二本目 トランプ大統領連合国(国連)総会演説
トランプ大統領の連合国(国連)総会での演説。北朝鮮問題に関して、「拉致問題」を取り上げていたのは、極めて印象的なものである。当然のように、新聞各紙は「社説」に取り上げた。全国紙で取り上げなかったのは、朝日新聞、日本経済新聞の二紙である。日経は「自国ファースト」の論調に異議を唱える社説を掲載するのではないか。と思っていたが、取り上げなかった。まあこれは、これで理解できる。理解できないのは朝日新聞である。本日の社説・森友・加計 どこが「小さな問題」か・所有者不明地 縦割り排して対策急げの二本である。朝日新聞は、我が国の安全保障問題としての「北朝鮮」、主権侵害・人権問題としての「拉致問題」よりも森友・加計疑惑がより重要なことである。とでも言いたいのであろうか???国民に、主権や国防などを考えさせたくない。私にはそう思えて仕方がない。私は、トランプ大統領の演説に関して、当然、批判を含めてあってよいものと思う。しかし取り上げないということは、考える材料を「与えない」という最も最悪の形である。勿論、記事ちしての記載はあるが、この演説に関しては「社説」に取り上げる価値あるものと私は思う。最も、それ以上どうしても今日書かなければならない。というものがあれば、それは、新聞社の「大事」を弁えるものとして、理解はできる。しかしそうではない。日経のように「東芝問題」を取り上げるのは、一つの見識だと私は思う。(日経は経済に特化した新聞であるため)では、各紙の社説をご覧いただく。これらの社説はすべて「同じ演説」を題材にしている。どの部分を取り上げ、どの部分を強調しているのか。ここに新聞社の特徴が出ている。取り上げなかったテーマに関しては、その新聞syがさほど「関心」を示していないということの表れである。「拉致問題」に触れない新聞があった。その姿勢は徹底的に非難されるべきである。トランプ演説 北朝鮮の非道を世界に訴えた2017年09月21日 06時01分 世界の注目が集まる国連総会で、日本人拉致を含めた北朝鮮の暴挙を非難し、国際社会の結束を訴えた意義は大きい。 トランプ米大統領が、就任後初めて、国連総会の一般討論演説を行った。 核ミサイル開発を続ける北朝鮮を「ならず者国家」と断じて、「自国と同盟国を守る必要に迫られれば、完全に壊滅させるしかなくなるだろう」と警告した。北朝鮮に武器供給や財政支援を行う国は許せない、とも強調した。 日本や韓国を防衛する明確な意思と、北朝鮮が敵対行為をやめるまで圧力を強める方針を表明したのは妥当である。関係国首脳らは国連の場で、制裁の徹底した履行を確認することが求められる。 トランプ氏が、「北朝鮮は13歳の日本の少女を海岸で拉致し、スパイのための語学教師にした」と述べたのは、1977年に横田めぐみさんが拉致された問題を提起したものだ。 「北朝鮮ほど、他国や自国民にひどい仕打ちをする国を見たことがない」と指摘した通り、日本人拉致は、北朝鮮による国家犯罪と人権侵害を象徴する。解決への機運を再び高めねばならない。 気がかりなのは、トランプ氏がイラン核合意について、「最悪の一方的な取引」だとして破棄する考えを示唆したことだ。 2015年の合意に基づき、イランの核計画縮小と引き換えに、米欧は制裁を解除した。原油禁輸や金融制裁などの圧力を最大限加えた上で危機を回避した手法は、北朝鮮への対処の参考になる。 強引に破棄すれば、イランに核開発再開の口実を与えかねない。英仏独中露も加わった合意の重みをトランプ氏は認識すべきだ。 演説で「各国の指導者も自国を第一に考えるべきだ」と主張したのは、「米国第一」主義に基づく自由貿易への反対や移民政策を正当化しようとしたのだろう。 同時に、「より安全で平和な未来」に向けて各国が協力する必要性にも言及し、国連などの国際協調主義に対する配慮を見せた。 北朝鮮問題やイスラム過激派によるテロ、シリア内戦などに効果的に取り組むには、多国間協力が欠かせない。米国単独で対応することも、孤立主義に走って放置することもできない現実をようやく理解し始めたのではないか。 トランプ氏が重視するとした各国の「主権」「安全」「繁栄」は、米国主導の世界秩序が支えている。重い責任を踏まえた外交安保戦略を構築してもらいたい。以上読売新聞トランプ大統領の国連演説 北朝鮮は考え直すときだ毎日新聞2017年9月21日 東京朝刊 ミサイル発射を続ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と皮肉り、軍事攻撃による北朝鮮の「全面的な破壊」にも言及した。国連総会の一般討論で初めて演説したトランプ米大統領である。 「全面的破壊」には会場に驚きが広がった。穏やかじゃない。乱暴だ。そう思った人も多いだろう。 無論、軍事行動など誰も望まない。だが、北朝鮮が国際世論も安保理決議も無視して挑発的な言動を続ける限り、軍事オプションがますます現実味を帯びてしまう。 トランプ氏は、北朝鮮による「日本人の13歳の少女」(横田めぐみさん)の拉致や金氏の異母兄・金正男氏の暗殺にも触れて、北朝鮮を「ならず者政権」と呼んだ。 また、非核化こそ「唯一受け入れ可能な未来」だと北朝鮮は悟るべきだと説き、同国に敵対的な振る舞いをやめさせるよう全ての国々が協力することを訴えた。 国連に批判的なトランプ氏が総会で一致団結を呼びかけたのは皮肉な感じもするが、北朝鮮は「自滅への道」を歩んでいるという見方も含めてトランプ氏の指摘は正しい。 演説に反発する北朝鮮も今こそ考え直す時だ。イラクやリビアの旧政権は核兵器を持たないから倒された。北朝鮮はそう主張している。 だが、中国やロシアと歴史的にも地政学的にも関係が深い北朝鮮はイラクやリビアとは異なる。核兵器を放棄しても国家として生存し繁栄する道はいくらでもあるはずだ。 ここは北朝鮮にとって重要な分かれ道である。米国は今後とも軍事的圧力を強めよう。来月には米空母打撃群が朝鮮半島近海に展開する見通しで、月内には日米韓の弾道ミサイル防衛演習も予定されている。 過去の例に学べば、米国が圧力をかけ続けて後戻りしにくくなることもある。日韓が懸念する偶発的な衝突もあり得る。どうせ米国は軍事力を使えないと北朝鮮が高をくくるのは賢明ではない。体制維持を最優先するならなおさらだ。 政治の役割は終わっていまい。トランプ氏の演説に先立ってグテレス国連事務総長は核戦争の懸念を表明し、政治的手腕の重要性を訴えた。中露の北朝鮮説得も含めて、政治の役割はむしろこれからだ。 以上毎日新聞トランプ氏演説 脅して何を得るのか2017年9月21日 敵と味方を峻別(しゅんべつ)して社会の分断を深める手法は、外交姿勢でも同じようだ。トランプ米大統領の初の国連演説は、敵と見なす国への敵意と脅しに満ちていた。これでは世界を不安定化させるだけだ。 トランプ氏は北朝鮮とイラン、ベネズエラを「ならず者国家」と呼んだ。北朝鮮に対しては「米国や同盟国の防衛を迫られる事態になれば、北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢はない」と最大限の脅しを利かした。 これに先立って登壇したグテレス国連事務総長は北朝鮮の核・ミサイル問題に絡んで「激しい言葉のぶつけ合いは致命的な誤解につながる危険がある」と警告を発したばかりだった。 トランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長の予測不能な両トップによる威嚇の応酬は、不測の事態を招きかねない。 安倍晋三首相と文在寅・韓国大統領は二十一日にトランプ氏と会談する予定だ。軍事衝突になれば両国に甚大な被害が及ぶ危険が大きい。日韓首脳はトランプ氏に自制を促すと同時に外交努力を尽くすようくぎをさしてほしい。 トランプ氏はイランについても「暴力と流血、混乱を輸出している。この残忍な体制が地域を不安定化させているのを許すわけにはいかない」と非難した。 欧米など主要六カ国がイランと交わした核合意を破棄する意向をにじませたことも気掛かりだ。 トランプ氏はイラン核合意を「最も一方的で最悪な取引の一つだ。率直に言って米国の恥。問題がこれで終わったとは思わないでほしい」と述べた。ティラーソン国務長官も合意の見直しが必要だと言いだした。 核合意がほごになれば、中東で核開発競争が始まるばかりか、イランとイスラエルの軍事衝突も懸念される。 米国第一主義を掲げるトランプ氏は「自分の流儀を他人に押しつけるつもりはない」と他国の内情に口出ししない意向を示した。 半面、独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ政権には「事態を傍観できない。さらなる行動を起こす用意がある」と脅した。敵国への干渉は例外だと言うのだろうか。 こうした対決姿勢には、相互理解を深めたり融和を図ろうという意思はうかがえない。敵と見なされた国は憎しみを募らせるだけだ。超大国としての責任の重さを持ち合わせていないのなら、危険ですらある。以上東京新聞2017.9.21 05:01更新 【主張】トランプ国連演説 北の核阻止へ決意みせた 北朝鮮の核・ミサイル戦力を世界全体への脅威と位置づけ、世界をリードする意思を表明したことを歓迎したい。 注目されたトランプ米大統領の初の国連演説は、自国や同盟国を守るためには相手を「完全に破壊」するという、強力な警告を発する舞台ともなった。 「米国第一」を掲げるトランプ政権は当初、国外の紛争への関与を嫌っていた。だが、国際秩序の維持は国益に直結する。これを守るには世界で指導力を発揮するしかない。演説にはそうした決意が読み取れるのではないか。 国連総会の一般討論演説は、各国首脳らが世界に対し、外交分野の理念や戦略を表明するものだ。初日に行われる米大統領演説は、とりわけ注目度が高い。 武力行使という選択肢をトランプ政権は堅持してきた。だが、国連総会で直接、大統領が発言したことの意味は重い。 トランプ氏は金正恩政権に挑発をやめさせるため、制裁強化に向けて「全ての国が連携するときだ」と強調した。北朝鮮に武器を供与し、経済支援をする国があると指摘したのは中国、ロシアを牽制(けんせい)したものである。 この決意に基づき、圧力を高める具体的な行動をとってもらいたい。日米韓が結束するのをはじめ、世界各国に働きかけていくことが求められる。 2度目の日本越えの弾道ミサイル発射を受けた、国連安全保障理事会による追加制裁も急ぐ必要がある。日本も決意を共有し、主体的に打つべき手を実行に移さなければならない。 トランプ氏の演説は、日本人拉致問題をはじめ、金正恩氏の異母兄である金正男氏の暗殺、国内の餓死、投獄、拷問などに触れた。体制が持つ凶暴性や異常性を多くの面から指摘した。 その実態を欧州やアフリカを含む世界各国に理解してもらううえで、効果的だったのではないか。これを強固な対北連携構築の加速につなげてほしい。 トランプ氏が北朝鮮に限らず、南シナ海で中国が軍事拠点化を続けている問題についても「法を尊重すべきだ」と述べた点は注目したい。 米国が東アジアの平和に関与を深めることは極めて妥当だ。同盟国として、日本が応分の役割を果たすべきは論をまたない。以上産経新聞産経新聞はこれに加えて「拉致問題」について同日付社説で述べている。このような取り上げ方をしているのは、産経新聞だけである。2017.9.21 05:02更新 【主張】「13歳少女を拉致」 大統領言及の機を逃すな トランプ米大統領が国連総会の一般討論演説で北朝鮮の人権侵害を非難し、「日本人の13歳の少女が拉致された」と述べた。拉致被害者、横田めぐみさんに言及したものである。 米国の大統領が国連の場で拉致問題の非人道性を訴えたのは、これが初めてである。めぐみさんの母、早紀江さんは「非常にありがたい。解決へ、少し風が向いたように感じる」と話した。 日本政府はこの機を逃さず、拉致問題に決着をつけるべく、全力を傾けてほしい。決着とは、被害者全員の解放、帰国である。 拉致は、金正恩朝鮮労働党委員長の父、金正日国防委員長がこれを認めた北朝鮮の国家機関による誘拐事件である。犯罪者である北朝鮮側には本来、何一つ抗弁の材料はないはずだ。 しかし北朝鮮は、2014年のストックホルム合意に基づく調査の約束を反故(ほご)にしたまま、被害者家族らの懸命の訴えに耳を貸そうとさえしない。 北朝鮮を「ならず者体制だ」と指摘し、軍事攻撃に踏み切れば「北朝鮮は完全に破壊される」と強調したトランプ氏の演説は、拉致問題の膠着(こうちゃく)状態を打破する契機となり得る。 02年1月、ブッシュ米大統領は一般教書演説で、北朝鮮を「悪の枢軸」と批判した。同年9月、金正日氏が訪朝した当時の小泉純一郎首相に拉致を認め、謝罪した。10月には、蓮池薫さんら5人の拉致被害者が帰国した。 米国の圧力が譲歩を引き出した前例である。 トランプ氏の演説を引き出したのは、直前に訪米して拉致問題の解決や北朝鮮のテロ支援国家再指定を訴えためぐみさんの弟、拓也さんら家族の努力も大きかったろう。日本政府の働きかけもあったはずである。 訪米中の安倍晋三首相は、国連のグテレス事務総長と会談し、拉致問題の早期解決に理解を求めた。グテレス氏は「(拉致は)基本的人権の蹂躙(じゅうりん)であり、受け入れられない」と応じた。 こうした努力を重ねて拉致問題への理解を高め、より一層の圧力強化で締め上げる以外に、北朝鮮を実のある交渉のテーブルにつかせる道はない。それは、核・ミサイル問題も同様である。拉致問題を含めた包括的解決へ向け、国際社会の結束を強めてほしい。以上産経新聞私が、これらの社説に関して、最も「意外」に感じたのは、毎日新聞である。「まっとうな社説」が書けるではないか。と感じたのである。最も、社説のもう一本は「森友・加計疑惑」に関するものであり、また「政治と戦争」を分けるあたりは、毎日新聞らしさも覗く。私は、クラウゼヴィッツの「戦争は別の形の政治」という説をとるため、政治と軍事を完全に分割できるかのような幻想を与えることには批判的である。そのようならしさものぞかせながら、毎日新聞社説は、北朝鮮の姿勢そのものが原因である。と因果関係を示しているように思われるので、これはこれでありだろう。東京新聞に関しては、まあどこかの政党の「ビラ」程度の能力しかないことを、李ssっ陽して見せたものである。「拉致問題」に対する減給について何も触れないのは、どこの国の新聞なのか?という声が思わず出る。産経新聞は「拉致問題」に対する姿勢は、好意的にみるべきであろうが、いかんせん「イラン」に対する減給などが、取り上げるべき問題ではないかのように感じさせるものであり、ここには大いに違和感が残る。ただ産経新聞のみが取り上げた「シナ」に対する言及。ここは本当に高く評価するべきものである。米国は同盟国「イスラエル」を念頭に、「イラン問題」に言及しているのは明らかであろう。先日、私のブログで書かせていただいたが、米国は、小浜政権の特殊性としての「同盟国軽視」路線を見直し、米国の共和党・民主党ともに共有してきた「同盟国と他国の差別化(区別)」に戻ろうとしている。この姿勢は、米国の「拡大抑止力」の信憑性を高める効果がある。我が国として歓迎すべき言及であると私は考える。私は、「同じ演説」を題材にして、このように「取り上げる箇所」も「それに対する評価」もことなるこの言論空間というものだけは大切にしたいと思う。これら社説を読むと、トランプ大統領は連合国(国連)総会で何を語ったのか。が見えてくる。「大事」と考えるのはどこか。「大事」と「小事」を峻別する能力を国民はもっと持つべきであろう。結果として、これらの思考法が「選挙」という場で、生きてくるのである。「小事」に拘り続け、「大事」に関しては見て見ぬふりをしてきた「戦後日本」という特殊空間、特殊な言論空間。その外からわが国のいびつな言論空間が出来上がっていったその歴史と、その原因を知ることもわたしは重要であると思う。文責 上田 和哉