山田維史の遊卵画廊

2024/08/11(日)10:32

猛暑から考える海洋大循環問題

国際問題(127)

 少しばかり躊躇ったが、よんどころない用事のため午前9時半に外出した。一時間半ほどで帰宅したのだが、顔や腕が日焼けして赤くなっていた。キャップを冠っていても、日焼け予防にはならなかった。すぐに水シャワーを浴びて冷やした。日焼けのためというより汗だくだったからだ。昼過ぎの気温は34.5℃。体感温度はもっと上だ。  猛暑がつづくのは日本だけではないようで、南極大陸の最も寒冷時期に記録的な熱波がつづいているという。シベリヤやアラスカでも異常な高気温である。南北寒冷極地の気温上昇は海氷を融解し、壊滅的な海面上昇をもたらす。水没をまぬがれない陸地が指摘されている。  大西洋の海水が表層で北上し、深層で南下する海洋大循環(大西洋子午面循環;Atlantic Meridional Ocean Circulation ; AMOC)は、温室効果がこのままつづけば、今世紀半ば、早ければ2025年(来年!)にも停止するという予測が出た。デンマーク・コペンハーゲン大学の物理気候学者ピーター・ディトレフセン教授のグループがイギリスの科学誌『ネイチャー』に発表した。(CNN 2023年7月26日記事)  つい先日、2024年8月5日のCNNは新たなANOC研究論文について伝えた。その研究によれば2030年代の後半にもAMOCは停止する、というものである。この論文は現在査読中で、科学誌にはまだ掲載されていないそうだ。   AMOC(大西洋子午面循環)がなぜ重要かというと、南半球の暖かい海水と塩分を北大西洋に運び、北大西洋の冷えた海水は深層で再び南下する。この循環によって南半球が極端に暑くならず、また北半球が極端に寒くならずにすんでいる。いわば人間が住みやすい環境が維持され、生態系を維持するための栄養素が分配されているのである。 そして現在危機感をもってAMOCに関する研究がおこなわれているのは、海水温の上昇と人間によって気候変動が引き起こされ塩分濃度が乱れ、それによって海洋大循環が崩壊する恐れがでてきたからである。  この危機的状況は全人類の問題であり、「お前は危ないだろうが、俺の方は大丈夫だ」とエゴイスティックではいられないのである。・・・私は実に不思議だと思っているが、諸国の政治家たちの中に、あるいは優秀な経済人の中に、この危機的AMOC問題にほとんど無頓着な人たちがいることだ。無頓着なだけではなく、目先の利益に追われて積極的に気候温暖化状況を生成しているように思える。いざという危機的状況が出来(しゅったい)しても、たぶん、自分は生きのびられると思っているのかもしれない。・・・さて、そううまく行くかどうか。 山田維史『地球系』 油彩・アクリル

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