ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳
『NEXUS 情報の人類史』上下巻
河出書房新社 2025年3月刊
現在、世界がもっとも考えなければならない問題を論じている。すなわち、情報ネットワークが如何に民主主義、帝国主義、全体主義、独裁主義の各社会制度に深く関わり、それらを構築し、あるいは壊滅し、グローバル化したかを、その利的効果とリスクとを共に論述し自己修正システムの重要性を説く。歴史書の体裁を採っているが、それならば、歴史学を現代を照射するための実証・分析科学(あるいは現代の胸像)と考えると、歴史学は斯くあらねばならぬ、斯くあるべきであろう、と私は思う。広い視野で様々な事例を提示しつつ、現代世界がいかなるプロセスを経て、いかなる罠に落ちているか。また、そこから脱出して人類がより良い未来を築けるか、そのためには我々は何を明瞭に認識し、何をすれば良いかを、本書は論じている。柴田裕之氏の翻訳が良い。
「私たちは今や、この世界を破壊しかねない情報の大洪水の渦中にあり、ハトを待っています。水は引いた、もう安全だ、というメッセージを携えた伝書バトの到来を待ち受けているのです」 ユヴァル・ノア・ハラリ ・・・同署ダストジャケット(表紙カヴァー)より。
私の油彩画に『NEXUS』と題した作品がある(1994)。このブログの左、回顧展Part!に掲載してある。"NEXUS"とは「関係」とか観念等の「連鎖」という意味だが、拙作の意図をあえて述べれば、生命連鎖あるいは文明と環境との関係性、また性的創造と運動エネルギーのベクトルをイメージした。