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テーマ:普通の日記(12703)
カテゴリ:ニュース
車椅子の子も、全盲の子も、知的障害の子も …障害のある子とない子とを“分けない教育”を貫く、 大阪・南桜塚小の実践とは 障害のある子どもと、そうでない子どもを分離しない――。 それを当たり前のこととしている学校があります。 大阪府の豊中市立南桜塚小学校。 ここでは、 車椅子の子も、全盲の子も、知的障害のある子も、 みんな一緒に教室で学んでいます。 「分けない」教育の実践について、 前校長の橋本直樹さんに聞きました。 ■支援学級の先生が、通常学級に「入り込み」 ──橋本さんが2024年度まで 校長を務められていた豊中市立南桜塚小学校は、 現在も「インクルーシブ教育の先進校」として注目されています。 全国各地から、教員や研究者の方が視察に来られていました。 でも、私たちは何か特別なことをやってきたつもりはありません。 「すべての子どもたちが安心して学び成長できる学校をつくろう」 という、当たり前のことを続けてきただけ。 それが結果的に 「インクルーシブ教育」と言われるものだったのだと思います。 私が南桜塚小を退職した今も、 基本的なスタンスは変わっていません。 ──具体的に、どのような取り組みをされているのでしょうか。 南桜塚小には現在(2024年度当時)、 さまざまな障害があって「支援学級」(特別支援学級) に在籍する子どもが48人います。 けれど、支援学級の部屋はありますが、 脳性まひで車椅子を使っている子も、全盲の子も、 知的障害や情緒障害のある子もみんな、 ほかの子どもたちと同じ通常学級の教室で机を並べ、 一緒に授業に参加します。 それが南桜塚小の「ともに学び、ともに育つ」教育なのです。 障害のある子は支援学級の教室で個別に学び、 教科によっては通常学級に行くというふうにはしません。 例え週に数時間でも「分ける」ことをしてしまうと、 子どもたちは「場合によっては分けてもいいんだ」 という意識を持つようになります。 それが大人の社会における「排除」 につながっていくのだと思うのです。 だから、南桜塚小では学校のどの部屋も、 全校児童が使っていい部屋。 私の机があった校長室も、 教室では落ち着けない子どもが休憩しに来たり、 水槽で飼っている生き物を見に来たりと、 だれもが自由に出入りできる 「みんなの部屋」になっていました。 ──通常学級の授業の進め方についても教えてください。 豊中では「入り込み」と言っていますが、 通常学級の授業に支援学級の先生が入り込んで支援を行うんです。 支援学級の先生は、 障害のある子どもだけを見るのではありません。 その子にサポートが必要な時はそばにいますが、 それ以外は少し離れたところからクラス全体を見ています。 通常学級の子どもが学習に行き詰まっていたり、 低学年の子どもが泣いていたりしたらわけを聞き、 心が穏やかになるような対応をします。 授業中子どもが教室から出ていった場合、 通常学級の担任が話を聞き、 授業の続きを支援学級の先生が引き継ぐ ……なんていうことも。 それくらい、臨機応変に対応するのです。 ■クラスメイトの「お手伝い係」はつくらない ──子どもたちから見ても「支援学級の先生」ではないんですね。 「この先生は○○さんの担当」というふうに 「担当」を明確にしてしまうと、 その先生と子ども、2人だけの世界になってしまって、 ほかの子どもたちとの関係性が切れてしまいます。 それでは、せっかく通常学級にいるのに、 その中に支援学級を作ってしまうようなもの。 だから、支援学級の先生であっても べったり一人につくことはせず、 適度に距離を取って支援するのです。 それは、子どもたち同士の関係性も同じです。 昔、障害のある子の 「お手伝い係」を決めるようなことがよく行われていました。 でも、それでは「係」になった子どもにとって、 障害のある子との関わりは「仕事」になってしまう。 同時に、周りの子どもたちは「自分は係じゃないから」と、 関わることをやめてしまうのです。 自立とは、何でも自分でやることではなくて、 できないことがあった時に お願いできる相手が周りにたくさんいるということ。 先生でも子どもたちでも、 「この人が担当」と決めてしまうのは、 そのための 人間関係を切ってしまうことになると思うのです。 ■安心して学び生活できる教室空間を創造 ──みんな同じ授業だと、 理解が難しい子どももいるのではないでしょうか? 学習の進度や進め方は、子どもによってさまざまです。 教科書とは別に、授業の内容を わかりやすくまとめたプリントを使って勉強する子、 一学年下の内容をおさらいしている子、 授業とは違う教科のドリルに取り組む子もいます。 子ども同士は長い時間を一緒に過ごす中で、 互いのことをよく知っていますから、 違うことをしているからといって、 偏見の目で見るようなことはありません。 同じ授業を受けないのなら、 同じ教室にいる意味がないのでは? と思う人もいるかもしれません。 でも、別のことをしていても、 そこに「その子がいる」こと、 子どもたちの心がつながっていることが大事なのです。 それに、支援学級の子どもだけではなく、 すべての子どもにとって教室が 「安心して学べる場所」 であるために、 先生たちはひたすら知恵を絞っています。 「教室にいると、周りの人の視線が気になって落ち着かない」 という子のために、 パーテーションで囲ってホッとできる空間をつくったり、 「人の話し声や音が気になる」 という子には、 もう一つか二つ机と椅子を持ってきて、 廊下側の窓を開けて授業内容が聞こえるようにし、 廊下で授業を受けている姿を見ることもあります。 ■運動会は「勝ち負け」にもこだわりながら支援 ──運動会などの学校行事ではどうしているのですか。 子どもたちも一緒になってアイデアを出し合います。 運動会には、 障害があってみんなと同じように 走れない子どもも参加しますが、 「○○ちゃんがいるから、順位は関係なし」 なんてことはしません。 きちんと勝ち負けにもこだわりながら、 参加できる形を考えていきます。 例えば、あまり歩けない子がリレーに出場する時、その子は 「みんなより短い距離を、平均台につかまりながら膝で歩く」 というルールがつくられたこともありました。 その分、ほかの子が長い距離を走るわけです。 保護者の方から 「家で一生懸命練習をしていました」 という話を聞きました。 ──「一緒に授業を受ける」からといって、 「みんな同じことをする」のではないのですね。 はい。同じ教室にいるから、 みんな一斉に同じことをしなくてはいけないとか、 先生の話をじっと聞いていなくてはならないとか、 そういう発想そのものから抜け出したい。 教室の中に、多様な学びの形を創造することで、 「ともに学び、ともに育つ」 を実現していきたいと考えています。 〇橋本直樹(はしもと・なおき) 豊中市立の中学校 3 校で 25 年間の勤務後、 豊中市教育委員会人権教育企画課指導主事、 小学校・夜間中学校教頭、小学校長をへて、 2020 年度から 5 年間豊中市立南桜塚小学校長を務める。 著書に 『子どもを「分けない」学校:「ともに学び、ともに生きる」 豊中のインクルーシブ教育』(教育開発研究所)。 2025年学校法人あけぼの学園に入職し、 2026年度開校予定の 「六瀬ほしのさと小学校」(仮称)の設立準備に携わっている。 AERA with Kids(Plus) [YAHOOニュース] ![]() これこそが本当のインクルーシブ教育ですね。 ここまでしっかりと態勢が整うと 障害の有無に関わらず、親も安心ですね。☄ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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