(株)復刊ドットコムからドラゴンブックスシリーズ復刻第二弾『吸血鬼百科(復刻版)』の見本刷りが届いた。近々発売になる。
多数の読者からの要望により絶版書籍を復刻刊行している(株)復刊ドットコムが、怪奇系児童書として古書価が高い佐藤有文著『悪魔全書』につづき、佐藤有文著『吸血鬼百科』を刊行した。
このブログですでに何度か述べてきたが、私のイラストレーターとして出発当初の仕事である。原本の講談社ドラゴンブックスシリーズは、この『吸血鬼百科』から始まった。
私の仕事は1974年(昭和49年)6月21日に「吸血鬼バーニー」を油彩で起筆することに始まり、24日に描き終わった。翌25日に荒俣宏さんが編集されていた『怪奇と幻想』誌のアルジャーノン・ブラックウッド「別棟の怪」の挿画2点を描き、26日から再び『吸血鬼百科』の挿画制作に入り、9月9日までつづく。30数点描いた。その間にも、先日亡くなられた橋本治氏と共同執筆した講談社児童書『怪談 3』の挿画や、ギャラリー銀座三番街企画「イメージ・アリス展」のための25号(80X65cm)油彩画、文林書院刊行の大学ドイツ語副読本の表紙などを描いている。・・・以後、ほぼ1年間、ドラゴンブックスの挿画270点余および雑誌のイラストレーションなどを描いた。36時間ぶっつづけに仕事し、その場にぶったおれて2時間眠り、また36時間描くという毎日。・・・ドラゴンブックス終了後も佐藤有文氏とは著者とイラストレータとして交流がつづいた。佐藤氏は幽鬼のように頬が痩(こ)けて蓬髪、笑うと子供のような目だったが、ドラゴンブックスの1年間は私も負けず劣らず死人のような顔色だった。ゾンビが二人顔を突き合わせていたようなものだ。
当時の子供読者を恐怖におとしいれたものの、あれから45年、いまや壮年であろう人たちの復刊要望の多さを知ったなら、泉下の佐藤氏もあの子供のような目をして笑うだろう。
さらに付け加えるなら、(株)復刊ドットコムの仕事はすばらしいのである。45年前の本が奥付もすべて、そっくりそのままに再現され、のみならず、使用紙はこれから何年も耐えるであろうほどに上質で、印刷上がりも美しい。これは挿画担当者として嬉しいことだ。
『吸血鬼百科(復刻版)』の入手は同社webサイト、そのた検索サイトからどうぞ。