選での勝敗はほぼ五分だった。2016年スパーク1/43 トロ・ロッソ STR11 フェラーリ(7位)#33 マックス・フェルスタッペン(5位:但しレッドブルでの戦績含む) 序盤4レースだけ乗って、その後はレッドブルへ昇格移籍したマックス・フェルスタッペンゆえに、STR11とフェルスタッペンの組み合わせは希少かも。2017年スパーク1/43 トロ・ロッソ STR12 ルノー(7位)#10 ピエール・ガスリー(ランク外) トロ・ロッソといえば濃紺のイメージだったが、一体どうした何があった?の唐突な色替え(笑)まぁ、正直こっちのほうがイイネだけど。レギュラードライバーのダニール・クビアトの不振によって、日本でスーパーフォーミュラをやっていたガスリーが後半戦5レースにスポット参戦。ポイント獲得はならなかったが全戦完走した。 アメリカGPにも出走するかと思われたが、日程が重なる日本でのチャンピオン争いを優先したものの、そのスーパーフォーミュラは台風の影響で中止となり、王者の称号を得てエフワンに行くことは叶わなくなった。2018年スパーク1/43 トロ・ロッソ STR13 ホンダ(10位)#28 ブレンドン・ハートレイ(19位) 元チャンピオンからGP2エンジンと酷評されたホンダエンジンを搭載。本家レッドブルとルノーの関係が悪化してる状況下でのトロ・ロッソのホンダ搭載は、これぞBチームの役割と言える。始まりはフォーミュラであるものの箱ものレースでこそ生きるハートレイの技量は、ついぞF1に合わせ直すことが出来ず、1年でシートを失うことになった。マシンが横風の影響を受けちゃうほどナーバスだったのも不運といえば不運だった。2019年スパーク1/43 トロ・ロッソ STR14 ホンダ(6位)#23 アレクサンダー・アルボン(8位:但しレッドブルでの戦績含む) 日産からフォーミュラEで走るはずだったが、ドタキャンしてトロ・ロッソへ加入したアルボンは、夏休み以降はレッドブルへ昇格することになり、これまたマックス・フェルスタッペン同様にトロ・ロッソとアルボンの組み合わせは貴重?この年、アルボン、クビアト、アルボンと入れ替わりのガスリーの3人でチーム史上最高の85ポイントを獲得したものの、レッドブルのブランディング計画により翌年からは「スクーデリア・アルファタウリ」として活動することになり、チームは14年の歴史に幕を閉じることになった。因みに、そのアルファタウリから今年デビューした7年振りの日本人ドライバー角田裕毅はデビュー戦9位入賞と幸先のいいスタートを切ったそーだ。